麻地の手描友禅、江戸期の帷子

 
麻や綿の生地でつくられた単衣(ひとえ、裏地のない着物)を帷子(かたびら)と言います。
現在友禅の技法で染色する場合、生地はほぼ絹地です。しかし江戸時代、絹は高価であり身分制上の制限もあり、なかなか着られるものではなかったので、今に伝わる友禅染の着物にも麻や綿に染めたものがよく見られます。
糊防染する友禅の初歩のものは庶民の着物からスタートしたのです。
暑い日々が続くからか、上野の国立博物館で友禅染の帷子を展示していました。


(画像が横向き表示になる場合はご容赦下さい)

江戸時代からこれまで保存されてきたのは「豪華」だったり「優れた染色」だったから。
この作品はその両方。しかも解説によれば清水の舞台の模様は当時流行だったそうです。


江戸の後期になると庶民でも物見遊山を楽しめるようになり、嵐山と並び清水は人気スポットだったそうです。今もあまり変わりませんね(*^^)

今風に言うなら無線友禅


竹笹を麻にスッキリと墨描きしています。


帷子イコール湯帷子(ゆかた)になっている現代の目で見ると、この作はゆかたそのものみ見えます。
でも解説によればこの帷子は元々は振袖だったものを後に袖を切って留袖に仕立て直したものだそうです。立派な外出着(訪問着)だったわけです。


こちらも今なら絹の単衣で誂えるべきところ。商家や農家で余裕ある階層がこのように豪華な帷子を着たのでしょう。それに八代将軍吉宗は経費節減のため絹物の直用を武士階級にも制限したそうですから、麻の友禅の需要は想像以上だったのかもしれません…


糸目糊がきれいに浮いている作品です。

現代の伝統工芸としての友禅染は手描き友禅型友禅に分かれますが、江戸期の友禅はほぼ手描き。型紙の発達を待って型友禅が盛んになっていきます。筒に入れた糊を手で挿す手描き友禅の方が原始的でした。江戸初期の素朴に太~い糸目糊の友禅を見たことがあります。



糸目友禅のお手本のような麻の帷子。糸目も細く、笠の中は※糊疋田です。季節先取りの紅葉。ぼかしも細かく刺繍もあしらわれている豪華版です。


どんなお嬢さんが、どんな髪型でどんな簪、小物を合わせて着ていたのでしょうか。タイムスリップして見てみたいですね。

極小の細かい絞りをぎっしり詰めた絞り染めを鹿の子絞り、疋田(ひった)絞りといいます。人気のある模様だったので友禅模様にそれを取り入れて糸目の糊を使って絞りのように見せることを糊疋田(のりびった)と呼びます。(なぜか糊鹿の子とは呼びません)


今回は帷子に合わせて江戸期のすばらしい団扇が展示されていました。


江戸後期から明治期までの作で、どれも大変凝った作りでした。


バラ模様 花の部分だけ和紙が貼られています。涼しそう!
でもよく考えると…風を起こす効果は低い?


流水もみじ模様 こんな狭い団扇の中に大胆な水しぶきが!


月模様 花の向こう、主役の月の部分は和紙を貼らずに余白の効果のような感じに。


玩具模様 お子様サイズでも手抜きのない作り。絵師の名前と落款があります。

八月も終わりますが、まだまだ暑そうですね。(^^;)


着物あれこれ | 11:00 PM | comments (x) | trackback (x)

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