2021年04月

 
 
モナコ公国の手描友禅振袖 制作風景 19 仕上げの金彩

丸京染色さんの作業のために剥ぎ合せミシンで生地をつなぎ合せて一反の長い生地に戻して京都へ行った生地。糊を落として湯のしも済み、ピシッときれいな反物に戻った生地が京都から戻ってきました。


今度は解いて着物の形の各パーツの生地へとバラします。並べて位置関係を確認しながら、どの程度の金彩をほどこすか決めます。


くすんでいる糸目糊がとれて、湯のしで生地の光沢が戻り、とても華やか!
金彩の仕上げはいつも行うわけではなく、着物の用途や色調によります。当然今回は派手めに。

金彩と一口に言いますが、金色を使う仕上げ彩色のこと。金色や銀色の粉を顔料や接着用材と混ぜ、マスキング用のフィルムや刷毛、筆を利用して生地に彩色するのです。手描き友禅の最後のお化粧といったところです。


左端に写っているのはマスキングフィルムカット用の道具。カッターの刃に電熱が通り、フィルムだけが切れて生地には影響しない程度の電熱が通り、熱さを利用して絹の上に張ったフィルムを模様の形に切り抜くことが出来ます。

このカットの作業を、私の師匠であった早坂優先生は、熱を使わず刃を直接フィルムに当てて、指の加減だけで切り抜いていました。すぐ下に絹生地があるのにですよ!
「修行時代には電熱カッターなんて無かったからね」とおっしゃっていたものです。
私はとても真似できません。専用の道具に頼っております。
師匠が今もお元気だったらな、と思うことは多いです。

生地にフィルムを貼って


模様に沿って切り抜き


銀色の粉を刷毛ぼかし

済んだら、フィルムを剥がします。銀色の吹雪をアクセントにしました。

金や銀も色の具合は色々。自分で調合します。


このままでも綺麗ですが、


華やかなバラのアクセントには、やはり光の強い金色で、花びらのうち、強く見せたいところに筆描きで金線を加えます。

立体感が出て、強い印象になります。
(金彩の方法は製作者により様々です)

彩色したところが乾くまで少々時間がかかります。
衣桁も動員して部屋中に広げながら作業します。華やか~な室内となります。



ぼかし屋の染め風景 | 10:58 PM | comments (x) | trackback (x)
モナコ公国の手描友禅振袖 制作風景 18 丸京染色さんの作業

伝統工芸品としての着物は染め職人だけで作れるわけではありません。
手描友禅だけでなく、型友禅や小紋染、色無地でも、生地に色をつけたあと、
色(染料)を生地に蒸気で蒸して定着させる「蒸し」、
染めに使った糊や余分な染料を洗い落とす「水元」(みずもと)
作業によりシワシワ変形した生地を、織上がりと同じ正形に戻す「湯のし」が必要です。

そういう工程を担ってくれるのが「整理屋さん」
今回の工程では、京都市中京区の丸京染色株式会社さんにお願いしました。


生地を屏風畳み状にセットして


大きい蒸気の蒸し釜で蒸します。

蒸し上がったら、こんな広い所で生地を洗ってくれるのです。

以上3枚は2016年にNHKBSで放送された着物の番組の丸京染色さんを紹介する映像より。

ここからは今回、丸京さんが撮影して下さった写真です。


「水元」(みずもと)の真っ最中


生地を洗うため、作業場にプールのような水槽がありまして、そこを汲み上げた地下水がたっぷり流れているのです。
とても贅沢な最高の水元です。


鯉のぼりではありませんが、生地が気持ちよさそうに泳いでいます♪

生地にブラシ掛けして糊をよく落とす作業をして下さっています。
職人さんはずっと水の中!!


この振袖は地色が真っ赤だったり真っ白だったり、濃い緑もありますので、洗うのは大変なのです。ブラシ掛けなどが甘いと!赤い染料が白地のところに移ったりしてしまいます。

きれいになれ~~


生地目を整える「湯のし」も済んで京都から戻ったところです。
(湯のしの詳細は今後ご紹介しますね)


一箇所も色移りすることなく、ピッシリ仕上げていただきました。
<(_ _)>


糸目糊が落ちて、跡が白い線になっています。
白い線が糸のように見えるので手描友禅糸目友禅とも呼ばれる由来です。


一巻の反物で戻ったところを座敷にグルグルと広げてみましたよ。
六畳間いっぱい、長い長~いものですね、あらためて。

丸京染色さん、お世話になりました。
次回はここに金彩などの仕上げを施す最終工程へ進みます。

ぼかし屋の染め風景 | 06:09 PM | comments (x) | trackback (x)
 

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