2021年07月

 
 
これは友禅染の材料です。何でしょう?


答え→紙青花。単に青花とも。

植物から搾り取った青い液体を紙に含ませ、乾燥させたもので、友禅染の下絵を描く時に必要量を切り取り、水を加えて、滲み出た青い液体が下絵専用の染料になります。不要になったら水で洗い流して消せるのです。
貴重なものなので、一回の使用分に切り分けて


一枚ずつラップでピッチリ包み冷凍庫で長期保存いたします。


以前はもっと無造作に使っておりましたが、近年この紙青花は絶滅が危惧されております。

2021年の生産はもう見通せないと聞きました。
青花の最後の生産農家、中村さんがご高齢のため作付けが難しいそうなのです。

以前NHKの番組「日本の里山」で紹介された時、2016年8月3日の当着物ブログでも紹介しましたが、
http://www.bokashiya.com/blog/c8-.html
その時の写を一部ご覧ください。


青花と呼ばれている「オオボウシバナ


すべて人手、人手で育てて収穫



水で揉み、布で漉して青い汁をとります。簡単そうに見えてこの布で漉すという作業は重労働。

汁を紙に塗り込んで、乾燥させ友禅の材料の紙青花となります。


乾燥させると、ほら、最初の写真の紙青花に。


青花には「新花」という化学合成品もあるのですが、消えやすいことが長所でも短所でもあります。仮絵羽仕立ての白生地に下絵を描いてお客様に見ていただくには、紙青花は欠かせません。

かつては材料屋さんに行けばいつでも買えたもので、今は手に入りにくくなった物は色々ありますが、紙青花はその代表です。
もう来年も分からないのです。冷凍でどのくらい保存可能かは分かりませんが、極力傷まないようにして冷凍庫に仕舞い込みました。

青花にしろ、和紙の材料にしろ日本古来の美術品や工芸品を支える材料を生産してくれる農家へは、国による支援がなく、どこも生産の継続はとても難しくなっていると聞きます。
美術工芸品そのものは文化庁の、食料生産をする農家は農水省の管轄ですが、食料でない植物を生産する農業には監督官庁がなく、つまり保護を申請する先もないそうなのです。
「検討します」と言っている間に生産のノウハウは失われていくわけです(T_T)

東京手描友禅の道具・作業 | 09:24 PM | comments (x) | trackback (x)
 

ページのトップへ