2019年01月

 
 
サントリー美術館で開かれた「扇の国」展を見てきました。



友禅染や刺繍の着物の模様としてお馴染みのモチーフのひとつである扇。
扇そのものを描いたり、扇の形の中に花鳥を描いたり。

紅水浅葱段扇夕顔模様唐織 19世紀

と、ここまでは想像の範囲内でしたが、
これまでまったく知らなかった事も紹介されていました。

檜扇 春日行幸次第(かすがぎょうこうしだい)鎌倉時代(図録より)

この扇に書かれているのは儀式の式次第や要点のメモ
扇のオオモトは「メモ帳」だったそうなのです。

紙がない、あるいは極めて貴重だった時代、代わりに木簡が使われていたのをご存じでしょうか。薄く細く切り出した木の上下に穴を開け、紐を通して巻物状につないだものです。そこに文章を書いて記録に使っていたわけです。

昔むかし、奈良時代~~お役人同士で、こんな会話があったかも。

「おエライさんの来る儀式の運営責任者になってしまった!間違えたらどうしよう」
「要点をメモして途中でソッと見たいねぇ」
「でも儀式の最中にバサッと木簡を開いたら目立っちゃうよ」
「そうだ!木簡の下の方は開かないように紐を〆ておけばいい。
            上の方にだけ式次第をメモしておくんだよ!」
「なるほど!そうすれば、困った時に片手でちょっとだけ開いて、チラッと読めるよ」
「そうだ、そうだ!」
   ぼかし屋想像

扇の発祥を、そうと知った目で見ると、
確かに檜扇は下側の開かない木簡ですよ!^-^;

解説によれば、次第とは「先…次…次…」と儀式の信仰を箇条書きで記したもので、
とも呼ばれたそうです。

内裏上棟次第 15世紀中頃(図録より)
いずれも行幸や上棟式のような儀式を滞りなく執り行うお役人の役に立っていたのですね。
藤原道長と同時代を生きた藤原実資の日記にこんな記述があるとか…

「儀式でヘマをした人がいて面白いから扇に書き留めておいたら、家族が知らずにヨソの人にその扇を渡してしまったので、バツが悪いことになってしまった」

手近な日記でもあったのですね。この実資さんが扇メモも駆使して取材したことを文書として書き留めた日記「小右記」は、道長の時代を知るための重要な資料だそうですよ。
解説によれば、男性が衣冠束帯で儀式に臨む時に手に持つ(しゃく)も式次第などのカンニングペーパーだったことが確認されているそうです。ヘラ状の部分の内側に挨拶文なども書いておいたことでしょう。

扇は平安時代には重要な装身具ともなり、美しい絵を描いた檜扇、お雛様が持っているような、が発達。


紙の普及もあって室町時代以降、軽くて薄く折りたためる紙扇が主役となり現代に至っております。
檜より紙の方が精密な絵を描くことができるので、扇は絵を描く創作の場ともなり、扇を消耗品として終わらせるのではなく、優れた扇絵を保存することも工夫されました。


  扇面貼交屏風 16~17世紀 (画像はNHK日曜美術館アートシーンから)



狩野元信らの印のある扇画が、保存のために扇骨からはずされて屏風に貼られたものだそうです。たしかにモトは扇だったことがよく分かります。


 図録から

ここに貼られた扇絵は 素人の私が見ても素晴らしい画力、技術で、高度なものばかりでした。買い集めた人も、貼って保存した人も見る目がありました<(_ _)>
こういう屏風が呼び水となって、意匠として扇の形を散らせた中に花鳥や源氏絵を描いた屏風や襖が制作されるようになったわけです。


  扇面流図(名古屋城の襖絵)江戸初期

当時扇を水に流し、浮き沈みして流れゆく扇を愛でる遊びがあったそうです。この屏風はその情景を描いたもので、それぞれの扇の中に意匠を凝らした扇画が描かれています。


 拡大図

そして扇の形は着物の模様へとススム、だったのです。。

嬉しいことに我が鈴木其一の扇も展示されていました。

朝顔図 鈴木其一
あっさりと白い紙に描かれた朝顔、写実的でした。

今回のように古い時代からの展示をみてくると、其一のように江戸時代も中期~後半の美術品はさすがに新しく保存状態もいいです。

こんな展示も。日本で扇型を言えば長崎の出島
シーボルトが製作した出島図の復刻版が展示されていました。

東京のオランダ大使館は出島に因み、上空から見ると扇の形の建物だそうです。埋め立てられた出島は見る影も無くなっていましたが、今は少しずつ復元中です。

最後にBS日テレの番組「小さな村の物語イタリア」の一コマをご紹介。
                (ゴージオ ダッローシャ村 1/19)

ダイニングキッチンで食事をするご夫婦。キッチンの壁紙は扇画です。
それらしく言うなら「扇面散らし図御台所壁画」でしょうか(^^♪


展覧会ルポ | 02:20 PM | comments (x) | trackback (x)

新しい年となりました。



昨年中は多くの皆様にお世話になりました。
今年もどうぞよろしくお願いもうしあげます。

新年早々なのですが、ぼかし屋からお送りした年賀状の一部で宛先面と挨拶面が配送中に剥がれてしまった事件が起こりました。接着処理が甘かったようで、郵便局から連絡があって分かったのです。
宛先だけの年賀状が届いた方がいらっしゃいましたら犯人はぼかし屋<(_ _)>、宮崎です。ご一報くださるようお願いいたします。失礼をお詫びしたいと思います。

さて毎年お花の飾り付けが楽しみな元日夜放送のウィーンフィル ニューイヤーコンサート。NHK Eテレで楽しみました。
今年のフラワーアレンジメントはとてもとてもシックでした。



クリーム色からオレンジ色までの同系色でまとめられていました。


アップになると蘭やバラなど豪華な顔ぶれですが、
遠目にはやさしくホールの金色になじんでいました。私好みでした(^^♪

今年は日本オーストリア修好150周年とのことで、楽友協会の資料室で特別展示をしているという案内も放送されました(行けませんが(^^;)
明治時代のお雇い外国人が帰国後にオーストリアに日本の楽曲を紹介した楽譜集


表紙の絵は今も昔もヨーロッパの方が好みそうな日本の文物。
今も変わらないところが面白いですね。

明治期に幸田延(こうだのぶ)さんという女性が楽友協会の音楽院に留学
した時の学生登録証
。真ん中に氏名が書かれています。


日本に戻ってから東京音楽学校を設立、山田幸作や滝廉太郎を教えた方だそうです。
パイオニアの中に女性もいたと思うと嬉しいですね!(^^)!


お知らせ | 10:52 PM | comments (x) | trackback (x)
 

ページのトップへ