東京手描友禅の道具・作業

 
今日は地入れ作業をしました。
刷毛でフノリを生地に塗り、生地をパリッとさせて
手描き友禅の染め工程に備えるものです。



生地に糊が効いていると染料をよく含み、均一に綺麗に染まります。
染める箇所により濃いフノリと薄めのフノリを塗り分けるのに大小二つの刷毛を使いました。刷毛は大切なものなので、使用後すぐに湯で洗い糊を落として乾燥させます。


セッセと洗って干して、ふと「随分と古びたなあ~」と思いました。

手持ちの刷毛のうち、一番新しいものと比較すると、





こんなに毛がすり減っています。もとは同じ幅五寸の刷毛なのに。

同じ商品の刷毛を染料染め用とフノリ地入れ用に分けて使います。
この刷毛はフノリの地入れ用なので、使用が激しいのです。
染料の地染用は色の系統別に刷毛を揃えるので、一本の刷毛がこれほど擦り減ることは、ぼかし屋の場合はありません。
地入れ用でまだ大丈夫と使い続けてきましたが、そろそろ引退が近いかもしれないと、今日はシミジミ思ったことでした。
でも長年の活躍を思うと愛着がありまして。



この染め刷毛は京都の川勝商店さんが売っているもので、ずっと変わらない品質です。
たっぷりした毛が放射線状に広がり、染料をきれいに染めつけてくれるのです。
生地に吸い付くように動いてくれます。この刷毛を作る職人さんが減っているそうで、手描友禅と同様、刷毛も絶滅危惧種です。(>_<)
川勝商店さんは京都のお店なので、京友禅や京都の無地染め、草木染めなど様々な分野で使われているはずです。

 刷毛に「赤系→」と書いてあるのは、
赤系の染料のぼかし染に使う刷毛という意味です。
→は、ぼかしの濃い色の方向を示すしるしです。
刷毛の向きを間違えると、ぼかしの濃淡がきれいにつきません。
刷毛に含まれた染料は作業中はよく見えないので、いちいち→を確認しながらぼかしていきます。
師匠(伝統工芸士、故早坂優氏)の習慣をそのまま真似ております。



思いつきで、染め道具類を納めている戸棚の写真を撮りました。
刷毛や染料、皿や器、顔料、糸目糊の道具などなど。



刷毛は毛を傷めないように、戸棚の中で宙吊りになるように工夫しております。
刷毛は糊地入れ用と染料の地染用は兼用できず、染料も主な色、濃淡別に揃える必要があるので、何列も刷毛が並んでいます。

高価でもありまして、大切に使用、保管しています。

※ 2014年8月9日の当ブログ「東京手描友禅 染の裏方、フノリ地入れ」にて、地入れ作業を紹介しております。
ブログのカテゴリー「東京手描き友禅の道具・作業」をお選びになると簡単に遡れます。
是非ご覧ください。本日取り上げた刷毛も写っております。


東京手描友禅の道具・作業 | 11:14 PM | comments (x) | trackback (x)
手描の友禅染の制作に欠かせない材料は色々。
その中に下絵を生地に描く時に使う専用の青い染料、青花(アオバナ)があります。
 先月NHKテレビで、生産農家が青花を作るところが紹介されていました。
普通はまず見る機会のない映像が流れ、
長らく使ってきた青花がどのように生まれるのか、初めて知りました。
 たいへん貴重なので映像をお借りして、
私自身の勉強を兼ね、このブログに内容をまとめたいと思います。
   ※画像はNHKBS ニッポンの里山「あおばなの咲く田んぼ」滋賀県草津市 より



 青花(あおばな)はツユクサの仲間、オオボウシバナから作られるそうです。


ツユクサを品種改良して作り出された大きめの花で、直径は6㎝ほどもあるそうです。


 摘み取り作業
 夏の午前中に(午後にはしおれてしまうので)
雌蕊を残し花弁だけを摘み取るそうです。


 それを練り、何度も布でギュッと漉し、何も添加せずに花100%の青花汁を作り、


 和紙に塗り付けます。


 液体のまま時間が経つと青色が変色するので、
和紙に含ませ乾燥した状態にしないと保全がきかないそうです。



 和紙を乾かして、さらに青花汁を塗る作業を繰り返して、


 和紙の重さから3倍程度になるまで青花を含ませて出来上がるそうです。


 友禅染をする者が手にする青花は、材料屋さんの店頭で、海苔のような形で一枚ずつ売られているもので、青花紙とも呼びます。
 商品として材料屋さんの店頭に来るまで、これほど大変な作業を農家の方がして下さっているとは知りませんでした。着物需要の低下に伴い、青花の生産が減って、扱う材料屋さんも減り、価格も高くなっています。ですが、このご苦労を知ったからには今後お値段に不満は言いますまい!
 貴重な材料ですから、買ったらすぐ冷蔵庫で保管します。色の劣化や、カビを防ぐためです。添加物ゼロなら当然だったのですね。





 青花紙は使う分だけ切り取り、水を含ませ液状にして下絵描きに使います。


誂え染めの場合、白い絹地に青で描かれた下絵をお客様に見ていただくことになります。 下絵は「新花」という化学反応を利用したものでも描くことが出来ますが、黒っぽい色でしかも退色しやすくお客様にご覧いただくには、青花の方が向いています。


  糸目糊が済んだ生地を水に浸し、下絵の青花を落としているところ。
青花は水ではかなく流れ去ってしまいます。(だから下絵用に使われているのですが)

  こんな作業をしてくれる農家はもう僅かだそうです。
番組で紹介されていたのは中村重男さん


 技術を絶やさないために地元の高校生が学んでくれているそうです。


滋賀県草津市の青花農家の皆様、手描き友禅のためにどうぞこれからも青花紙の生産をよろしくお願い申し上げます。無くなったら困ります~~。<m(__)m>
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青花は田んぼのすぐ近く、こんな田園風営の中で生産されるそうです。
稲穂の間にサギが見えますよ。背丈からダイサギでしょうか。
サギがいるということはドジョウなど餌となる生き物がたくさんいる田んぼだということですね。
本当に美しい映像を見せていただきました。



東京手描友禅の道具・作業 | 11:35 PM | comments (x) | trackback (x)
手描友禅の染め作業、「裁ち切り」

 東京手描友禅は基本的に、一人の製作者が下絵から染め上がりまでの染色作業を一貫して行います。
ぼかし屋も一貫制作です。ということは…
友禅染のデザインや染色作業、その準備や後始末も自分でする、ということ。
前回ブログでご紹介した伸子針(しんしばり)の色抜きは後始末の方でした。

 よくお客様から 「一本の白い反物がどうやって着物になるの」 というご質問をいただきますので、このブログでは機会をみつけて少しずつ工程をご覧にいれています。

 今日は制作の始めの一歩、準備の一コマ、「裁ち切り」の作業風景をご紹介します。
絹の白生地をサイズに合わせて裁ち切って仮絵羽仕立ての準備をするものです。




 長~い白生地は3丈物(裾回しも含む場合は4丈物)



 尺差し「鯨尺」で測りながら、袖2枚、見頃2枚、衽に切り分けます。
測った通りに袖、見頃と切り離しますが、反物に最初の鋏を入れるのは今もドキドキします。

新花(後で色が消える)で印をうち、肩山や剣先位置など今後の作業に必要なところには糸印をつけておきます。
 表裏が分かり難い生地の時は「こちらが表側」という糸印もつけます。印の仕方に決まりはなく、製作者それぞれが自分に分かるように決めた印をずっと使っています。



生地を切り離す時は、布を織った時の縦糸、横糸から逸れないように真っすぐ切るのですが、それが案外難しいのです。

一番の難所が、衽と衿の部分を縦に長く延々と切り続けるところ。



新花で印をつけてあるものの、集中しないと縦糸から大きく脱線して切り目が曲がってしまうので、切り始めたら終点に向かってひたすら切り続けます。




切り離した生地を並べました。
           左から衿、衽、見頃2本、袖2枚です。


何だか少し着物に近づきましたね。


白生地の反物は始めの位置に生地のメーカー(機屋さん)や産地の印字があります。
 この部分が左袖後ろにくるように裁ち切ります。
仕立ての時には切り離されてしまうのですが、生地が染め上がって、剥ぎ合せ縫いして反物状に戻した時に必要なのです。
反物の表札とでもいいましょうか。
一本の白生地から染め加工した品ですよ、と伝える役目も果たします。

 裁ち切りが済むと次は友禅の初期工程へ。
仮絵羽仕立てや下絵描きが始まります。

さぁ~て!

東京手描友禅の道具・作業 | 11:20 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅の作業、伸子針(しんしばり)の色抜き

 今日は溜め込んでしまった伸子針の色抜き作業をしました。

 模様の色挿しや、地色を引き染めする時に、生地をピンと張るのに使う道具が伸子針



 細い竹の両端に針がついていて生地の耳部分に刺すので、引き染めをすると染料が竹の先端について汚れてしまいます。

 そのまま次の染めに使うと竹から生地へ染料が移ってしまうので、伸子針を脱色するのが「色抜き」です。



容器にハイドロコンクという抜き剤をいれて煮沸します。抜けたら針の上下を入れ替えて全体をきれいにします。





引き染めをすると、竹製の伸子針が弓なりに曲がるのですが、煮沸のおかげで真っすぐに戻ります。
長年何度でも染めと抜きを繰り返して使い続けています。



仕上げに抜き剤の成分を洗い落とします。
タップリの水にさらに流水も流して完全に。抜き剤が残ってしまって、次回の染めで生地に抜き剤が移ったら大変です!



水を切り、なるべく通気よいように、三日ほど乾かしてから収納します。
針がもれなく付いているので、ついついひっかき傷を作りながらの作業です。

東京手描友禅の道具・作業 | 09:57 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の道具、伸子(しんし)
 着物生地に手描きで染付けする作業に欠かせない道具に伸子があります。「しんし」と読みます。生地に模様を筆描きする時や、手描き友禅用の糸目糊置き、伏糊置きをする時に、長い生地の一部だけ(作業したい部分)をピンと張るのに使うものです。
 伸子には、長くてサイズが色々ある模様伸子(もようしんし)と、基本的に反物の横幅を張るサイズの伸子針(しんしばり)の二種類あります。
作業中の写真をご覧ください。


見頃一本の裾模様二か所を伸子で張っているところ。作業する面と裏側と。


 生地を対角線に大きく張っているのが模様伸子
×に交差した部分を左手で持って作業します。
生地の横幅を等間隔で張っているのが伸子針


 どちらも先端に針がついていて、その針を生地に挿して張るのです。

 伸子針は地色を引き染めする時も使います。

 引き染めをすると伸子針の先端部分(針の根元)が染料で汚れます。


 
 繰り返し使用するために汚れるつど色抜きします。たとえば緑の染料が付いたまま次の白生地に針を使うと、生地の端に緑色がポチポチと針から染み付いてしまうのです。

 色抜き剤をいれた湯に伸子針を入れてグラグラ煮て色抜きします。

色抜きと同時に、熱い湯のおかげで曲がった伸子針がまっすぐに戻ります。
竹って大したものです。もう四半世紀以上前から使っている伸子も現役なのですから。
何度でもまっすぐに戻り、生地をピンと張ってくれるのです。


 色抜きしたら、色抜剤が残らないよう伸子針をザクザク水洗いして、
三日ほど乾かして出来上がりです。作業に欠かせない金盥と軍手も一緒に写しました。
みんな友禅の縁の下の力持ちたちです。

東京手描友禅の道具・作業 | 12:49 AM | comments (x) | trackback (x)
長い白生地を染めるには---友禅染の下準備。
 当ブログをお読みくださった方からご質問をいただきました。
「長い反物。どうやって普通の住宅の中で染めているのですか」

答えは「切ってから染める」です。

お客様のサイズに合わせてまず白生地を裁って白い着物を仕立てます。
仮絵羽仕立てという簡単な縫い方です。ここに下絵を描きます。
 
 仮絵羽仕立て


 仮絵羽の上に下絵を描いているところ。


 これを切り離し、糸目糊置きした後はこのように着物は各パーツごとにバラバラです。


 バラバラの生地をまた元の反物の状態に縫い合わせます。
見頃2本、衿と衽で1本、袖2枚で1本、裾回し1本、計5本の長い生地にして、生地の切り口には染色作業用に端切れを縫い付けます。(張り手や伸子に生地を掛けるため)



ミシンは剥ぎ合せ専用のミシンです。
2014/3/13のブログ手描き友禅の裏方道具、継ぎ合わせミシンでも紹介しています。

  縫い合わせが済んだところ。



 長い反物の状態に戻りました。
これから先がいよいよ染色作業となります。

東京手描き友禅は誂え染めの一点物が多いので、
このように切り分けて作業することができます。
引き染めの専門業者の方や、型染め屋さんは条件が違うので反物を切ってしまう訳にはいかず、細長い大きな作業場で仕事をなさっています。

※当ブログにはお問い合わせフォームがついております。
ご注文に限らず。ご相談やブログについての質問などなど…歓迎です。
お気軽にフォームから送信してくださいね。
お返事申し上げます。

2014年12/27 追記
端縫い掛け、ふのり地入れ(14年8/9ブログで紹介)と進み、本日地染めをいたしました。
裁ち切って、剥ぎ合せて染めていることがよく分かる写真を撮ったので追加で掲載します。


 端縫いかけした端きれが生地を守っています。染色作業では必須です。端きれは絹の着物生地でなければ役に立ちません。(化繊では強度が足りず、染料を吸ってくれないため)着物を制作するごとに余った生地を色試しに使ったり端きれにしたり、無駄なく利用しております。

 これが今年最後、〆の地染めになります。
お正月は色挿しを頑張ります。捗るかな!?
皆様よいお年をお迎えください。
東京手描友禅の道具・作業 | 09:41 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の染め道具 ぼかし刷毛
 反物に引き染めをする時に使用する刷毛は通常は五寸刷毛と呼ばれるもので、当ホームページのトップページにも写真があります。塗切りの染めだけでなくぼかし染めも五寸刷毛で行うのですが、特に不規則な感じのぼかし染めをしたい時には専用のぼかし刷毛を使っています。


 大中小あり主な色別に揃えたいところですが
高価なので青、赤系に大きく使い分けております。


 ふっくらと放射線状に毛が植え込まれています。束ねた毛の根本に砂を咬ませてギュッと縛り、このように綺麗に毛を立てているのです。


 まったく惚れ惚れする道具です。
 作る職人さんはもうほとんどいないとか。ケチケチと大切に扱っております。うっかり逆さにすると毛を立てている砂がこぼれ落ちてくるので、洗ったり乾かしたりする時も下向きにしておきます。

 最近この刷毛を使った時の写真です。
 最初にサッと大枠をぼかして


 さらにぼかし刷毛で細かくアッチ向いたりコッチ向いたりしたぼかしを加えます。


 刷毛に含ませる染料の量を違えることで濃淡をつけ、ぼかし刷毛をどのくらい生地の上を走らせるかでも濃淡をつけます。

 今回はザックリと葉っぱのイメージで、さらに色を加えます。


 数種類の緑色と黄、グレーを使いました。


筆描きした葉の上からぼかし刷毛でこすると葉の境目が柔らかく滲みます。



 緑系の色目で染め上がった模様となりました。
東京手描友禅の道具・作業 | 11:01 PM | comments (x) | trackback (x)
 東京手描き友禅の地染め(模様以外の地色を染めること)は「引き染め」といって刷毛で生地に染料を染めつけます。型染や浸し染より色ムラが起きやすいという難点があります。絹地がどこも均一にたっぷり染料を含み、ムラなく染まるように、染料で染めるより先に糊を絹地に塗ります。それを地入れ(じいれ)と言います。
 今日は地入れ作業をしたので写真を撮ってみました。
友禅の染め工程を紹介する場合、長くなり過ぎるので大抵省かれてしまう工程の一つが地入れなのです。


※まず生地を端縫いかけして、張り手にはる準備をします。
点前に写っているミシンは今年3/13のブログで紹介した剥ぎ合せ専用ミシンです。


※ これがフノリ。乾燥させた海草です。この位が訪問着一反分の量です。


※ 水に戻したフノリをさらに煮溶かしてトロトロの液状にします。


※ フノリは日本手ぬぐいで濃します。隣に写っているのは地入れに使う刷毛。刷毛は事前に水に浸して木にタップリ水分を含ませてから染色作業に使います。カラカラに乾いた刷毛を水に沈めると木が「あ~やれやれ」とノビノビする感じがします。


※ 漉すといってもなかなか手荒な作業です。日本手ぬぐいを親の仇とばかりにギュ~っと絞って中のフノリをバケツに絞り出すのです。


※ 絞った後で手ぬぐいを開くとフノリの固い繊維がたくさん残っています。漉しが甘いとこの繊維が生地についてしまいます。


※  水を加えてフノリの濃度を調整します。
濃い色を染める時には呉汁(すり潰した大豆を漉した汁)も加えます。
さて準備完了。生地を張り手で張って地入れします。あとはひたすら均等に手と刷毛を動かして絹地に糊を吸ってもらいます。


フノリ地入れが乾いてパリッとした絹地は染料の染付けがよくなります。

東京手描友禅の道具・作業 | 01:21 AM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅の染め。色挿し
 東京手描友禅には様々な工程がありますが、一番華のある工程は模様の色挿しです。模様一つずつ、筆で染料を塗ることを色挿しと呼んでおります。
 染料を布に色挿しした直後は暗い色合いなのですが、染料が乾くに従い色が明るく変化します。
この違いはなかなか素人写真では判別出来ないのですが、本日作業中に撮影したものが比較的よく写ったのでご紹介します。

 ※写真にうず巻きが出てしまっています。これはデジタルカメラとシボの強い縮緬の相性が悪いためです。シボを読んでしまうようなのです。ご容赦を。
 

色挿ししたばかり。全体に濡れて暗い色合いです。
色の濃淡は、まず薄い色の染料を塗り、すぐ濡れているうちに濃い染料を片歯刷毛でぼかし染めしてつけてあります。


花びらの先端から乾いてきました。
早く乾くよう作業机の熱源にさらしながら色を挿していきます。


だいぶ乾きました。まだ中央部は暗さが残り、回りは明るくなりました。


完全に乾いて色挿し終了です。


出来上がりを裏から見たところ。模様伸子が写っています。

このように裏も表と同じように染まるのが手描き友禅の特徴です。筆描きなので染料が裏まで完全に染み透るからです。裏には糸目糊がないため出来上がり(表から糸目糊を洗い落とした後)をイメージしやすく、作業中よく裏返して眺めています。

 基本的に染料が濡れているうちは濃く暗い色合いで、乾くと薄く明るくなります。乾いた時の色を考慮して色を作ります。工程の最後に糸目糊を落とすと白い糸目が浮き上がり、模様に手描き友禅ならではの透明感が出ます。
 染料は模様の色挿しも地染でも同じ染料を使います。地染の時も乾いたらどんな色に仕上がるか、染料を煮ながら、試し布を染めて様子を見ながら考えて作るわけです。
 色の発色具合はその後の工程、蒸しや水洗いでも少々変わります。

東京手描友禅の道具・作業 | 11:30 PM | comments (x) | trackback (x)
 手描き友禅の裏方道具、継ぎ合わせミシン

 東京手描友禅の制作、特に誂え染めでは下図を描くために白生地を仮絵羽仕立てにしますので、地染や色差しをする時はすでに白生地が見ごろや衿、袖の各部分に切り分けられています。襟と衽は反物を縦に長々と切り分けた状態になっています。これを剥ぎ合せて元の反物の状態に戻さないと染色作業が出来ません。
 前回に引き続き重要な裏方として本日は剥ぎ合せ専用のミシンを紹介します。



染色作業用の「継合わせ専用ミシン」
 普通のミシンの縫い目とは違って縫い代がありません。



 このように生地と生地が重ならずに継ぎ合わせることができるので、染めむらが出来にくく乾きも速いのが良い所です。単純な縫い目ですが丈夫で染色作業中に解けることはありません。それに解く時は糸を引くと一度でスルスル解けるので仕立て屋さんも楽です。
 ぼかし屋では着物の染直しも承りますが、新規の誂え染めの時と同様、解いた着物を反物に戻すのにこのミシンは大活躍するのです。
 ミシンの横にあるのは、生地の端切れです。
 染める作業のために張り手(2/26ブログで紹介)をつけたり模様伸子(もようしんし)に張ったりするのに生地が傷まないように端切れを当て布として縫い付けて、張り手の針が反物に直接食い込まないように保護するのです。
 化繊や木綿では代用できず、端切れは必ず絹でなくてはなりません。張り手を咬ませてエイヤッとばかりに引っ張るので(だから引き染めと呼ぶのですが)化繊では耐えられませんし余分な染料を吸ってもらうためにも絹なのです。
 着物を誂えると少し生地が余分に余るので順番にそれを端切れとして使っています。長い間に貯まった端切れが沢山ありますが、仮絵羽を解いて染めの準備をするには沢山の端切れが必要です。
 このミシン、一昨年壊れてしまい川崎ミシン商会さん(新宿区西落合)で直していただきました。こんな変わったミシンを直せる技術者も少なくなっているとのこと。技術の伝承を祈るばかりです。いざという時にはこのミシンを抱えて逃げなくては!

東京手描友禅の道具・作業 | 04:50 PM | comments (x) | trackback (x)

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