ぼかし屋の作品紹介

 
手描友禅誂え染めの振袖:英国風にbespoke kimono:ビスポークの着物
:米国風にcustommade kimono:カスタムメードの着物……呼び方は色々ありますが。

 ぼかし屋は東京手描友禅を誂え染めで承っております
お客様の様々なご希望に沿うよう工夫していくなかで、こちらが勉強をさせていただく事も多い日々です。
本日ご紹介するのは、黒地に染めた上に鮮やかな菊の花を散らせた個性的な振袖。


 黒地散らし菊文様振袖

 アニメの物語に登場する少女が着ていた振袖と同じイメージで、というご注文でした。
アニメのクラシックな雰囲気を壊さないように、実際に二十歳のお嬢様が着た時に綺麗に見えるように、お客様と相談しながら柄を起こしました。

ちょっとワイルドな雰囲気の菊。
お客様が「こんな感じの菊が好み」とイラストで説明してくださったので、とても助かりました。
 古典的な雰囲気を出すために、菊に合わせた濃い朱色で染めた比翼をつけて
「比翼仕立て」にしました。
三尺の大振袖にも朱色の振りを付けました。
歩いたり袖が揺れたりすると、裾や袖のうしろ側に朱色がのぞき市松人形のようにクラシックです。
 比翼仕立ては現代では黒留袖に多いのですが、本来は格式ある礼装で広く行われていました。今でも振袖や色留袖など、ご希望によって比翼をつけ豪華な雰囲気にいたします。

 製作風景をご覧ください。


 仮絵羽仕立てした状態で下絵を描いていきます。

 ぼかし屋では紙青花を愛用しています。


衿、胸、袖にかけて模様がつながります。これを絵羽模様といいます。
サッと描いてある〇 仮絵羽仕立てでお客様に羽織っていただいて調整した時に、ここに花を増やすと決めてつけた印です。

 

 裾も連続した模様に。絵羽とは「縫い目を越えて模様が連続している」こと。
たとえ散らし文様でも、絵羽模様になっていると着用した時に格の高い印象を与えます。おそらく室町期以来日本人の馴染んできた屏風絵や襖絵の影響だと思います。
<br />
 糸目糊置きの作業

仮絵羽仕立てを解き、生地は伸子に張ってピンとさせてあります。

 糸目糊置きが終了
 

 今回は黒地なので模様の色差しより先に地色の染めを行いました。


模様も地色も一貫制作のぼかし屋ですが、黒染だけは専門の黒染屋さんにお願いします。

 黒染め屋さんから戻ってきた生地にフノリ地入れしています。
糊気がないと模様色差しの時に染料が生地に定着しません。染料が糸目糊を超えてはみ出す原因にもなります。

 いよいよ色差し


 大きな菊が単調にならないよう、各色とも三種類の濃淡を用意しています。


 外に向かって淡くなるよう 花弁ごとに水の力を借りて、薄い色から濃い色へと ぼかし染めしていきます。



 途中で 「絵羽模様の左右で色が合っているかどうか」「各色の菊の散り具合はどうか」確認しながら作業を進めます。

 最後に生地を並べて再点検。

一番裾に生地を伸子の針から保護するための「端切れ」がまだ付いたままです。

 整理屋さんから戻ってきた生地。糸目糊がとれて、
糊の跡が糸目のように白く浮き上がって見えます。(糸目糊の名前の由来)
 さらに水洗いで余分な染料や糊成分などを落とし、乾燥。湯のしで生地目、生地幅を整えて、最初に糸から白生地に織られた時と同じ状態に戻りました。色、模様がついているだけが違いです。
 左端の縫い目は、衿と衽(おくみ)を剥ぎ合せたところ。
仮絵羽仕立てを解いて染める誂え染めでは、作業中必ず衽の中央、衿との境にこの縫い目があります。

 アニメの少女の振袖には金銀は使われていませんでしたが、現実の振袖として少しは金色も欲しいところ。


金をぼかし状に柔らかくあしらいました。

 出来上がりの生地はスッキリと光沢が出てとてもきれいです。

染色作業がすべて済んで点検しながら衣桁に掛けて眺めているところ!(^^)!

お客様に上がりを確認いただいて仕立て屋さんへ移動します。
お嫁入りも近いというわけです。



ぼかし屋の作品紹介 | 11:41 PM | comments (x) | trackback (x)
本日は子供用の被布を紹介します。



 被布(ひふ)は着物の上が重ねて着用するものです。
かつては大人の女性も着用しましたが、今はもっぱら七五三のお祝い着に重ねて女児が着る袖なしの上着を指します。

   古典的な緑色に折り鶴の模様。


 地色のぼかしは、前見頃で段違いにして華やかさを出しました。
朱色系のお祝着によく合う色合いです。

 最近「折り鶴」の歴史についての新聞記事を読みました。

   今年2/22の朝日新聞紙面


 折り鶴は江戸時代18世紀以降のものだと考えられてきたが、
16世紀末~17世紀初頭には存在したことが分かったという内容です。



 三羽の折り鶴が彫り込まれている小柄(こづか)が豊臣秀吉に仕えた職人の作と確認されたそうです。
小柄は刀の鞘の外側に紐巻きして付けておく細いカッターのような小刀です。
小柄の柄は紐巻した上から見えるので、刀の装飾の一部となり、おしゃれのために武士が凝った小柄を自分の刀につけたそうです。

この鶴の大きさは1㎝か1.5㎝といったところ。細かい細工です。

 この記事によれば、折り紙はもともと室町時代に武士が贈答品を包むための礼法として広まり、江戸時代になって町人にも普及したとか。
日本の庶民文化の代表のような折り紙、武士の嗜みとして始まったという折り鶴の歴史は案外古いような、新しいような…


 今では折り鶴模様は可愛らしい着物の柄として好まれています。
もとが折り紙なので、何色も色を使っても上品に見えるところが嬉しく便利な模様です。
ぼかし屋の作品紹介 | 12:20 AM | comments (x) | trackback (x)
 帯用に厚く織られた生地を使って、染め帯を制作中です。


  下絵。生地に模様を置いたところ。
 写真上方から前柄、お太鼓柄、手先の順で下絵が描かれています。

 手描き友禅の染め帯の一般的な柄行きです。
今回はお太鼓の下にのぞく手先にも少し柄を入れました。




 図柄は王朝風の女の子二人が蹴鞠をしているところです。
衵(あこめ、少女用の袿)をおはしょりして、切り袴に沓を履いています。
本当は、年齢に関わらず蹴鞠は男性だけの楽しみ事でしたが、
ま、そこは現代の模様なので。

 パレットのように色々な色がついている「試し布」が写っています。
柄に合わせて作った染料が希望の色のなったかどうか、絹地で確かめるための小切れです。
伸子針でバッテン張りしてピンとさせて使います。




 模様伸子で張った生地の上下に、何やらハンカチが見えます。お弁当を包むような大判のもの。作業をしない部分を巻き取って汚れないように保護しているのです。
作業机近辺は始終拭き掃除して、染料粉などが生地に付かないように注意しています。




 この図案は顔があるので胡粉を使います。
すぐに使えるようになっている友禅用の胡粉ですが、念のため乳鉢で摺って使います。




 色挿しが済みました。向こう下が、梅枝の前柄です。

 ぼかし屋には久しぶりの白地の帯になります。
将来汚れが目立ってきたら、模様部分だけ伏せ糊で防染して地染めができます。
元が白いとどんな色にでも染められて、誂えが二度楽しめるので、特に器物や人物が模様の時は白地、または薄い色目の帯はお勧めです。

 あとは蒸し、洗い、湯のし屋さんへ進み、戻ってきたら金彩で仕上げ作業の予定です。
お顔も描かなくちゃ。(^^)/


9月25日 追記
 帯の仕上げが出来上がりました。
作業風景を写しました。




蹴鞠をする二人の女の子。源氏物語風に言えば女童(めわらわ)



今風に言うならサッカー女子なので、画題は「なでしこジャパン」としました。
「しゃれ帯展」に展示予定です。

ぼかし屋の作品紹介 | 05:39 PM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅による雨中紫陽花の表現

 季節の移ろいは速いもので、あちこちで見事な紫陽花を見かけるようになりました。
紫陽花はたいへん好きなモチーフで、染めるたび色々試しております。




こちらはそぼ降る雨の中の紫陽花の模様。

背景が明るいとそぐわないし、あまり暗いと嵐のようになってしまうし……
ほどほどの曇天になるよう色合いを考えて彩色しました。
染料による雨粒に加え、銀彩で仕上げに雨を増やしています。

近所で撮影した紫陽花。色の移ろいが見事です。




 お天道様が、藤色からブルーまでの染料を作り、三輪とも違う配分で彩色したかのようです。真似したいものです。

t="_blank">


 先日東京地方の梅雨入り宣言がありました。
絹地の保管には厳しい時期となりました。

ぼかし屋の作品紹介 | 08:36 PM | comments (x) | trackback (x)
 昨日無事に今年の染芸展が終了しました。
 浅草の会場に移って初めての開催。場所柄がよかったのか、
三日間のご来場者は約1700人!(‘◇’) 
昨年のほぼ倍増で、諸先輩方もビックリでした。
 当然、友禅染の体験コーナーは大盛況
開催中は本当に多くのお客様とお話ができ、忙しくとも楽しい時間を過ごすことができました。
皆様どうもありがとうございました。





 会場で出品作を撮影しました。
 模様化した菊の花々から生まれた鳳凰が遊ぶイメージで作図しました。
身頃のブルーと同系統色の濃淡で裾濃(すそご)に染めました。
ぼかし線をずらして引き染めを二度繰り返すことで、
たいへん※足の長いぼかし染めとなりました。

 ぼかし染めは、色がグラデーションで薄くなっていき、淡色または、ついに白になる染め。淡くなり始めた所から一番淡く、または白色になるまでの長さを「ぼかしの足」と呼びます。
ぼかしの足が長いほど、なだらかに淡くなっていくぼかし染となります。
短いと、一気に色が消える感じのぼかし染となります。
模様が引き立つぼかし方を考えて染めます。

ぼかし屋の作品紹介 | 11:19 PM | comments (x) | trackback (x)
kimono bespoke 菊牡丹唐草文様訪問着

ぼかし屋としては珍しく唐草文様で手描友禅の訪問着を承る機会がありました。
たいへんよい経験をさせていただきました。

誂え染めはまず下絵の相談から。参考になる写真やイラストを使いながらご希望を伺い、
お客様のイメージを基礎に、実用品である着物としてご満足いただくためのアドバイスも差し上げながら下絵を作成、色合いを決めて染色作業へ進みます。

英国伝統の服の誂え仕立てを「ビスポーク bespoke」というそうですが、
東京手描友禅はまさにビスポークbespokeです。



上前(左胸)は淡いピンク地に紋様を、下前(右胸)はピンクの濃淡で無地に。
片身替わり風で正装としてもお洒落着としてもお召しになれる柄行きです。

お客様にご協力いただきまして、染め風景と共に作品をご紹介いたします。

白生地を仮絵羽に仕立ててから、全体に下絵を写し取ります。



染め上がりの模様が絵羽になるように、(縫い目をはさんで模様が連続するように)
下絵を配置します。生地は模様に合わせて唐草の細かい地紋です。
 
仮絵羽仕立てを解き、染め作業にかかります。
下絵にそって糸目糊置きして地入れ、地染めと続きます。



地色は落ち着きのあるピンクのぼかし染めです。今回は濃淡と極薄ピンクの三色ぼかし
極薄の色のことを「白消し」と呼びます。白消しピンクというわけです。

ぼかし屋のホームページ記載の「誂え染 振袖」のオーダーメイド作品例の工程と同じ手順です。参考にご覧ください。

蒸しの工程を経て、色挿しに進みます。



模様伸子(もようしんし)に張って、熱源にさらしながら、
筆や片歯刷毛(かたはばけ)で濃淡にぼかし、大振りな花びらを染めていきます。

  色挿し中の生地と染料


染料は黒っぽく見えますが、すべてピンク濃淡のバリエーションです。
大きめの花唐草なので色数が少ないと平坦な出来上がりになってしまいます。このくらい色数があると、ピンクに表情が出て、一色で塗り切った場合より「なんとなくステキ」になってくれます。!(^^)!

色挿し途中の写真では、糸目糊がよく見えます。染めたところ、まだ染めていないところがよくご覧いただけると思います。

裾から肩、肩からまた裾まである長~い生地。


裁ち切りサイズの見頃の長さは身長の約二倍もあります。

見頃の中ほどの肩の部分は色挿しがまだ途中です。
色挿しする部分をピンと張る模様伸子の位置やサイズは必要に応じて変えながら作業します。

 ※伸子については今年8/30のブログ「東京手描き友禅の道具、伸子(しんし)」に
   詳しい説明があります。

この写真はちょうど生地の表と裏の両方が写っていて、どちらも同じ濃さで染料が浸透しているのが分かります。手仕事で色挿しした時の特徴であり、証拠でもあります。

色挿しが終わったところ。


まだ糸目糊が見えて、生地も歪んでいるのをご覧いただけますか。
伸子針や模様伸子で張った跡や、水や蒸気の中にさらされたためです。
手描き友禅では、生地は嵐をくぐりぬけて染め上がるのですね。丈夫な絹ならでは。

蒸し、洗い、湯のしの工程を経て、染め上がりとなります。


糸目糊が落ちて、友禅染らしい白い糸目がくっきりしました。
湯のし生地が真っすぐに戻ると風合いが柔らかくなり、光沢がでます。
染め屋としては一番ほっとして、我ながら見とれたりしてしまう時です。(*^^)v

誂え染めではお客様にお越しいただくのは、少なくとも二回。


まずは下絵を描いた仮絵羽(写真左上)をはおっていただき、模様の位置、量などをご確認いただきます。(右上)
それから染めが終わると、上がり具合を実際に見ていただいてから仕立てに回ります。
他にも下絵や色の相談もありますので、(ビスポークですから(^-^;)
ホームページでご案内しておりますように、
ビスポーク、誂え染めは「お客様もなかなか忙しい」のです。(^_-)-☆

なお右下の写真は仕立て上がりを姉様畳みにしたところ、左下がはおっていただいたところです。

仕立て上がると衣桁にかけてお披露目です。


衣桁は一般家庭にはありませんので、必ず掛けて記念撮影。着物自身の晴れ姿となります。

そしてこのあとお客様のところへお嫁入り…。
作者としてはいつも嬉しい中にも一抹の寂しさを感じるのです。
何度も足を運んでくださったお客様ともいったんお別れ。これもまた寂しいものなのです。
ぼかし屋の作品紹介 | 11:39 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の染め帯・若草色と藤色

東京手描き友禅の一点物を創作する時は、常日頃やってみたいと思っていた柄行きと色合いを試してみることになります。
「こんな染めをやってみたい」というヒントは様々なところから頂戴します。
もちろん琳派の絵師たちの作品など、著名な美術品からヒントを得る事は多いのですが、日常生活の中から得ることもよくあります。
 今回は何気なく見ていたテレビの画面から得たヒントで制作した染め帯をご紹介します。

 こちらがその映像。NHK大河ドラマ「伊達政宗」の再放送でした。




 真田広之さん演じる徳川家の御曹司が、思うようにならない人生の成り行きに思い悩むシーンです。
暗い室内の向こうに明るい若草色が広がり、小袖の藤色がよく映えていました。
 緑系と紫系の取り合わせは、元々あまり好まなかったのですが、この映像は印象に残り、頭の中の「いつかやってみたい引出し」に保管しておりました。
 今回機会を得て実現したのが、こちら…



 染め工程から何点か写真を紹介します。


  引き染め。

 濃淡二色をそれぞれ二度に分けてぼかし染め。このような裏からの写真ですと、ぼかしの足をわざと雲取風に形作っているのが分かりやすいと思います。


色挿し

 若草色に対して藤色を活かすのが目的ですが、藤色を中心に花の色を複数足して華やかさと出します。
糸目友禅で蘭を描いています。葉の一部を無線友禅でも描き添えて、模様の雰囲気を雲取風の地染めと釣り合わせました。

無線友禅を重ね描きすると、重なり目で色が変化するのを利用して、ちょっと面白く…。
このようにクローズアップすると生地の織り目がよく見えますね。金通しの紋織です。

 それぞれ濃淡があるので、使う色はかなり多くなります。


 染めていて自分で綺麗だなと楽しむことが出来ました。
 悩む真田広之さんの場面は、映像を作るディレクターさんが、「ここはこんな光と色の具合でいきたい」と考えて撮影なさったはず。俳優さんがどんな色の小袖を着たら美しいか、そこも考えたのかもしれません。
 さらにそこから頂いたヒントで色取りを考えたわけです。
 出来上がりは, 悩みとは無縁な明るい華やかな雰囲気になりました。

 これからも、江戸の昔から伝わる伝統的な模様、柄行きを尊重しつつ、
今ならでは、ぼかし屋ならではの東京手描き友禅を試行錯誤していきたいと思います。
色々なところからヒントを得なくては!

ぼかし屋の作品紹介 | 01:06 PM | comments (x) | trackback (x)
 三月のブログで取り上げた作品の染め風景のご紹介です。
通常の手描友禅の工程の中から、今回紹介したい写真を何点か選びました。

紅葉模様ローズグレーの訪問着(東京都工芸染色組合主催の染芸展への出品作)
30歳のお嬢様と60歳のお母様が共用できる柄と色合いを目指した着物です。


地染めが済んで色挿しを始める準備が出来たところ。
ローズグレーの濃淡二色とグレー系のベージュの計三色で染め分けています。

 その三色から派生させた色合いで、模様の紅葉を染めます。かなりの色数を使いますが、
相性よく納まるよう「どの色もみな仲間」のような色作りをしました。


 紅葉の赤というと朱色系が普通ですが、この訪問着では
ローズグレーの仲間として渋いワインレッドを使いました。


 作業机の下に熱源があり、色がはみ出さないように、布に含まれる水分が程よくとんで
ぼかし染めが綺麗に出るように調整しながら色挿しします。


 ※絵羽模様(えばもよう)として、仕立て上がりに柄がつながる胸と袖、見頃と衽(おくみ)などを色挿しする時は、模様伸子(もようしんし)に生地を張った状態で並べ、突合せしながら色のつながりを間違えないようにします。
写真は衿の真後ろの部分。三分(1㎝強)だけの縫い代で重なります。
全体の配色にも注意して、同じ色ばかりが片寄らないようにします。


生地は身長の二倍近くの長さ
机で色挿しするので、模様伸子ごと机の前に生地を流したり、立てたりして作業します。


 この模様の特徴は糸目友禅の葉に、影のように無線友禅の葉を添えること。
色挿しが済んだ糸目の葉に、バランスを考えつつ無線の葉の模様下絵を書き込み、色を付けていきます。


 模様伸子に張った生地を裏から見たところ。
裏も表と同じ濃さで染料が浸みていることが手で色挿しした場合の特徴です。

 
 色挿しがすべて済み、糸目糊を落としたところ。
 違う色の染料が重なると別の色になる無線描きを生かして、影の葉は二枚の葉が重なって舞う様子にしました。
 糸目の葉の軸にも色をつけて存在感を出しました。
このような色付けの葉は実際には存在しませんが、着物の模様として楽しめることを優先しております。


 染め上がりを衣桁に掛けたところ。
総絵羽(裾、袖、胸、衿すべて模様がつながっていること)訪問着になりました。


 姉様畳みしたところ。
 衣桁に掛けた状態では、実際の着用イメージを掴み難いのですが、姉様人形のように畳むと、着用時に一番目立つ上半身衿から胸、袖にかけての模様と色が分かりやすくなります。
 左衿と胸はローズグレーで、右衿と胸はベージュで染め分けています。帯揚げなどの小物を
どちらの色で合わせるかによって、着付けは華やかなにも地味にもなるでしょう。
 袖は振り違いで模様が入ります。


 前裾模様。裾回しにも同じように葉が舞います。
 舞い散るというより、舞いとぶ葉で全身が包まれる着物を目指して染めました。

 ぼかし染めのとても多い柄行きなので染色作業は大変でしたが、
染めていてワクワク感がありました。
 帯や小物の合わせ次第で、幅広いご年齢の方にお召しいただける訪問着になったと思います。
 同時に次回の作品作りでは、もっと大胆に濃淡をつけて個性的にして、
影の葉も準主役に格上げしても面白いかなと考えております。

 絵羽模様については2014年4/9のブログに詳しい説明があります。
        ブログのカテゴリー「東京手描友禅 模様のお話」から検索すると簡単です。
ぼかし屋の作品紹介 | 01:47 AM | comments (x) | trackback (x)
無線友禅の半襟
 東京手描き友禅で作成されるのは訪問着や振袖などの着物と染め帯ですが、半襟やショール、風呂敷などの小物類の染めも行います。今回は半襟を染めたのでご紹介します。



 塩瀬(絹の織り方の種類で半襟生地の多くが塩瀬)の白生地に複数の色で小菊を筆書きしました。臙脂色の紬に合わせるためにデザインしました。



 スッキリした襟元になります。真っ白な衿もよいですが、
このように軽く模様があるとお洒落です。
 この半襟は色を染付けしていますが、他に金彩で金銀の模様を付けることもあります。

ぼかし屋の作品紹介 | 09:56 PM | comments (x) | trackback (x)
 友禅染の創作用の白生地には縮緬や綸子といった織り方の種類以外に、白い絹糸だけで織った生地か金銀の金属糸を織り込んだ生地かという種別もあります。金糸を織り込むと「金通しの生地」という呼び方をします。他に銀通しもあります。
 師匠の家に通っていたバブル経済の頃、本物のプラチナを織り込んだという生地も見たことがあります。(見ただけ(^^;)触ってもおりません~) 
 それはさておき…本日は同じ種類の模様を図案と生地を変えて染めた例がありますので、金通しと普通の白生地で染め具合がどのように違うかご覧ください。
 素人写真ですが、なるべく違いが写るように撮影いたしました。



制作に使用した生地。左が金通し。右が普通の白生地。地紋は同じ。

 金属糸の織り込み方によりますが、それほどピカピカ光るわけではなく、金通しならベージュに、銀通しならグレーに落ち着いて見えたり、光の加減によって光って見えたりします。



地染め。下が金通し。まったく同じ染料ですが、金通しの方が少し柔らかい感じがします。
辛子色の濃淡が三段階に出るようにぼかし染めを二回に分けて行っています。


  普通の白生地の方(上)


  金通し生地の方

 色挿し




 色挿しの出来上がりを見比べると濃い色の所ほど金糸がよく見えます。
金属糸は染料で染まらないので、同じ色で染めても金通し生地の模様の方が少しボウッとした感じに仕上がります。


金通しでない生地の模様には薄く金霞を加えて華やかさを出しました。


染め上がり。左の普通の白生地の方が色は鮮やかに見えます。


金通しがよいかどうかはお好みや、模様との相性によります。この作品例は帯地ですが、訪問着など着物そのものが金通しの場合は、お召しになった方の動きに合わせて光沢が出て華やかになります。
礼装というよりはパーティなどお洒落着に向くようです。


お太鼓に結ぶとこんな感じ。垂れ先にも辛子色の濃淡が出るようにぼかし染めしてあります。

金属糸をどの程度表に織り出すかは地紋のデザインによりますが、多くの場合表より裏に多くの金属糸が出てるため裏側の方が表より光って見えます。


ちなみに、このように裏にも表と同じように染料が染み透っているのは、
模様の色を手仕事で一つ一つ筆で色挿しした生地の特徴です。
ぼかし屋の作品紹介 | 09:55 PM | comments (x) | trackback (x)

ページのトップへ