東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
 着物や染物、振袖といった話題が取り上げられるテレビは、なるべく見逃さないようにしております。
先日は報道番組で女性の起業家が増えていることが話題になっていました。
 雇用情勢の悪化もあり起業自体が増えているそうですが、特に女性は若い層で企業する例が多いそうです。
 その中で古い着物をレンタルする事業をなさっている方が取り上げられていました。店舗にアンティーク着物を揃え、お客様に着付けするところまでサービスするそうですが、その社長さんが20代の女性だというのは嬉しい限りです。
 着物離れが言われて久しい今、着物業界は職種に関わらず高齢化しており、若い方は少ないのです。親の跡を継いだ方を除くとなおさらです。
 映像で見ますとなかなかよい友禅染めの着物や紬類を扱っておられる様子でした。若い女性がこういう着物を「仕事にしよう」と思ってくださるとは、明るい気持ちになります。画面に向かってエールを送ったことでした。

 昔、といっても昭和3、40年代までに制作された友禅染の着物は柄が今より個性的で大胆なものが多い印象があります。
 多くの女性が日常生活で着物を着ていた戦前はもちろん、昭和40年代くらいまでは、冠婚葬祭はもちろん学校行事や他家の訪問などでも和装の女性が多かったのです。実は私も授業参観の日に教室の後ろに並ぶ母親たちの中に和装の母を見つけると、嬉しかったものです。和装だと「きちんとしている感」があったのです。
 着物を着ているだけで目立つ現代とは違いますから、多くの人と同じような柄ではなく個性を出したいと思う女性も多かったのでしょう。それに誂え染めも今より多くの女性が利用していたそうなので、「こんな柄行きがいいわ」「もっとこんな色で」などなど、職人さんとの会話の場面も今より多かったことでしょう。
 そんなところから個性的な着物が生み出されていったのかもしれませんね。

 ご高齢の職人さん、呉服関係の方から当時のお話しを伺うと、どうしても「あのころはよかったなあ」と懐古調になるのが、微笑ましいような残念なような。

 私が師匠の仕事を手伝わせてもらいながら友禅染めを学び始めたころ、世の中はすでに着物離れが始まっていました。バブル期だったので成人式・結婚式こそ華やかで、今と違い振袖などもレンタルは少数派でしたが、着物がセレモニー専用のようになってきており、たとえば街中で浴衣を着て楽しむ若い女性は今と比較にならないほど少なかったのです。
 今日の浴衣人気は呉服屋さんたちの地道なアピール活動が実を結んだことだと思います。最近は浴衣から一歩進んで小紋姿で連れ立つ女性も以前より見かけるような気がします。前述の社長さんのような方々の努力のおかげかもしれませんね。
ぼかし屋の場合は手描友禅を主に手掛けますので、どうしても守備範囲は正装・礼装・よそゆきの着物になります。
 これまでもお客様に「まぁステキ!」とおっしゃっていただくことが何よりの励ましでしたが、今後もささやかながら今ある技術を伝え、女性の皆さんに「せっかくの機会だから着物でオシャレしようかしら」と思っていただけるような制作をしていきたいと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。


着物あれこれ | 07:45 PM | comments (x) | trackback (x)
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