手描き友禅の染め。色挿し

 
手描き友禅の染め。色挿し
 東京手描友禅には様々な工程がありますが、一番華のある工程は模様の色挿しです。模様一つずつ、筆で染料を塗ることを色挿しと呼んでおります。
 染料を布に色挿しした直後は暗い色合いなのですが、染料が乾くに従い色が明るく変化します。
この違いはなかなか素人写真では判別出来ないのですが、本日作業中に撮影したものが比較的よく写ったのでご紹介します。

 ※写真にうず巻きが出てしまっています。これはデジタルカメラとシボの強い縮緬の相性が悪いためです。シボを読んでしまうようなのです。ご容赦を。
 

色挿ししたばかり。全体に濡れて暗い色合いです。
色の濃淡は、まず薄い色の染料を塗り、すぐ濡れているうちに濃い染料を片歯刷毛でぼかし染めしてつけてあります。


花びらの先端から乾いてきました。
早く乾くよう作業机の熱源にさらしながら色を挿していきます。


だいぶ乾きました。まだ中央部は暗さが残り、回りは明るくなりました。


完全に乾いて色挿し終了です。


出来上がりを裏から見たところ。模様伸子が写っています。

このように裏も表と同じように染まるのが手描き友禅の特徴です。筆描きなので染料が裏まで完全に染み透るからです。裏には糸目糊がないため出来上がり(表から糸目糊を洗い落とした後)をイメージしやすく、作業中よく裏返して眺めています。

 基本的に染料が濡れているうちは濃く暗い色合いで、乾くと薄く明るくなります。乾いた時の色を考慮して色を作ります。工程の最後に糸目糊を落とすと白い糸目が浮き上がり、模様に手描き友禅ならではの透明感が出ます。
 染料は模様の色挿しも地染でも同じ染料を使います。地染の時も乾いたらどんな色に仕上がるか、染料を煮ながら、試し布を染めて様子を見ながら考えて作るわけです。
 色の発色具合はその後の工程、蒸しや水洗いでも少々変わります。

東京手描友禅の道具・作業 | 11:30 PM | comments (x) | trackback (x)

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