東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
バラの花束の訪問着
 地色は二種類のぼかし染め



ぼかし屋の染め風景紹介

仮絵羽仕立てした白生地に青花で下絵。
下絵のまわりにある線は……



 ぼかし屋では地色はぼかし染めするので「ぼかし当り」という作業が欠かせません。
下絵の背景に新花(しんか)という下描き用染料で「ぼかし線」を描いておくのです。
後ろに下がって遠目から具合を確認しながら線を描きます。
大きな絵画を描くように。

 ぼかし当りが済んだら仮絵羽を解き、反物の状態に戻し糸目糊で下絵をなぞります。



引き染め

   ※ ぼかし当り通りと分かりやすいよう実際より濃い画像になっています。

並べてぼかし当り通りに合い口で色がそろうか確認してから色挿しに進みます。



 バラの花束なので色のバランスに注意しながら、縫い目となるところを境に同じ色が続くように色を挿していきます。


 染めの作業が終了。洗いに出す前に並べて色の調子を確認。


蒸しや洗いが済んで糊が落ち、生地もピンとしました。
出来上がりです。(上前の裾模様)


淡い落ち着いた色合いの花束を目指しました。


ぼかし屋の作品紹介 | 01:01 PM | comments (x) | trackback (x)
サウジアラビアとても古い織物を見る機会がありました。


※会期延長されています。5/13まで東京国立博物館の表慶館で開催中。

いずれも紀元前3世紀~後3世紀のもの。


羊毛で人物を織り出したもの。


亜麻で細かい幾何学模様を織り出したもの。


羊毛のチェック柄


一緒に掘り出された紡錘車や針、糸玉

糸を染めつけて、このように細かい技術で模様を織り出していたのですね、驚きました。
正倉院御物よりはるかに古い時代のものです。

 印象深かったのは、紀元前1世紀~8世紀のガラスの製品たち


何となく東洋っぽく親しみがわくのは…… おそらく形。
お鉢なのです。西洋風の皿やグラスではなく、深みのある様々な形の鉢型。



写真では陶磁器に見えてしまうかもしれませんが、みなガラスで透明感もありました。
和食器だと言っても通りそうです。


最後に驚くほど古い遺物を紹介


これは何でしょう?

100万年以上前の石器だそうです。石を削って鋭い角を作り、獲物をさばくのに使用したものだそうです。ゲンコツくらいの大きさ。
斧など石器の刃物にいたる前の道具で、アフリカで誕生した人類がアラビア半島を通ってユーラシア大陸へ拡散する過程の遺物とのこと。まだネアンデルタール人が共存していた時期ですよね!!


紀元前6000年位になると石の錐など鋭い石器が作られたそうです。

100万年前から6000年前へ……私たちの祖先は石器をこのように尖らせるのに、膨大な時間がかかったのですね。
江戸時代からの手描き友禅、なにやらチンマリした感じの技術に感じてしまいます(^^;)


追記 2018年9/26  ブログ内容を訂正いたします。
NHK BS放送「人類誕生 未来編」によれば、180万年ほど前にアフリカで生まれたホモ・エレクトスがやがてインド、東南アジアへ進出(北京原人やジャワ原人と呼ばれる)したので、アラビア半島で発見された100万年前の石器はホモ・エレクトスの遺したもの。私たちサピエンスではないのでした。
エレクトスは狩りを行って肉食し、感情を持ち社会生活と営んだ最初の人類で、老人を扶養した事が分かっているそうです。(高齢のため歯が欠落した頭蓋が出土)
ちなみに、
ネアンデルタール人の登場は40万年前~35万年前、ホモ・サピエンスは20万年前くらいにアフリカで生まれており、この時期はアフリカのサピエンス、ヨーロッパのネアンデルタール人、アジアのホモ・エレクトスという3種の人類が併存していたそうです。
なんだか…すごい…

展覧会ルポ | 08:38 PM | comments (x) | trackback (x)

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この週末は染芸展が開かれます。
浅草の雷様からもほど近く。お参りのついでがありましたら、お立ち寄りください。

会場の一角に友禅体験コーナーがございます。
色挿しして額絵になる一枚を染めます。お時間あったらこちらもぜひ。
お越しくださる場合はぼかし屋電話番号までお知らせください。



3月15日 追記

染芸展が無事終了いたしました。
体験コーナーなど、多くのお客様にご来場いただき
ありがとうございました。

お知らせ | 10:31 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の色挿し
下絵を糸目糊でなぞったあとに染料で模様に色を塗ることを「色挿し」と呼びます。
「友禅挿し」と呼ぶ場合もあります。おそらく友禅染の工程の中で色挿しが一番の花形だからでしょう。
私の師匠は色挿しすることを「友禅する」という動詞でも使っていました。

ひたすら友禅している最中に撮影しました。


 東京手描友禅の傾向としては「渋く粋な柄行き」
色数は多くても着た時に粋な感じを持たせるのが目標です。
今回も淡渋いまとまりをを目指しています。

花の色のラインナップはこの通り。ピンク系4色で濃淡3種類、計12色


一緒に写っているのは色試し布


奥が色作りの時にアレコレ試した布
手前はコレと決めた色の最終確認と、どんな色で染めたかの記録用の布。

 生地や天候、染料の種類によって違うのですが、色が糸目糊を超えて滲み出すのを防ぐために電熱器にさらしながら作業します。



 今回は染料が走りやすかったので(滲み出しやすかった)ので高めの温度設定にしました。生地がぼんやり暖かいくらい。
…すると…乾きが早くなり染料も糸目の内側に収まりやすくなり……そのかわり…花びらのぼかし作業が終わらないうちに乾いてしまって綺麗にぼかせないリスクは高まり…サッサとしないと、となります。
こういう事を「加減」と言うのだなと思います、つぐづく。
「いい加減」を目指しているわけです。



 絵羽模様になっているので縫い目の左右で模様がきちんと連続するよう確認しながら色挿ししていきます。


ぼかし屋の染め風景 | 07:56 AM | comments (x) | trackback (x)
長年見たかった屏風にやっと対面してきました。


 日月松鶴図屏風(室町時代)

 このように完全な形(六曲一双)で残っている屏風としては、とくに彩色画を描いた金屏風としてはおそらく一番古い時期の作例だそうで、ぜひ一度観たいと思いつつ、なかなか機会がなかったのでした。
 室町時代のいつなのかも作者も不明とのこと。


 想像していたより色が美しく、重厚な松だけでなく、
色々な植物が描き込まれていました。
 解説によれば、春を表わす右側にはタンポポやスミレ、ツツジが、秋を表わす左側には藪柑子やアシなどいずれも身近な植物が描かれているそうです。
 金色を背にした鶴の色がよく残っているわりには、下の花々がこのように黒ずんでいるのは銀が使われているのかもしれません。上の方が金色、下の方が銀色できっと華やかな豪華な屏風だったのではないでしょうか。


 写真(絵葉書をスキャン)では写りが悪いのですが、マナヅルの羽根の色合いはエメラルドブルーからブルーグレー、グレーへのグラデーションでした。
 同じ室町時代といっても狩野派や長谷川等伯などが活躍した安土桃山期より古く、彼らが先輩絵師の作として参考にしたかもしれない屏風です。
 いったい誰が、誰の注文で描いたのでしょうか。

 この屏風の展示はもう終わりましたが、今はもっと著名な作品が展示されていますよ。


 雪松図屏風 円山応挙(国宝)

場所は三井記念美術館、2/4まで


最後に、日本画ではあまり見かけない枇杷を描いた図を紹介!(^^)!
お目出度い図柄だそうです。


 枇杷寿帯図(清朝、乾隆帝時代)

展覧会ルポ | 11:24 PM | comments (x) | trackback (x)
   謹賀新年

 
今年もどうぞよろしくお願いいたします



新年のお楽しみはウィーンフィルのニューイヤーコンサート。
ただし、もちろんテレビで。

 コンサートのテーマはイタリアで、楽友協会ホールはイタリアに因んだピンク主体の花で飾られたそうです。


 優雅なだけでなく、早いテンポの景気よい曲も多いのがこのコンサートの愉快なところです。シュトラウスが作曲した時代、オーストリアは戦争に負けることが多く打ちひしがれる人々を励まそうとたくさんの舞踊曲が作られたからだそうです。



 今回は特に子供時代の運動会の徒競走で流れていたようなスタートピストルの似合う曲が多い構成でした。「ウイリアムテルギャロップ」やポルカ「雷鳴と電光」など、跳びはねたくなるものでした!(^^)!

 皆様にとって今年もよい年でありますように。


ぼかし屋友禅染め風景より

季節の便り | 05:28 PM | comments (x) | trackback (x)
白生地屋さんから和服の染織用しては最長サイズ、振袖用の六丈物が届きました。


本当に太い巻ですね。六丈とは約18mもあります。

 この生地の登場で、今手元に全種類の長さの白生地が揃いました。
あまりない事なので、揃い踏みさせて撮影しました。


左から染帯用、訪問着用の三丈物、四丈物、振袖用の五丈物、六丈物。
(10尺で1丈→3メートル強)

 着物の場合、裾回し(裏地)を表地と同じ生地で染めるかどうかと、袖の長さや身長で必要な生地の長さを割り出します。五丈物は一般的な振袖サイズで、長い袖と裏地がとれます。六丈物となると袖の振りなどの飾りを染めることが出来ます。

 振袖用と訪問着用では幅も違います

若い方の体格が良く、振袖用は幅一尺五寸あるのが普通になってきました。

 訪問着を誂える時、四丈物を使い裏地を表地と同じ生地で染めると豪華とされていますが、三丈物と裏地専用のパレス地などを合わせて染めることも多くあります。
実は着やすさ、歩きやすさではパレス地の裏地の方が優れています。すべりがよいので絹地特有のシャッシャッという感触で裾さばきしながら歩くのはなものです。いずれにするかはお好みと、地紋で選んだ生地が何丈物だったかによることが多いようです。

 この機会に地紋も写してみました。

 左下の六丈振袖用は本文(ほんもん)と呼ばれる地紋。沙綾形と四君子を組み合わせた模様で、模様の大きさには種類がありますが、ほぼ振袖専用の地紋です。


左二番目の五丈振袖用は桜花びら散らし
四丈物は牡丹ぼかし雲。三丈物は変り模様でレースのような模様を浮かせた織りです。

 帯では金通しの生地もよく用います。


金属糸が織り込まれていると最初から生地はベージュの色合いで、染めると金色が発色します。白の帯地の地紋は「石畳」です。


 いずれにしても絹の白生地は本当に綺麗で、広げるといつも「すみません、これから色をつけちゃいます」という気持ちになります。<(_ _)>

東京手描友禅の道具・作業 | 03:20 PM | comments (x) | trackback (x)
着物といっても種類は様々ですが、上野の国立博物館で見た火事装束には驚きました。


  火事装束 紺木綿地 刺子 人物模様(19世紀江戸時代)


解説によれば、鳶(とび)職たちが担った町方火消しの装束だそうです。


 木綿生地に刺し子をして丈夫にしてあります。確かに刺し子になった布に水を掛ければ火が燃え移りにくかったことでしょう。

 この派手な装束で消火作業をしたのですね。
無事に鎮火すると、裏の派手な描き絵を見せて歩いたそうです。何人も組んで肩で風を切って歩いたことでしょう。
火事と喧嘩は江戸の華と言ったそうですが、といえば、


火事装束 猩々緋 羅紗地 波鯉模様 (抱き茗荷紋)19世紀江戸時代

この真っ赤っかの火事装束は大名家の装束だそうです。

 頭巾も付ければ全身燃え立つようですね。

 女性用で火事に備えて用意していたものだと解説されています。抱き茗荷はどちらのご家中でしょうか。胸元も凝っています。


それにしても華やか。これで江戸の町をのし歩く機会はなかったと思うものの…
「火事だ!」という一大事で、お姫様がこんな装束に着替えようという発想が面白いですね。
 遠目には鳥の模様が刺繍されているかに見えましたが、近づくと鳥はワッペン状になっています。

この羽根の先が生地から浮き上がっているのは、縫いがとれてしまったのか、わざと飛んでいる雰囲気を出すべくわざと縫い付けなかったのか、どちらでしょう!(^^)!

いずれにしても目立つことが目的のような意匠です。

 江戸時代までの日本人、特に江戸っ子は陽気で踊り好き、自己顕示欲も強く遊び上手でラテン気質だったと聞いたことがあります。
そういえば源平武者の鎧は五色に彩られていたし、秀吉や政宗など戦国武者の派手さも有名。信長は宣教師も驚く和洋折衷の装いで目立っていたらしい…
今の私たちの横並び意識の強さは明治以降の学校教育の結果でしょうか~~??(+_+)

展覧会ルポ | 04:52 PM | comments (x) | trackback (x)
今は振袖の下絵の図案作りに勤しんでおります。
実物大サイズに測った雛型にまず鉛筆でおよその作図をしているところです。


 なにやら文鎮がたくさん置かれています。大きな紙の上に乗って描くので文鎮の押えは不可欠です。誂えの手描き友禅の染め作業では色々な場面で文鎮が必要なのです。


 こちらは仮絵羽仕立てをした絹地に模様を描き取っているところ。
衿は剣先など微妙なところをきれいな絵羽付けで模様をおくため縫い合わせた生地に描くわけです。どうしても生地が浮くので要所に文鎮を置くのです。

 他にも金彩など仕上げをする場合など出番は多いので、文鎮はたくさん持っています。
せっかくなら実用的な範囲で面白いものを集めています。

 こちらはちょっと高価な文鎮。富山県高岡市の産で、金属に黒い漆、金蒔絵、螺鈿がほどこされています。(金胎漆と呼ぶそうです)たいへん重くしっかり止めたい時に活躍します。



 上の金蒔絵のものは愛用ウン十年。少し傷んだのでお直しに出した時、もう一本と思って誂えたのが下の螺鈿の紅白梅の文鎮です。漆がつくる曲線のおかげで絹地に優しいアタリをします。

 こちらは知り合いの美術の先生がデザインしたもの。古代の鏡を模した鹿狩文様です。


一番実用的で出番の多い三本。


 上から順に。木の中に金属棒をいれたもの。長いので裾の押えなどに。
次は取っ手がついて便利な重い正統派文鎮。
下左は小型の四角でどこかで見た気がしませんか。石庭を模した文鎮で龍安寺で買いました。そのとなりは薬師寺で購入した細い軽めの文鎮。



 四神のうち白虎と青龍のデザインでカッコイイです。

置いて楽しいものも。どんぐりのついた枝と梅の扇の形。


枝形の方は南部鉄器のお店で買いました。(鉄瓶は高値の花でしたが、文鎮なら!.)

 最後は小さなフクロウ君たち。文鎮として売られていましたが、フクロウを飾ると賢くなるそうなので玄関に飾っております。(^_-)☆


 漆仕上げではありませんが、これも高岡の物です。高岡は金属加工が今も盛んで、仏像や茶釜など色々生産しているそうです。

東京手描友禅の道具・作業 | 05:45 PM | comments (x) | trackback (x)
本日の展覧会ルポは、「観て来た」ではなく「観に行けない」展覧会のご案内です。
<(_ _)>



 江戸時代の画家、長澤芦雪(ろせつ)の展覧会が愛知県美術館で開かれています。
円山応挙の弟子での中でも異色の面白さ、大胆さで有名です。
ぜひ見たいものの新幹線代の負担は重いので、東京からテレビ「日曜美術館」を見ただけで我慢、我慢。
名古屋方面の方、めったにない展示なのでお出かけなってみてください。

http://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/index.html
(11月19日まで)
日本画に興味がない方でも、アニメや動物がお好きでしたら是非!


こちらは朝日新聞に取り上げられた記事で「虎図襖」が大きく写っています。
この襖は和歌山県串本町の無量寺の方丈の左側の絵で、応挙の名代として出向き芦雪が描いたそうです。


反対の右側は龍の図。(NHKテレビ画像より)

動物画は迫力のクローズで、なおかつ可愛らしさがあります。

「白象黒牛図襖」




こういう大きな動物の側に描かれた小さい存在にご注目

      像の背中に、何やら騒いでいるカラス


      牛のお腹にのほほんとした子犬


 子犬だけを描いた作品も展示されるはず。
東京に巡回の予定がないようなので残念です。

2017年は春に京都で海北友松、秋に大阪で葛飾北斎、名古屋でこの長澤芦雪といずれも必見の展覧会が続き、東京モンとしてはどれも観られず無念です。(*_*;


展覧会ルポ | 02:47 PM | comments (x) | trackback (x)

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