東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
 タイトルで七宝焼と手描友禅を並べたのは、七宝焼は「焼物界の友禅染」だからです。
もちろん!まったくの個人的意見なのですが。(^-^;
 共通点は模様を描き出すのに「境目をつけて色が混じらないようにする」こと。

 ご存じのように手描友禅は下絵の上を細く絞り出した糊でなぞり、糊を堤防にして染料が混じらないように模様を描きます。

ぼかし屋の作業風景より。(線状の糸目糊が見えています)

最後に水洗いすると、落ちた糊の跡が白くなり糸目のように見えることから糸目友禅とも呼ばれるのです。

 一方の七宝焼。(写真は七宝の産地、愛知県あま市のHPより)
 皿や壺の形(多くは銅製)に描いた下絵に、細いリボン状の金属線を植え付けて


 隣り合う色釉薬が混じらないように筆で色置きしていくそうです。


 こちらは七宝焼の絵皿。

ね、素材は違いますが友禅染の仲間でしょう。昔一目ぼれして買いました。
釉薬の境目になっている金属線がまるで糸目のようです。

 さて、この七宝焼の展覧会が東京都庭園美術館で開かれています。

  並河靖之 七宝展 4/9まで。

 並河靖之はいわゆる明治の超絶技巧を紹介する展覧会や番組でも必ず取り上げられる七宝作家です。ただしご本人がすべて制作したのではなく、優れたデザイナーでありプロデューサー、メーカーだったとか。

  蝶に竹花図 四方 花瓶 高さ24㎝

一番見たかった作品。(写真は図録から)
ゆるやかな四角柱の花瓶。角を利用して竹を描き立体感があります。
花丸唐草文 棗(なつめ) 高さ6.4㎝
 花丸は友禅染で好まれる模様。まるで黒地花丸模様の振袖を凝縮したようです。

江戸以来の職人が新しい工芸制作に流入した時代なので、本当に友禅の下絵職人がこの棗の下絵を描いたという想像もできます。ちなみに並河靖之ご本人も、もとは武士だったそうです。


桐の花の下絵 下絵自体が美しいです。

花桐蝶文 大花瓶 高さ30㎝ こちらは大きな花瓶ですが、

草花図 小花瓶 高さ10㎝
 このように小さな花瓶もたくさん展示されていました。七宝はアクセサリーにも使われるくらいなので、本来小さな作品に向いているのでしょう。

 小さいと言えばこちらの作品

  四季 花鳥図 名刺入 高さ9センチ
 金属線で堤防が仕切られているからこそ、このような細かい表現ができるとも言えますが、この精密さは時計職人の技術ですね!!

 製品としての高さが9㎝なので、この写真の図柄の縦サイズは3センチくらいだと思われます。      

     名刺入れの下絵

 四季 花鳥図 花瓶 高さ35センチ
 
黒地を得意とした並河七宝の集大成のような作品だそうです。

黒地に金色の線で描いた図があでやか。このまま着物の模様のお手本になりそうです。


 竹笹の奥行感が濃淡で表現されています。背景の黒が冴えていました。
 
 花鳥図 飾り壺 高さ23㎝

 こちらも濃淡を使い淡い色の桜から濃い紅の桜まで。きっちり色分けされていました。
下の方に描かれた黄色い菊が実に美しく印象的でした。


 解説には、明治時代に外貨獲得のために振興された国産の工芸品の一つとして並河七宝は大いに評価されたものの大正期にはいると輸出量が落ち始め、国内市場は育たないまま、並河靖之も1927年には工場を閉めた、とあります。
 陶磁器であれば高級品は僅かしか売れなくとも、廉価な日常品が大量に売れることで産業を下支えしますが、七宝はそれ自体が高級品ですから、需要が一巡した後は弱かったのかもしれません。今は美しいアクセサリーを多く見かけますね。


東京手描き友禅 模様のお話 | 06:24 PM | comments (x) | trackback (x)
今年になってから江戸期の手描友禅をいくつか観る機会がありました。

※東京国立博物館の常設展示より。撮影自由なのですが、ガラス越しなので反射が写っているものがありますが、ご容赦ください。




  茶 平地 椿枝垂れ柳掛け軸模様 小袖(江戸時代18世紀)

 解説によればこの友禅染小袖は、享保4年1719年発行の雛型(ファッションブック)で紹介されている柄と同じだそうです。背に掛け軸を模様においた独特な柄行き。雛型を見て誂え染めをしているので、制作年代がほぼ特定できる貴重な例とのこと。


300年も前の生地にしては色がかなりよく残っていました。素朴な平地に糊糸目がよく浮き出ています。少し色がはみ出しているあたりに親近感が持てました。


 この時代は帯の幅が狭かったので背模様は見栄えがしたでしょう。
掛け軸の中は無線友禅で、他は糸目友禅で染められていました。
 教養不足で掛け軸の意味が分かりません。(>_<)
男性が鹿と向かい合っていました。
判読出来る方、お問合せフォームでお知らせください。
おそらく機知に富んだお洒落着だったのでしょう。

こちらは江戸といっても幕末期の振袖

  紺 平絹地 御簾檜扇模様 振袖 (江戸~明治期)

 模様はたいへん細かく、ほぼ全身に御簾と檜扇が柄付けされています。
裾の朱色のフキがたっぷり厚く一寸はありましたから、婚礼に関連して使われるレベルの格式です。


 幾何学模様の部分も型は使わず、すべて手描きの糸目友禅と見受けました。
細かい細かい仕事をセッセと正確にこなした職人さんに敬意!

 こちらは袱紗
お祝い物や献上品に掛けて使用した大判袱紗です。

 
 金色の飾り縫い以外は友禅染。
解説によれば、目を引く水色は江戸時代後期に流行したプルシアンブルーだそうです。糸目糊の防染とぼかしを併用して水の流れを作っているのは今もよく使われる描き方です。青系の染料は退色しやすいのですが、この水色は他の色より鮮やかですね。


展覧会ルポ | 08:44 PM | comments (x) | trackback (x)
 昨週末2/24~26、西武新宿線中井駅界隈で
「染の小道」という地域起こしイベントがありました。
 落合、中井、高田馬場を流れる神田川の水はかつて新宿区の染色産業に利用されていました。東京手描友禅だけでなく各種型染、小紋や更紗の工房、工場、関連する商店がたくさんあったのです。かなり減ったものの今でも友禅に関わるとこの界隈にご縁が出来ます。
 「染の小道」は年に一度かつての雰囲気を再現して新宿の染色産業を知ってもらおうというイベントです。
 協賛する商店の軒先を、染色に関わる人たちが染めた暖簾が彩ります。
ぼかし屋も初めて参加。
ミシンのお店「ステッチ工房」さんの店舗を飾らせていただきました。





 ステッチ工房さんはパッチワークやキルティングを楽しむミシンを扱っていて、お店の中には絵画かと思うような繊細なお仕事ぶりの作品がたくさん飾られています。
 イベント当日、ステッチ工房さんでは「ワンコイン ミシン体験」を実施。500円で可愛いポーチが縫えます。小学生の女の子と同じテーブルでこちらも体験しました。間違いなく縫えるように準備されていて、短時間でポーチをゲット。ほくほく(^^)/
 お近くの方、来年いかがでしょうか。

    ステッチ工房
   〒161-0034東京都新宿区上落合3-3-2
          ℡&Fax 03-5925-2344
    

 暖簾制作にあたっては、着物ではなかなか染める機会のない華やかな色でぼかしの染め分けをしたいと考えました。
選んだ配色は「春」桜色、若草色、菜の花色の三色です。

 まず引き染め


 染め分けに似合うように桜を濃淡で描きました。

 左右の面にバランスよく桜に咲くように配分しながら手描きしていきました。

 最後に顔料で花芯(かおりと呼んでいます)を描きます。


 出来上がり。着物ではないので絹糸で自分で縫ってみました。

 サッサと縫えば小一時間、のつもりが…○時間もかかってショックでした。
いつもなじみの仮絵羽仕立ては縫い目1㎝でよいものですから…(^^;)


ぼかし屋の染め風景 | 12:43 PM | comments (x) | trackback (x)
上野の国立博物館で開催中の「春日大社 千年の至宝」展を観てまいりました。
          ※写真は展覧会のパンフレット、図録、絵葉書より


 開催期間は3/12までですが国宝の「金地螺鈿毛抜形太刀」の展示は2/19までだったので、駆け込むように行ってきました。


 この写真の中央にあるのがその太刀です。

太刀の名前が示す通り、金地に細かい螺鈿の装飾が一面にあります。
どんな吉祥紋かと思いきや、猫や雀といった身近な生き物を写実的に彫り込んだ螺鈿です。




 刀身の細い飾り刀の鞘なので、実物で拝見すると本当に細かいのです。
螺鈿を彫った貝はいかにも薄そうで、はかないような印象でした。

「毛抜き」の名は刀の柄に毛抜きの形が彫りぬかれているからだそうです。
ちなみにこの柄部分はほぼ純金とのこと。豪華です。

 宝物の中で印象的だったのは「瑠璃灯篭」
展示では黒っぽい色の一般的な灯篭に見えましたが、中に灯をともすと


このように瑠璃色に光るそうです。
回りを囲んでいるのはビーズ状につないだ瑠璃石の簾というわけです。

 人の描写が生き生きしていて面白く、しばし眺めたのは
「春日本、春日権現験記」(かすがぼん かすがごんげんげんき)
なんと!はるか13世紀鎌倉時代に描かれたものです。



お社の建築作業中の職人の面々。
なんて生き生きしているのでしょう!!!


槍鉋(やりかんな)で板を削っていたり、奥の職人は柱の先端をくり抜いています。
右端の職人は遠くから指図する親方に向かって何か叫んでいるのです。

解説によればこちらの写真↓の右端が指図する親方だそうです。
「おい!アッチで手が足りねえ。何人か回っとくれ」
「そいつぁ請け合えねぇ。コッチだって手一杯なんでさ」
「おい!何だってぇの?」  
   (江戸落語風 脚本ぼかし屋)


休憩時間で「あ~やれやれ」

はだけた衿から筋骨たくましい背中が見えています。

まだ半人前の小僧さんたち。明らかにサボっていますね。(^^)/

 右の職人が使っているのは釿(ちょうな)という材木を削る道具だそうです。

二人一組で計測したり、印付けしたり。

ご先祖様たちもセッセと働いていたのですね~!(^^)!

こちらは打って変わってお公家の世界

 当時の一大権力者、白河上皇の春日大社へのお参り。

皆さんお行儀は良いけれど…

大きな上皇の牛車を「もうちょっと右だ」「いやこの辺りでいいだろう」「まだ離しちゃだめだ」などと苦労している表情です


お顔も老若色々、細面からメタボのお顔まで様々ですね。
回りにはよそ見したり私語に勤しむ面々も。


 僅かしか見えませんが、画面の両端には、庶民の僧俗男女が地面にぎっしり座ってご一行を見物しているのが描かれています。
例外なく頭巾で頭を覆っているのは当時の風俗でしょうか。


  ざっと800年前の絵巻で、これだけの描写を楽しめるとは今回初めて知りました。
中世が本格化する時期、西欧ではまだまだ宗教にがんじがらめの絵ばかりだったかと思います。
 世界に冠たる!と言って差し支えない日本の文化はアニメだと思っていますが、
その源流は絵巻にあると言われていますが、鎌倉時代の絵巻ですでにこれほどリアルな表現がされているとは知りませんでした。


 寒くて人の少ないこの時期、常設展示も充実しています。
お訪ねになってみてはいかがでしょうか。


 教科書でしか見たことのなかった本阿弥光悦舟橋蒔絵硯箱(国宝)を拝見。
所蔵品なので撮影自由でしたが、球面に光が反射し、うまく写せませんでした。
本物はしっとり静かな色合い。
この斬新な球面フタの文箱、作例が他にないのは制作が大変難しかったからでしょうか。

<
3/8追記
「春日権現験記」の大工仕事の光景に登場した釿(ちょうな)、どんな道具なのか知る機会がありました。


竹中工務店HPのアーカイブより

 大阪城の千貫櫓(せんがんやぐら)に釿(ちょうな)
で削った板が使われた床があるそうです。豊臣氏滅亡直後に徳川幕府によって再建された櫓で約400年前の建築だとか!


       大阪城 千貫櫓の床 TVぶらぶら美術・博物館 3/3放送より


 槍鉋(やりかんな)や台鉋(木製の台にはめ込まれたカンナ)ではなく釿(ちょうな)が使われたため、このような独特の凹凸のある床面になるそうです。


 番組では手斧(ちょうな)と表記していました。

 竹中工務店HPアーカイブの説明によれば、釿は大工道具の生きた化石ともいわれ、
古墳時代の鉄製の出土物にも見られる道具で、
釿で出来る独特の波状の削り肌を名栗面(なぐりめん)と呼ぶそうです。
なるほど古い日本建築で見たり踏み歩いたりしたことがあるような…。
真っすぐな板面を作りやすい台鉋の発達と入れ違いに槍鉋や釿は江戸期以降あまり使われなくなっていったそうです。 




展覧会ルポ | 01:00 PM | comments (x) | trackback (x)
おかげ様で無事に染芸展が終了しました。
会場で撮影した自作です。






題名は「雨天」としましたが、
多くの方から「ほんと、雨ね」との言葉を頂戴しました。



染色工程は1/29のブログ「東京手描友禅、訪問着の染め風景」に載せました。

あじさいは好きなモチーフなので、これからも試していきたいと思います。

 友禅の体験コーナーではお客様と楽しいひと時を過ごしました。
筆に染料をつけ過ぎて糸目糊から色がはみ出し焦るお客様や、
ぼかしたハズが、くっきり色分けになって苦笑いするお客様や…
昨年お会いした方がまたお越しくださったり。
皆様ありがとうございました。
また来年に。

お知らせ | 01:50 PM | comments (x) | trackback (x)
 東京手描友禅の職人組合である東京都工芸染色協同組合が主催する
今年の染芸展が2月3日から始まります。




例年よりほぼ一か月早い時期ですが、会場は昨年と同じく浅草です。
雷様お参りと合わせてお立ちお寄りいただければ幸いです。



 私は講師として手描き友禅の色挿しを体験するコーナーに詰めております。
ご興味のある方は是非一度お試しください。

※ 友禅体験コーナー受付時間→ 10時~14時(初日だけ13時開始)

※ 当日申し込めますが、混雑の場合は順番をお待ちいただく場合があります。
     所用時間はだいたい1時間。(材料費込みの参加費は3500円)


昨年も大勢の方々に体験をお楽しみいただきました。
なかなか思うようにいかなかったり、アッという間にはみ出したり。
でもそれが良い思い出になります。
「毎年参加して、作品で染め額を作っているのよ」とおっしゃるお客様もいらっしゃいました。


お知らせ | 06:34 PM | comments (x) | trackback (x)
今回の染芸展出品作の染め風景(一部)をご紹介します。
あじさい模様の訪問着です。



  色の準備

  花の部分から先に色挿し

  糸目糊がよく見える写真になりました。




  葉の部分の色のラインナップ。
微妙な色の違いを組み合わせて濃淡ぼかしを多用します。





総絵羽(裾模様、上半身、袖すべて縫い目を越えて模様が連続すること)なので、作業の途中で模様と色のつながりを確認しながら色挿ししていきます。


  色差し終了。並べて全体の色合いの確認。
色挿しは時間がかかります。そのため途中で乾燥によって染料の濃度が上がると、色が思いがけず濃くなってしまいます。調整のため染料に水を足しながら色挿しするのですが、それはそれで!「水が多すぎて色は薄くなる」危険と背中合わせ。
濃いも薄いもツドツド確認、最後にまた確認。色合いに違いが出た場合は、この段階で調整します。



 濃い部分から順に地染め


今回は五寸刷毛以外に小さい丸刷毛も利用してを思わせるぼかし表現にしました。


 染め作業が終了した直後
色全体を確認してから、次の工程へ。
蒸し、糸目落とし、水洗い(水もと)、湯のしへ進みます。
ぼかし屋では京都の丸京染色さんへ依頼しています。


 ぼかし屋がボ~っと思いますに…
この状態の手描友禅の生地は、フノリを掛けられ、伸子や引手で引っ張られ、蒸気を浴びせられ、染料をかぶって、もうゴワゴワです。
それが丸京さんから帰ってきた生地は、真っすぐ、フワフワで光沢を放つ絹に戻っているのです。
絹…すごい材料です。


2/8追記
丸京さんから湯のしまで終えて帰ってきた生地を衣桁にかけて、染め上がりの最終チェックをしています。


染めムラがないか、※絵羽の部分の色が合っているか、などなど。

色もよく合い、ズレもないようです。(^^)/


 丸京さんの洗いで糸目糊が落ちているのがご覧になれると思います。


糊がとれると友禅模様の糸目が白く浮き上がり、サッパリと明るくなります。
染色作業の嵐をくぐった絹は、最初の白生地の時と同じように柔らかい光沢のある生地に戻りました。

 生地を剥ぎ合せて反物状にして染色作業してきましたが、このチェックが済むと解いて(衿と衽を離して)※上げ絵羽仕立てに進みます。

※絵羽
縫い目を越えて模様がつながっていること。
裾模様はもちろん衿、胸、袖の模様もつながっている柄行きは、振袖や訪問着などに多く見られます。
絵羽については、下記に詳しく載せています。

当ブログのカテゴリー「東京手描友禅 模様のお話」
http://www.bokashiya.com/blog/c7-.html
2014/4/9「東京手描友禅-模様の参考に。絵羽模様」

※上げ絵羽仕立て
展示用の仕立て方のこと。本当に着用するのではなく、柄の位置や出来上がりを見る、見せるためのものです。衿肩開きを切らずに衿付けをします。
 よく似た言葉に「仮絵羽仕立て」があります。
染める前の真っ白の生地をサイズに合わせて裁ち切り、着物の形に仮仕立てすること。
そこに下絵を描いてから解き、反物の状態に戻してから染色作業します。
友禅の「誂え染め」には欠かせない工程です。


ぼかし屋の染め風景 | 06:01 PM | comments (x) | trackback (x)
    謹賀新年



 昨年中は皆様に大変お世話になりました。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。




 このHP、ブログにはぼかし屋友禅あてのメール連絡票
    「お問い合わせ票」が付いております。
ぜひお読みいただいての感想、ご質問、各種ご指摘など、
お気軽な送信をお待ちいたします


 この年明けは色差し作業をしながらラジオで除夜の鐘を聞きました。
それでも毎年恒例、ウィーンフィル、ニューイヤーコンサートをテレビで楽しみました。


パイナップル↑

 毎年注目のお花の飾り付け。今年は、色調としてはシック。
実はかなり面白い取り合わせでした。
指揮者のグスターボ・デゥダメル氏がベネズエラの出身だからか、
中南米原産の蘭とアマリリスが多用されていて、おまけに、


パイナップル↑

パイナップルが飾られています(^^)/
よく見るとかなり多く使われていて、


           パイナップル↑

ほら、コンサートマスターの足元にもパイナップルが!!楽しいですね。
パイナップルと花々がよく溶け合っていて素敵です。
毎年このコンサートの花の飾り付けは友禅屋さんにとって参考になります。

 解説によれば、指揮のグスターボ・デゥダメル氏は35歳。ニューイヤーコンサート史上最年少。若々しい新しい試みのある選曲をしているそうです。

初選曲の中に懐かしい曲がありました。
フランスの作曲家、ワルトトイフェルのワルツ「スケートをする人々」です。
私を含め一定以上の年齢層では知名度が高く、曲もよく知られているはず。
小学校の音楽の教科書に、木琴などを使った合奏曲として載っていましたから。
小学生向けに短くやさしく編曲されていて、かなり長期にわたって教科書に載っていたようです。
題名は「スケーターズワルツ」だったと記憶しています。



この演奏で打楽器奏者が変わった鈴を鳴らしているのが写りました。
算盤のコマが鈴になっているような楽器。
枠を叩いて微妙な鈴の音を響かせていました。

懐かしい、小学校、と言えば、
昨年はなんと母校の東京都、東久留米市立第六小学校で、4年生たちの伝統工芸体験教室に講師として参加する機会がありました。
懐かしい校舎の中を、実にン十年ぶりに歩きました。


残念ながら写真は校舎だけ。
個人情報保護の観点から、講師として生徒さんと一緒の写真は撮影が許されませんでしたが、伸子針で怪我をしないかハラハラしつつも、楽しく生徒さんと過ごしました。

今年もいくつか体験教室のお役が回ってきそうです。
制作だけでなく、こちらも頑張ります。


お知らせ | 01:08 PM | comments (x) | trackback (x)
今日は地入れ作業をしました。
刷毛でフノリを生地に塗り、生地をパリッとさせて
手描き友禅の染め工程に備えるものです。



生地に糊が効いていると染料をよく含み、均一に綺麗に染まります。
染める箇所により濃いフノリと薄めのフノリを塗り分けるのに大小二つの刷毛を使いました。刷毛は大切なものなので、使用後すぐに湯で洗い糊を落として乾燥させます。


セッセと洗って干して、ふと「随分と古びたなあ~」と思いました。

手持ちの刷毛のうち、一番新しいものと比較すると、





こんなに毛がすり減っています。もとは同じ幅五寸の刷毛なのに。

同じ商品の刷毛を染料染め用とフノリ地入れ用に分けて使います。
この刷毛はフノリの地入れ用なので、使用が激しいのです。
染料の地染用は色の系統別に刷毛を揃えるので、一本の刷毛がこれほど擦り減ることは、ぼかし屋の場合はありません。
地入れ用でまだ大丈夫と使い続けてきましたが、そろそろ引退が近いかもしれないと、今日はシミジミ思ったことでした。
でも長年の活躍を思うと愛着がありまして。



この染め刷毛は京都の川勝商店さんが売っているもので、ずっと変わらない品質です。
たっぷりした毛が放射線状に広がり、染料をきれいに染めつけてくれるのです。
生地に吸い付くように動いてくれます。この刷毛を作る職人さんが減っているそうで、手描友禅と同様、刷毛も絶滅危惧種です。(>_<)
川勝商店さんは京都のお店なので、京友禅や京都の無地染め、草木染めなど様々な分野で使われているはずです。

 刷毛に「赤系→」と書いてあるのは、
赤系の染料のぼかし染に使う刷毛という意味です。
→は、ぼかしの濃い色の方向を示すしるしです。
刷毛の向きを間違えると、ぼかしの濃淡がきれいにつきません。
刷毛に含まれた染料は作業中はよく見えないので、いちいち→を確認しながらぼかしていきます。
師匠(伝統工芸士、故早坂優氏)の習慣をそのまま真似ております。



思いつきで、染め道具類を納めている戸棚の写真を撮りました。
刷毛や染料、皿や器、顔料、糸目糊の道具などなど。



刷毛は毛を傷めないように、戸棚の中で宙吊りになるように工夫しております。
刷毛は糊地入れ用と染料の地染用は兼用できず、染料も主な色、濃淡別に揃える必要があるので、何列も刷毛が並んでいます。

高価でもありまして、大切に使用、保管しています。

※ 2014年8月9日の当ブログ「東京手描友禅 染の裏方、フノリ地入れ」にて、地入れ作業を紹介しております。
ブログのカテゴリー「東京手描き友禅の道具・作業」をお選びになると簡単に遡れます。
是非ご覧ください。本日取り上げた刷毛も写っております。


東京手描友禅の道具・作業 | 11:14 PM | comments (x) | trackback (x)
前回の風神雷神図に続き、京都で観てきた絵について。
 京都は幾度か観光で訪れましたが、今回初めて絵を見るためだけに一人で歩き回ってきました。
第一の目的は大徳寺聚光院の襖絵公開です。
 狩野永徳の原画はふだん京都国立博物館の収蔵となっていますが、聚光院の創建450年の記念に今年度に限り里帰り。本来の場所である聚光院方丈で見ることが出来るのです。



 撮影してよいのはこの門の所だけ。
庭を含め一切不可で手荷物も預けて、建物を傷めないように、とのことでした。
確かに木材は古くカサカサしていて、大勢の人が入ると負担になる感じでした。
よって以下の写真は、絵葉書、手持ちの図録などから。

   
方丈の中央の間の襖絵16面 「花鳥図」狩野永徳 大徳寺聚光院

 聚光院の花鳥図は左右の側面と正面奥の三方あります。

一番有名なのは右の側面、梅の老木を描いたもの。

右の側面、右寄りの一部

正面は松に鶴、山水を描いたもの。

           正面の左半分
襖の向こうは仏間で、見学時は中央襖が開かれていました。


 左の側面一部(右半分) 松や芙蓉に鶴、雁など。
2014年に日本国宝展が開かれた時は、この左側面が展示されました。
ガラス越しながら至近距離で観て、鶴が非常に写実的で驚いたものでした。


 松や岩が豪快な描き方なのに比べ、鶴や小禽が細かい描き方で、特に鶴は若冲を思い出させるほど羽根や足が微細な筆使いだったのを記憶しています。


 左側面の一番左端

 さて、今回は絵の前に立つことはできず、廊下側から室内を覗き込んでの鑑賞でした。
扉が全開にならないので(作品保護のためでしょう)三か所から見学の一行は分かれて覗き込むのです。
 展覧会のガラス越しでしか見たことのない絵の本物がすぐそこに…。

面白い事に気付きました。
国宝展で観た「松に鶴図」(左側面)では、松が全体(襖四面)のうち右に寄り過ぎで、


しかも右手前でこちらに向かって伸びる枝だけが不自然に濃く描かれていると思ったのですが、



 こうしてお座敷で見ると… なるほど、
本当は松の枝は、柱をはさんで正面襖の左端にも対となる濃い枝が伸びているのでした。



 想像ですが、お座敷で正面に向かって座ると、
左隅の松の枝々が自分に向かって伸びてくる感じがするのでは?
永徳が柱と角度を利用して立体感を味わえるようにしたのですね。

部屋全体で構図を見ると、正面に向かって左隅(鶴二羽と松)と、右横(梅の老木)の
二か所に重点
が置かれていたことと分かりました。

 隣室は同じく永徳の「琴棋書画図」

               写真はごく一部です。

 琴棋書画を楽しむ文人たちより、まわりの風景を重視した描き方で、岩と松の山水画のようでした。
琴棋書画図には似つかわしくない言葉使いですが、「ド迫力」を感じました。
写真はごく一部だけ。お伝えできず残念です。

狩野永徳がこの板の間で、出来上がった襖をはめ込んで眺めた時もあったはず…。
450年間よくぞ残っていてくれたものです。

 この特別公開は来年の3月まで。予約など案内のサイト
http://kyotoshunju.com/reservation/?page_id=2

予約時間別にグループ見学で、覗き込むだけ、です。くれぐれも。
でも現場で観た価値はありました!


聚光院さんは通常、精巧な複製襖をはめておられるそうです。
そちらもいつか拝見の機会があれば嬉しいですね。お座敷に座って。

展覧会ルポ | 04:05 PM | comments (x) | trackback (x)

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