東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
長い白生地を染めるには---友禅染の下準備。
 当ブログをお読みくださった方からご質問をいただきました。
「長い反物。どうやって普通の住宅の中で染めているのですか」

答えは「切ってから染める」です。

お客様のサイズに合わせてまず白生地を裁って白い着物を仕立てます。
仮絵羽仕立てという簡単な縫い方です。ここに下絵を描きます。
 
 仮絵羽仕立て


 仮絵羽の上に下絵を描いているところ。


 これを切り離し、糸目糊置きした後はこのように着物は各パーツごとにバラバラです。


 バラバラの生地をまた元の反物の状態に縫い合わせます。
見頃2本、衿と衽で1本、袖2枚で1本、裾回し1本、計5本の長い生地にして、生地の切り口には染色作業用に端切れを縫い付けます。(張り手や伸子に生地を掛けるため)



ミシンは剥ぎ合せ専用のミシンです。
2014/3/13のブログ手描き友禅の裏方道具、継ぎ合わせミシンでも紹介しています。

  縫い合わせが済んだところ。



 長い反物の状態に戻りました。
これから先がいよいよ染色作業となります。

東京手描き友禅は誂え染めの一点物が多いので、
このように切り分けて作業することができます。
引き染めの専門業者の方や、型染め屋さんは条件が違うので反物を切ってしまう訳にはいかず、細長い大きな作業場で仕事をなさっています。

※当ブログにはお問い合わせフォームがついております。
ご注文に限らず。ご相談やブログについての質問などなど…歓迎です。
お気軽にフォームから送信してくださいね。
お返事申し上げます。

2014年12/27 追記
端縫い掛け、ふのり地入れ(14年8/9ブログで紹介)と進み、本日地染めをいたしました。
裁ち切って、剥ぎ合せて染めていることがよく分かる写真を撮ったので追加で掲載します。


 端縫いかけした端きれが生地を守っています。染色作業では必須です。端きれは絹の着物生地でなければ役に立ちません。(化繊では強度が足りず、染料を吸ってくれないため)着物を制作するごとに余った生地を色試しに使ったり端きれにしたり、無駄なく利用しております。

 これが今年最後、〆の地染めになります。
お正月は色挿しを頑張ります。捗るかな!?
皆様よいお年をお迎えください。
東京手描友禅の道具・作業 | 09:41 PM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅、模様の参考に。
東京国立博物館で開催された国宝展を観てまいりました。

一番の目的は長谷川等伯の「松に秋草図」 



ですが、実は今回は隣に飾られた狩野永徳の「花鳥図」に見惚れました。



 永徳を始めとする狩野派が、一匹オオカミの等伯を敵視し、今風に言えば「イジメた」のは史実なので、狩野永徳にも人物としてはよいイメージを持っておりませんでした。
 しかし初めて観るこの「花鳥図」の完璧さは…。 
実物を観られることの有難さを痛感しました。これまで永徳の作を観たことがないわけではありませんが、今回ほど強い印象を持ったことはありませんでした。
 鶴と松の取り合わせ、向かって右、上の方で手前に張り出す松の枝が、実物では大変迫力があり、こちらに迫ってくるようでした。鶴は驚くほど正確で写実的に細部を表現しています。墨の濃淡を利用して重ね描きすることで立体的な鶴の足を描いていて、しばらくジッと見つめてしまいました。まったくもって一分のスキもない感じの絵でした。
 永徳の代表作とされる「唐獅子図」や「檜図」のような金碧画(金の背景に彩色した屏風絵など)より、このような水墨画の方が、永徳の力量が分かりやすいように思いました。
 永徳ってどんな人だったのでしょう。織田信長に重用された永徳の作品はその後の戦乱で多くが焼失し著名な割には作品を観る機会は少ないとか。信長の安土城が残っていたらよかったのにと思います。

 この展覧会では、教科書に載っているから名前は知っているけれど実物は初めてという国宝のいくつかを拝見いたしました。
写真撮影禁止だったので手持ち写真がなく、
予算オーバーで図録が買えず (>_<)
ご覧いただくのはこの展覧会を紹介したNHKの番組の写真です。

 玉虫厨子 (飛鳥時代 奈良 法隆寺) 


 入場してすぐにとても大きなお堂のような物があると思ったら有名な玉虫厨子でした。台に乗せられているとはいえ、見上げるほど大きい厨子とは思っていませんでした。照明も暗く厨子も黒ずんでいるので、まだ僅かに残るという玉虫の羽根飾りがどこか分かりませんでした。側面に描かれた有難い仏画よりはミーハーにも羽根飾りを見たかったのです。NHKの番組では羽根飾りの部分が大写しになっていました。


ズームして照明をあてると、飾りの後ろにはめ込まれた羽根があるのがよく分かります。(テレビ映像では妖しい玉虫色に輝いてましたが、写真が低質で申し訳ありません)
制作された当初はどれほど輝いていたのでしょうか。

 善財童子立像 (鎌倉時代 快慶作)

  角髪(みずら)に髪を結った少年の像。


海を渡る文殊菩薩を先導する少年で、この像は文殊菩薩を振り返った一瞬を表わすそうです。華やかで、番組の解説者は「出来た当時は少年アイドルのようだったと思う」と述べていました。


衣に赤や緑の彩色と細かい模様がよく残っていました。
金箔と、細い金箔をはりつける截金(きりかね)の技法で表現されているそうです。

 扇面法華経冊子 平安時代12世紀



 解説によれば、女性も成仏できるとした法華宗は貴族の女性に大変人気があったそうです。
(逆に言えば当時他の宗派では悟りを開いて成仏できるのは男性だけ)
法華経の経文をかいたこの冊子はお洒落なことに扇型なのです。当時の価値観では成仏して極楽にいくには、仏への奉げものや仏に関連したものを、実用性だけでなく美しく飾る必要があったそうです。だから扇型にした上で、さらに経文の背景に美しい絵を描いたというわけです。
 絵は経文の内容には無関係。貴族でないが身なりの綺麗な男女が雀取りをしているところで楽しい雰囲気でした。それにしても古いのに色彩が退色せずによく残っているものです。

 楓蘇芳染螺鈿槽琵琶 (正倉院御物の琵琶の一つ)



 螺鈿の細工がきれいでしたが、それ以上に驚いたのは楓の木地自体が艶やかで生き生きしていたこと。弦を張れば音が鳴るように見えました。天平の音色、聞いてみたいですね!

 この琵琶に代表される正倉院御物は、展示されれば大勢の観客が押し寄せ、展示品の近くに寄れないと言われていますが、今回はじっくり鑑賞できました。実は行く予定がない日に豪風雨となり、予定変更して急きょ上野に出かけたのです。目論見があたり来場者は少なめ、会場はソコソコの混み具合。さほど並ぶこともなく国宝の中の国宝を間近に鑑賞できました。!(^^)!

展覧会ルポ | 11:53 PM | comments (x) | trackback (x)
運ばれていく着物
 本日の朝日新聞朝刊上に、気持ちに残る写真がありましたのでご紹介いたします。



 一週間前の地震で被災した長野県白馬村で、解体作業中の家屋から貴重品を運びだすボランティア活動中の女性の写真です。白馬村は豪雪地帯。壊れた家屋をそのままにしておくと雪で倒壊して家財も雪に埋もれてしまうので作業を急ぐ必要があるそうです。
 彼女が手にしているのは和箪笥の中引き出し。三段分を両手で持ち上げ中身を落とさないように一生懸命に運んでおられます。すぐ側で重機が動いている様子。埃をかぶらないように被せてくれた新聞は風でめくれています。ボランティアの方の心使いが伝わる写真だと思います。
 中引き出しに収められているのは男性用の羽織のように見えます。重ね具合から羽織と長着のアンサンブルでしょうか。その下にも男性用浴衣らしい柄がみえます。このように箪笥を管理していた持ち主の方なら、大切な女性用の着物もたくさんお持ちだったことでしょう。思い出の着物や大切な方の形見の品も。考えつつしばらく見入りました。
 私も以前水害にあった着物の再生をご注文いただいたことがあります。思い出の着物は「めったに着ないけれど、きちんとした状態で保管しておきたい」とおっしゃるお客様は多くいらっしゃいます。
 この写真の和箪笥の持ち主の方も、大切な品々を少しでも多く取り戻せますようお祈りするばかりです。それに各地で健闘なさっているボランティアの若い皆様、ありがとうございます。

着物あれこれ | 02:19 PM | comments (x) | trackback (x)
紹介 ― 京友禅の工程映像が見られる立命館大学の講座
 京都の伝統工芸、特に京友禅の現状などについてインターネット上で学べる講座が開講中なので紹介いたします。誰でもタダで受講できますが、れっきとした立命館大学の講座です。
 J-MOOC(ジェイムーク)という大学講座受講システムをご存じでしょうか。
大学が授業をネットで公開して誰でも無料で受講するシステム(MOOC)は、アメリカの大学が始めたもので、例えばハーバード大学のサンデル教授の有名な授業「Justice」も公開され受講後の試験に合格すると修了証も取得できます。その日本版がJ-MOOC。今はかなり多くの大学が特色ある講座を公開しています。
 受講態度はそれぞれのニーズに応じて。私は文系人間なので歴史や芸術系の講座をとって、ラジオ替わりに聞いています。修了証不要なので興味ある所だけ。
 今回は友禅染めが扱われる講座だったので受講してみました。分業で制作される京友禅は、主に一人の制作者による一貫作業で染められる東京手描き友禅とは成り立ちの違いはありますが、作業内容は同じ。置かれた現状も同じなので皆様にも参考にしていただけそうです。
 J-MOOCでは「よくわかる!iPS細胞」などの講座も今後開かれるそうです。興味ある講座をみつけると面白いですから、ぜひ一度検索して内容をご覧ください。

 講義内容の吟味はそれぞれお任せするとして、ここでは検索方法を簡単にご案内します。

gaccoと入力して検索すると
gacco The Japan MOOC | 無料オンライン大学講座「gacco ...
が見つかりますのでクリックして入ります。



 右上に「会員登録」の表示があります。Eメールアドレスを使ってユーザー登録します。

 この画面下方に「歴史都市京都の文化、景観、伝統工芸」立命館大学という講座名が表示されています。



 登録したら講座を選んで、いざ受講です。



 京友禅について主に取り上げられているのは同講座のなかでも第四週の後半です。
「友禅を作る―染匠(悉皆屋)の仕事と職人 1,2」という講義です。
分業なので工程ごとに違う職人さんの作業で、友禅染め制作の主な工程(地染を除く)を動画でご覧になれます。
 第三週でも京友禅や京焼など伝統工芸の戦時中の状況について取り上げられており、
一気にジャンプして興味ある講義だけ聞くこともできます。



 第三、四週の講師は木立雅朗先生。

※ご覧になる方へ。2014年12月初めに終了する講座なので、早めの受講登録をお勧めします。各講座には新規受講登録の申し込み期間があり、期間を過ぎると受講できなくなります。
いったん登録してあれば受講に時間がかかっても大丈夫、それに何度でも聞くことができます。

※追加でコメント。 11/23
 講師の木立先生は今回初めて京友禅の職人さんにお会いになったとのこと。「京町屋に住んでいて作務衣を着て友禅染をしていると予想していたら、ごく普通の洋風の家に住んで仕事をしていた。和風家屋でさえなかったので驚いた」と大変正直な感想を述べておられます。
 これが東京ですと、「下町風の木造家屋でガラス引き戸をガラリと開けて入るような家に住む作務衣をきた寡黙な年配の職人さん、もちろん男性」というイメージを多くの方々がお持ちになっています。
 この気持ちは私自身よく分かります。子供のころは私もそう思っておりましたので。(^^;) 
実際には、木立先生が味わわれたように「あれ?イメージと違う…」ことになります。
 住宅事情の厳しい東京では一戸建でさえない場合が多く、女性も多く、男性も実はあまり寡黙ではありません。むしろオシャベリタイプが多いのです!(*’▽’) 本当ですよ。
 ぼかし屋のお客様にはご注文や相談のためにご訪問くださる方もいらっしゃいます。
大歓迎!(^^)!なのですが、必ず事前にご案内するのは「がっかりしないでくださいね。
どこにでもある集合住宅の一室なんです」皆様気にせずお越しくださるので本当に嬉しいです。

 ※さらに追加でコメント 12/10
 この講座の工程映像には地染がなく、白地の着物なのがちょっと残念です。
京友禅の手描きを講座用に、一点物で創作してもらっている映像なので、せっかくですから地染も見たかったと思います。 
 映像では伊藤若冲のオシドリの絵を元に下絵を作成しているので絵画のように白地に描いた方がよいという判断だったのでしょうか。
裾模様の一番のポイントは普通は上前、膝あたりに置きますが、映像の着物ではにあります。着物の柄行きというよりは、若冲の絵画を着物上によみがえらせることを主眼に制作されたようなので、その点を含んでご覧いただくとよいと思います。

 ※追記 12/31
 紹介したこのMOOCの講座の新規受講登録は終了しております。
また着物や染色、伝統工芸に関わる内容の講座が開設されたらお知らせいたします。(^^ゞ

お知らせ | 04:52 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の染め道具 ぼかし刷毛
 反物に引き染めをする時に使用する刷毛は通常は五寸刷毛と呼ばれるもので、当ホームページのトップページにも写真があります。塗切りの染めだけでなくぼかし染めも五寸刷毛で行うのですが、特に不規則な感じのぼかし染めをしたい時には専用のぼかし刷毛を使っています。


 大中小あり主な色別に揃えたいところですが
高価なので青、赤系に大きく使い分けております。


 ふっくらと放射線状に毛が植え込まれています。束ねた毛の根本に砂を咬ませてギュッと縛り、このように綺麗に毛を立てているのです。


 まったく惚れ惚れする道具です。
 作る職人さんはもうほとんどいないとか。ケチケチと大切に扱っております。うっかり逆さにすると毛を立てている砂がこぼれ落ちてくるので、洗ったり乾かしたりする時も下向きにしておきます。

 最近この刷毛を使った時の写真です。
 最初にサッと大枠をぼかして


 さらにぼかし刷毛で細かくアッチ向いたりコッチ向いたりしたぼかしを加えます。


 刷毛に含ませる染料の量を違えることで濃淡をつけ、ぼかし刷毛をどのくらい生地の上を走らせるかでも濃淡をつけます。

 今回はザックリと葉っぱのイメージで、さらに色を加えます。


 数種類の緑色と黄、グレーを使いました。


筆描きした葉の上からぼかし刷毛でこすると葉の境目が柔らかく滲みます。



 緑系の色目で染め上がった模様となりました。
東京手描友禅の道具・作業 | 11:01 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅 模様の参考に、五島美術館の秋の展示「絵画、書跡と陶芸」に行ってきました。



一番の目当ては紫式部日記絵巻。
現存する物語絵巻類では最も古いだけあってかなり退色していますが、引き目鉤鼻の公達や女房たちが上品で静かに美しく、何度見ても見飽きません。


 中宮彰子が男子を産み、女房たちが正装でかしずいているところ。
 解説によれば女房の髪型は正式に前髪を結い上げているそうです。確かに額の上に摘み上げたように髪が上がっています。平安時代、女性はお下げ髪が基本ですが、正式な場面では奈良時代の女性のように前髪を高く結って飾りを付けたそうです。


 中宮を訪問した公達を紫式部が迎えているところ。
 西洋絵画で「○○を訪問する△△」というタイトルなら、訪問される側、訪問者ともに従者を従えて画面中央にドンと描かれるものですが、この図はポイントが右によっていて、位の高い中宮様は大きな屋敷の奥深くにいることを匂わせているだけ。とてもとても日本的ですね!
 ハッキリ表現せずに、良くも悪くも間接的に「ほら、わかるでしょ」と伝える日本風の原点のように思います。


 静かで上品に見えつつ実は儀式の後のくだけた宴会の様子を描いているそうです。
 盃片手に歌う人、女房の容姿や衣装を品定めする人、「この辺りに若紫さんはいらっしゃいませんか」と美男の誉高い公達が紫式部を探していたり。
今も昔も「打ち上げ」は楽しいひと時ですよね!

 尾形乾山の屏風絵の展示もありました。


尾形乾山 「四季花鳥図屏風」 左

                 右
 陶芸が有名な乾山の、これほど大きな絵画は初めて見ました。さっくりソフトに描いた感じ。

 特にきれいだったのは、輪郭を描かずに胡粉の白をぼかすことで姿を表現した白鷺の群れ。真似てみたいものです。

五島美術館はお庭も有名なので一巡りしました。

ムラサキシキブの花 ちょうど今が季節なのですね。

立派な寿老人。思わずお参り。

古墳があるとは知りませんでした。

名前が分からない花。受付の女性に尋ねましたが、「え~っと、何でしたっけ!忘れてしまいました」とのことでした。(^^;)
どなたかご存じの方、お問い合わせフォームで教えてくださいませんか。

※追記 2014/12/11
教えていただきました。エゾツリバナ(蝦夷吊花)だそうです。
秋に赤く熟した果肉と種子を採取するそうです。薬効もあるとか。

展覧会ルポ | 05:33 PM | comments (x) | trackback (x)
 友禅染の創作用の白生地には縮緬や綸子といった織り方の種類以外に、白い絹糸だけで織った生地か金銀の金属糸を織り込んだ生地かという種別もあります。金糸を織り込むと「金通しの生地」という呼び方をします。他に銀通しもあります。
 師匠の家に通っていたバブル経済の頃、本物のプラチナを織り込んだという生地も見たことがあります。(見ただけ(^^;)触ってもおりません~) 
 それはさておき…本日は同じ種類の模様を図案と生地を変えて染めた例がありますので、金通しと普通の白生地で染め具合がどのように違うかご覧ください。
 素人写真ですが、なるべく違いが写るように撮影いたしました。



制作に使用した生地。左が金通し。右が普通の白生地。地紋は同じ。

 金属糸の織り込み方によりますが、それほどピカピカ光るわけではなく、金通しならベージュに、銀通しならグレーに落ち着いて見えたり、光の加減によって光って見えたりします。



地染め。下が金通し。まったく同じ染料ですが、金通しの方が少し柔らかい感じがします。
辛子色の濃淡が三段階に出るようにぼかし染めを二回に分けて行っています。


  普通の白生地の方(上)


  金通し生地の方

 色挿し




 色挿しの出来上がりを見比べると濃い色の所ほど金糸がよく見えます。
金属糸は染料で染まらないので、同じ色で染めても金通し生地の模様の方が少しボウッとした感じに仕上がります。


金通しでない生地の模様には薄く金霞を加えて華やかさを出しました。


染め上がり。左の普通の白生地の方が色は鮮やかに見えます。


金通しがよいかどうかはお好みや、模様との相性によります。この作品例は帯地ですが、訪問着など着物そのものが金通しの場合は、お召しになった方の動きに合わせて光沢が出て華やかになります。
礼装というよりはパーティなどお洒落着に向くようです。


お太鼓に結ぶとこんな感じ。垂れ先にも辛子色の濃淡が出るようにぼかし染めしてあります。

金属糸をどの程度表に織り出すかは地紋のデザインによりますが、多くの場合表より裏に多くの金属糸が出てるため裏側の方が表より光って見えます。


ちなみに、このように裏にも表と同じように染料が染み透っているのは、
模様の色を手仕事で一つ一つ筆で色挿しした生地の特徴です。
ぼかし屋の作品紹介 | 09:55 PM | comments (x) | trackback (x)
 今までこのブログで話題となった「着物あれこれ」の中から、
最近実例を見かけた着物姿を2例紹介します。

その一
 昨年2013年4/27日のブログで取り上げた「腰巻姿」を、思いがけず映画で見かけました。



 「雨あがる」山本周五郎原作の一場面

 さほど大きくない大名家の殿様と奥方がくつろいで話をしているシーンです。殿様はお酒を飲みながら奥方に愚痴めいた話としています。お酌しながら聞いてあげている奥方が腰巻姿です。袴に見えるかもしれませんが、ブルーの小袖の腰に紺色の打掛を巻きつけています。立ち姿の場面がなく残念…。



 簡単にまとめただけのお下げ髪なのが印象的です。ブルーの小袖の燕子花の模様は写実的な友禅染め。燕子花の下は金箔があしらわれて華やかです。打掛は紺一色に見えます。立ち歩くと紺色の裾からさらに白地に燕子花や金箔の小袖がのぞくはず。すてきでしょうね!
 江戸時代を舞台にした時代劇では、身分ある女性はみな打掛をガウンのように羽織った姿で登場しますが、この映画の衣装担当の方はどんな意図で腰巻姿にしたのでしょうか。今では完全に廃れた着用方法ですが、能や歌舞伎では、よく似た着付け方法を見かけることがあります。

その二
2013年11/26のブログ「宮廷服の礼装」でご紹介した「袿袴(けいこ)姿」
伊勢神宮の遷宮の儀式で天皇家長女の黒田清子さんがお召しになっていました。



  家庭画報 2014年1月号より

 この写真が横から撮影されているので、袿(うちき、上から羽織るもの)と袴のボリュームがよく分かります。着用するとこんなに大きいのですね!この袴で歩くのは大変そうです。
さらに白い上着を羽織っているのは、おそらく神事への参列だからでしょう。袴はくるぶしまでの長さで引きずりません。
 この写真でもう一点面白いと思ったのは一番左端に写る男性の足元です。古くからの沓でも草履などの履物でもなく、大きな写真で見ると子供用運動靴のような白い靴を履いています。動きやすくて狩衣にも合うように現代になってからデザインされた物に見えました。実用的ですね。

2014/10/10追記
 先日の千家典子さんの結婚式の日に花嫁一同が出雲大社境内を歩く様子が報道されました。


         毎日新聞電子版より

 おや珍しい!袿袴姿ですね。報道各社で衣装の呼び名が違うようでしたが、
NHKでは「袿・切り袴」(うちき・きりばかま)と呼んでいました。  
 風で衣装があおられている分、足元がよく見えます。
袴の下は西洋風の靴。束帯姿の花婿は沓をはいています。
 花嫁は儀式そのものでは袿に長袴。(小袿姿)おはしょりしない袿と長い袴を優雅に引いて歩かれたようです。今回たまたま花婿が神職だったので、袿袴姿で境内を歩くという光景が見られました。
 こうして見ると袿に袴は意外に実用的な感じもしますね。
裾が広がらず帯も重い現代の着物より…。

着物あれこれ | 10:50 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の作品紹介 染め名古屋帯

 手描き友禅の染め帯作品を、染め風景とともにご紹介します。



 白生地の下絵に糸目糊置きしたもの。名古屋帯の前の部分なので生地の半分を境に模様を上下させて配置します。



 先に地染め。ピンクと藤色で染め分けした帯になります。





 色挿ししているところ。
 手描き友禅では液体の染料を筆で直接色挿しします。糸目糊で防染していても、はみ出さずに色挿ししても時間が経つと糸目を越えて染料がはみ出しやすいのです。ですから少しでも早く乾くよう生地にかるく熱気をあてながら色挿しをします。
 花びらに濃淡をつけるにも薄い色を先に挿して少し乾いたところで濃い色を重ねぼかしすると綺麗に出来上がります。ニクロム線の熱源は縁の下の力持ちです。







 同じテーマで二作染めていますが、色の挿し方を変えています。



 花びらの色。合計9色使っています。



染め上がり。



 仕上げで銀色をあしらいました。色挿しが華やかな方は渋い銀で。



 落ち着いた色挿しの方は輝きの強い銀色で。

 九月。菊酒造りのために菊の花びらを振り散らしているところをイメージしました。
先週ご案内した「しゃれ帯展」に出品予定です。

ぼかし屋の作品紹介 | 11:12 PM | comments (x) | trackback (x)
染め帯 展示会のお知らせ

東京手描友禅の先輩方にお誘いいただき、染め帯の展示会に数点出品いたします。
東京都染色工芸組合に参加する手描き友禅作家グループの創作染め帯の展示です。

 東京の友禅?どんなもの?など興味をお持ちでしたら、
この機会に会場にお立ち寄りくださいませ。
 今回のテーマは「酒」 テーマ以外の画題の作品もございます。


しゃれ帯展
ギャラリー サロン・ド・フルール

9月23日(火)~9月28日(日)

東京都港区南青山5-7-25
ラ・フルール南青山 1階
TEL 03-5485-8748

アクセス→ 東京メトロ 表参道駅B3出口より徒歩3分



※案内状の写真は東京手描友禅作家、佐藤洋宜さんの染め帯です。
お知らせ | 10:11 PM | comments (x) | trackback (x)

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