2015,04,17, Friday
手描友禅の本拠地、金沢へ旅行 ②旧暦の雛祭り
旅行は3月末でしたが、何度も
雛飾りを見かけました。
今年の
雛の節句は旧暦なら4月21日。来週の火曜日です。金沢では旧暦で祝う習慣が残っているのでしょう。雛人形があちこちで飾られていました。
前田家のお屋敷だった
成巽閣のお座敷では、
所蔵の雛人形や雛道具類の展覧会が開かれていました。

写真は展覧会ポスターより
前田家に伝わった大きな
次郎左衛門雛(じろうざえもんびな)
江戸時代中期に次郎左衛門という人形師が創り出した様式のお雛様で、当時大流行したそうです。テルテル坊主のような真ん丸なお顔に引目鉤鼻がちょんちょんと。可愛らしさが流行の理由かもしれません。現代でいうなら
キティちゃんのような存在だったのでしょう。
実はこの
お雛様の前に置かれたお供えにビックリ。
金花糖です。
金花糖
(きんかとう)は私が幼かった昔、東京下町の
雛飾り用の砂糖菓子でした。
当時住んでいた北池袋でも、お節句が近づくとお菓子屋さんの店先にたくさん並び、気軽に買えるものでした。
熱して溶かした砂糖を型で整え、冷やし固めて作る飾り菓子で、形は鯛や野菜が多く、春らしい鮮やかな色をしていました。
立体ですが中は空洞で、たいへん薄くデリケート。壊れないように竹の籠に盛って売られていました。指先でつつくと簡単に割れてしまいアッと思ったらもう遅く、イタズラして後悔する子供でした。
だんだん見かけなくなり、大学生の頃、池袋の東武デパートで、セロファンでラッピングされて並んでいるのを見て、
高級品になってしまったと驚いたものでした。
それ以降東京で見かけたことはありません。
復元に努めているという職人さんが新聞に取り上げられているのを、しばらく以前に読んだくらいですから、東京では飾る習慣が廃れてしまったのです。
この成巽閣の金花糖はとても写実的で、大きなお雛様に合わせて、大きなお飾りでした。
成巽閣の中は撮影禁止。でもあまりの懐かしさに携帯電話でソッと写しました。金花糖は成巽閣に含まれない…とへ理屈をつけて。ゴメンナサイ。
金沢市街でも何回となく金花糖を見かけました。嬉しいことに金沢では金花糖は健在。
全体に記憶の中の金花糖より立派でした。
この金花糖は昼食をとった金沢料理のお店「四季のテーブル」で撮影させていただきました。
模様を描いたハマグリもありますね。
加賀野菜の金時草(きんじそう)を使ったちらし寿司を頂きました。
お店の雛飾り。
階段箪笥の上に飾られています。なんてお洒落でしょう!
最後に、我が家の
マメ雛を紹介します。
現代版の次郎左衛門雛よろしく、我が家のお雛様の中で一番丸顔の可愛いお顔です。

2月に写した写真です。(鳴子のこけしも一緒です)
お供えは
雛あられと
干し柿。どちらも知人から手作りの品を頂きました。
特に
手作りの雛あられはこのたび初めて味わいました。やさしい甘さに香ばしさが加わり、あられは本来こういうお菓子なのだと感じました。なんでも姉妹で集まり年中行事としてお作りになるとか。素敵ですね。
干し柿は、茨城県の「ちょっと人里離れた所」に住む知人が寒風の中で作業して作った労作。こちらも手仕事ならではの美味しさでした。
ご馳走様でした。
季節の便り | 12:35 PM
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2015,04,03, Friday
時流にのって?手描友禅の本拠地、金沢へ旅行に行ってきました。
新幹線開通に沸いていますが、飛行機で行きました。交通費は飛行機の方がお手頃だったので。
金沢は二度目。前回は大昔の話で、名古屋回りで延々と長い特急列車の旅でした。
実はその時初めて見た
手描友禅にカブレたのが、
ぼかし屋としてそもそもの始まりだったのでした。懐かしい~!
今回は美味探訪。とても
美味しく楽しいお店を見つけたので紹介します。
観光ルートに従い、ひがし茶屋街と主計町(かずえまち)を歩いたあと、すぐ近くの並木町(浅野川、梅ノ橋のたもと)の
魚常さんという割烹料理屋さんに行きました。
予約がないのに、板前さんがニコニコと迎えて下さり、きっぷのよい女将さんが新参者にも分かりやすくお料理の説明をして下さいました。板前さんは女将さんの息子さん。
父である先代の板前さんを亡くされてちょうど1年経つという時のご縁でした。
今は板前さんの奥様も一緒に、ご家族皆さんでお店を盛り立てておられるそうです。
女将さんの助言で加賀料理コースを選び、初心者らしく加賀の春の味を試しました。
オードブルの後、女将さんが「これ大丈夫かしら」と笑いながら
テーブルに置いてくださったのが、「
イサザの踊り食い」
イサザは春を告げる魚だそうで、「これが出ると春だなあと思う」のだそうです。
幾らか金色味を帯びた小さな細長いお魚さんがグラスの中でピチピチと!元気よく!
そこにウズラの卵をのせてあり…。
踊り食いに縁のなかった私は一瞬固まった後、
女将さんの教えに従って「
のど越しを味わうように」頂戴しました。
ご馳走様とは、動植物の命を頂戴することだとよく言われますが、実感、実感!!
ツルンとしつつも、つぶつぶ感のあるのど越しを確かに味わいました。私も気分は春です。

これは有名な
じぶ煮
鴨肉と簾麩(すだれふ)を使うのが本来ですが、今は鴨猟が基本的に禁止なので、たいていのお店は鶏肉。魚常さんは頑張って仏産の鴨肉を手に入れているそうです。
フォアグラを頂戴したあとの鴨サンだとか。有難くパクパク。
きれいな酢の物。金沢野菜、ほたるイカと一緒の白く透き通ったものは、
ノレソレ。
アナゴの稚魚。「ホントにこの季節しか食べられない魚ですよ。
ノレソレって紛らわしいからアレコレとか何とか呼んだりしますけど」とは板前さんのお話。
つるぅんツルン! お魚になる前の味わいでした。
ほたるイカは金沢と富山では味が違うそうです。とにかく新鮮なので、
それこそのど越しさわやかでした。ビールの宣伝のようですが。
白エビの天ぷら。
エビの美味しさは勿論ですが、コゴミ、フキノトウの苦味がやはり春のお味で。それに好みで塩をつけて食べるのですが、その
塩が美味しい!塩だけ舐めても美味しい。
能登産の天然塩だそうです。
これを舐めながらお酒が飲めると心の中で思いましたが、表に出すのは控えました。(^^;)
塩を舐めて酒を飲むというのは、確かどうしようもない呑兵衛の所業であったと思いまして。

楽しく食べお話を楽しみ、女将さんから布ウサギのお飾りをいただいてお店を後にしました。
お店は浅野川沿い。川べりの桜は固い蕾でしたが、今頃はきっと満開でしょう。
来春もまた行って、もう少し落ち着いてイサザの踊り食いを味わいたいものです。
何しろ舞い上がってしまい、写真を撮り忘れたのですから。

翌日訪れた近江市場で
イサザを発見。
やはりピチピチと泳いでました。ビニールの中で。運ばれる先は…。
ご馳走様です。<m(__)m>
金沢駅のお土産コーナーで「能登の塩アイスクリーム」なるものを発見。試してみたら、やはり塩のコクが
効いて美味しいアイスでした。塩そのものも探して買い求めました。
魚常さんでは塩の名前までは聞かなかったのですが、何種類かあったうちの、粒の形状と色合いから判断しておそらく「珠洲の海」、正解だといいのですが。(^^♪
魚常さんのHPとブログ
https://www.uotsune.com/
季節の便り | 11:27 PM
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2015,03,20, Friday
工芸職人の地位・桜紋様の拳銃を見て
NHKに歴史ヒストリアという番組があります。
先日「桜田門外の変の主犯は水戸斉昭!」という内容で放送されていました。
何でも最近アメリカで発見された古い拳銃が、その箱書きや諸状況から井伊直弼の命を奪った銃だと分かったそうです。井伊直弼はまず発砲で致命傷を受け、動けなくなったところを刀で止めを刺されたことも水戸家に残る検案書などから分かっているそうです。
それがこの銃。

(写真は番組映像から)
番組では、この拳銃はペリーが幕府に献上したものを模倣して、
日本で製造された国産品だと紹介していました。
上がペリーの銃の図。アメリカ製の51ネイビーという銃だそうです。
下が直弼を撃った銃。
確かに寸分違いません。模倣元はいかにもアメリカ西部劇に出てきそうですが、
日本国産の方は何とも言えず和風です。
ベリーの拳銃は10丁ほどしかなく、それを手に入れて、「同じ物を作れ」と命じることができたのは、かつ井伊直弼を暗殺する動機があったのは、水戸斉昭。
彼こそ桜田門外の変の主犯だと、番組では論じていました。
歴女である私は、へえ!そうなんですか!と面白く観ました。
でも皆様に紹介したいと思ったのは、
別の観点から見たこの銃です。
銃身に一面に桜が彫り込まれています。
和風に見えるのは、鋼鉄全体が漆のように黒いことと、この桜紋様のためでしょう。
まるで漆塗りのようなイメージです。
モデルであるペリーの銃には彫り物などありませんから、これは製作者の考えで彫られたのです。「模倣せよ」と命じられて、機能を模倣したのに加えて、それ以上に美しい物を作り上げたということです。
「モノづくり日本」という言葉は好きではないのですが、思わず頭をよぎりました。
解説者によれば、強烈な尊王攘夷派だった水戸斉昭のために、天皇をイメージさせる吉野の桜を彫ったのではないかということです。
注文主である斉昭は喜んだことでしょう。そしてこの銃を実行犯になる藩士に渡して暗殺を命じた、と考えられるそうです。
もうひとつ、モノを作る側にとって一番重要なのは、
銃身に実際の製作者の氏名が彫ってあるということです。
これは鉄砲鍛冶の名前
これは桜紋様を彫った職人の名前
これには本当に驚きました。
いわゆる職人の社会的地位は江戸時代には低く、刀工のような特別な工芸職人をのぞけば、工芸品を作った職人の名前が残ることはなかったのです。刀の鍔(つば)や鞘(さや)も立派な工芸品なのに、名刀の銘で残るのは刀工だけ。
尾形光琳のように絵師は芸術家として名前を作品に残せましたが、着物を染めても刺繍をしても名前を作品に残すことはありませんでした。
中世の陶工はすべて無名。芸術家を自認して作品に自分の名をいれた初期の陶工である野々村仁清。彼以降でも献上品を作るときは、はばかって名前を入れなかったり、入れた名前を隠したりということがあったと聞いています。漆芸でも同じ。
比べてこの銃は、水戸斉昭という将軍に準じる身分の人に納めるにあたり、
製作者たちは堂々と名前を残しているのです。嬉しいですね~。
幕末は商人の力が台頭したとは歴史で習うところですが、
職人の地位も上がってきたのでしょうか。
明治期になると、美術工芸品を輸出して外貨を稼ぐという日本の国策に後押しされて、工芸職人の地位は上がっていきました。
不肖ぼかし屋でも誂え染めの着物が出来上がると、最後に下前の裾に落款をおしたりサインを入れたりします。
この習慣はいつ頃からか分かりませんが、大正、昭和になってからだと思います。日本画の画家が落款を入れることに影響されて、誂えの着物に落款が入るようになったのです。
江戸時代はどんな立派な打掛、小袖でも、能衣装でも製作者はみな無名。せいぜい納品した呉服屋さんや織元さん、つまり職人に作らせた人、の名前が分かったりするくらいです。
博物館で立派な刺繍の打掛などを観ると「こんな細かい仕事したのはどんな人だろう」などと考えます。毎日毎日黙々と針を動かし続けたのでしょうね。名前は残らずとも、作品が今日に残りましたよ、とガラス越しに語りかけます。
東京手描き友禅 模様のお話 | 09:01 PM
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2015,03,09, Monday
東京手描友禅 染芸展が終了しました。
あいにく雨模様が続いた週末となりましたが、大勢のお客様にご来場いただきました。
お客様方はもとより、東京手描友禅の大先輩(人生においても(^_-)-☆)の方々に作品を観ていただける貴重な機会で、よい染めとのお褒めや講評、ますます精進するようにとの励ましを頂戴したことは私にとって何よりの成果でした。
何といっても女性のお客様の「
ホントにすてき!着てみたいわ」
という言葉ほど嬉しいものはありません。
会場で撮影した
ぼかし屋の出品作です。
照明が強く写真の色がとんでしまいましたが、
本当は
裾濃(すそご、裾に行くほど濃い色)にぼかし染めした訪問着です。
30歳の娘さんと60歳のお母様が共用できるようデザインしました。
ぼかし屋の作品ですから、地色だけでなく模様も
ぼかし染め満載です。

赤み部分はいわゆる紅葉色ではなくかなり渋いローズ系の色です。
上半身はグレーとピンクグレーで
軽く片身代わりに染め分けております。上前(うわまえ)胸から左袖にも絵羽で模様がつながっていますが、この写真ではご覧いただけないので、後日ぼかし屋作品紹介のページを設け、会場にお越しいただけなかった皆様にも紹介したいと予定しております。
会場で私は主に
友禅染体験コーナーの講師役を務めておりました。
皆様 「何色にしようかしら」 「ぼかしに挑戦したのに塗切りになっちゃったわ!なんで?」 「筆を間違えて赤のはずが紫に!」 などなど賑やかに楽しんでおられました。
最後にはそれぞれにキチンと小さな作品を染め上げておられましたよ。
意外だったのは男性のお客様も多かったこと。
「毎年楽しみに来ています」とおっしゃる男性も。有難いことです。
考えてみれば友禅の染め職人は男性が多数派。不思議じゃないのでした…
皆様ぜひ来年またお会いしましょう。
※ちなみに
来年も同じ時期ですが、会場は浅草に移ります。
東京都伝統工芸染色組合のHP,またはぼかし屋友禅HPブログでもご案内いたします。
3/10追記
染芸展の合間に、隣接する
旧芝離宮恩賜庭園に行ってきました。
JR浜松町駅から徒歩1分の都会の真ん中ですが、冬景色のお庭を楽しめました。
寒かったけれど。(>_<)

梅が満開でした。さすがに枝ぶりがよいです。

場所柄を考えると雪つりには実用性はないようですね。(^^;)

池には野鳥がたくさん。大型の黒い鳥はカワウ。白黒の鴨はキンクロハジロ。
オレンジ色の頭はホシハジロ。図鑑で調べました。

千両と万両は知っていましたが、百両、十両、一両とあるのですね!藪柑子が十両だそうです。
そういえば今日3/10は東京大空襲で10万人もの犠牲者が出た日。
両親は揃って東京の下町の出身です。二人とも焼夷弾の降る中を逃げ延びることが出来たのでした。色々な意味で東京大空襲を忘れてはいけないと思っております。
お知らせ | 11:14 AM
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2015,02,21, Saturday
東京手描友禅・染芸展のお知らせ
東京都工芸染色協同組合主催の
染芸展が開かれます。
私は一点だけの出品ですが、先輩方の作品がたくさん展示されます。
すべて伝統工芸品・東京手描友禅の着物や染め帯です。
京都や金沢の手描友禅と技法は同じですが、
東京の特徴として、デザインから染めまでの
一貫制作が多いこと、製作者それぞれの
独自性が強く、
粋な雰囲気が大切にされています。
まったく型を使わず全工程が手描きの着物は、小売店ではなかなか展示されておりません。
ご興味おありでしたら、この機会に是非ご覧になってはいかがでしょうか。
展示販売会の形をとっていますが、どなたでも
自由に鑑賞していただけます。
友禅の体験コーナーもあります。
案内をご希望の場合は、会場受付で宮崎をお呼び出しください。染めの技法や各作品の特徴など説明申し上げます。お気軽にご質問ください。お楽しみいただければ幸いです。
東京手描友禅・染芸展
3月6日(金)13:00~16:30
3月7日(土)10:00~16:30
3月8日(日)10:00~16:00
※友禅体験は15:00まで。最終日は14:00まで。
会場→
東京都産業貿易センター浜松町本館3階
(港区海岸1-7-8)
JR浜松町駅北口から徒歩5分
ゆりかもめ竹芝駅から徒歩2分
※染芸展の
案内状をご希望の方は このホームページのお問い合わせフォームでご連絡くだされば、郵便でお送りいたします。
お知らせ | 11:29 PM
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2015,02,12, Thursday
無線友禅の半襟
東京手描き友禅で作成されるのは訪問着や振袖などの着物と染め帯ですが、
半襟やショール、風呂敷などの小物類の染めも行います。今回は半襟を染めたのでご紹介します。
塩瀬(絹の織り方の種類で半襟生地の多くが塩瀬)の白生地に複数の色で小菊を筆書きしました。臙脂色の紬に合わせるためにデザインしました。
スッキリした襟元になります。真っ白な衿もよいですが、
このように軽く模様があるとお洒落です。
この半襟は色を染付けしていますが、他に金彩で金銀の模様を付けることもあります。
ぼかし屋の作品紹介 | 09:56 PM
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2015,01,30, Friday
文化学園服飾博物館で、日本の染織技術について大変参考になる展覧会が開かれています。
「時代と生きる・日本伝統染織技術の継承と発展」2015年2月14日まで。
https://museum.bunka.ac.jp/
伝統の染織というと、古い時代の遺物か、1900年前後に発達した
絞り染めや友禅の手仕事の技術の紹介が中心になることがほとんどですが、
今回の展示は
現代の機械染めの技術までを系統だてて紹介しているところが貴重です。
江戸の昔からほとんど技術が変わっていない
手描友禅は別として、
型友禅の方はどんどん機械化されてきたことが、大変分かりやすい説明と作品例の展示、それにビデオで紹介されているのです。
最初に、職人さんが型紙をスッスッとあてて手際よく染料糊を摺り込んでいく
手仕事による型友禅の染色作業の様子をビデオで見ることができます。それと比較しやすい展示で、型染めの機械化の過程も紹介されているのです。
一番機械化された型友禅がいわゆるシルクスクリーンによるプリント捺染で、この工程ビデオでは、何層にも連なるローラー型の機械の中をベルトコンベアのように反物が進んでいっておりました。このような様子は初めて見ました。迫力ありました。
手染め屋としては、ちょっとため息が出ますが。
でも型友禅の機械化が進んだからこそ、大正、昭和期に友禅染の着物を多くの人が楽しめるようになったのです。
手描友禅と
手仕事による型友禅だけではとうてい多くの需要に応えることはできませんから。
最後に現代のデジタルプリント技術も紹介されていました。
貸衣装用の振袖や留袖のインクジェット印刷による色付けの様子をビデオで初めて拝見…。
これは染めではなく、写真のプリントでおなじみの印刷技術で、友禅風の模様や色を布に高速プリントするものです。
真っ白い生地が、インクの吹き出し口を通過する時に、シュッシュッと吹き付けられるインクで、一瞬にしてカラフルな振袖になっていくのです。
模様部分も地色の部分も、金銀までも同時に!
その
スピードといったら!
一反分の色付けが、おそらく10分程度で済むのではないかと思いました。
ほかに
絞り染め、紬などの織りの技術、
浴衣の注染などについても詳しい展示と作業を紹介するビデオを見ることが出来ます。
受付の方のお話では、この展示を企画なさった学芸員の先生は、伝統技術と現代の技術のつながりについて大変詳しい方だそうです。
着物の染織技術から発達したのが日本の服飾のプリント技術であるとか、明治以降の洋服制作に刺繍など様々な着物の技術が転用されたことは以前から聞いています。
着物というのではなくとも、日本の染織にご興味ある方は是非お立ち寄りになってはいかがでしょうか。
文化学園服飾博物館は渋谷区ですが、
新宿駅南口から徒歩10分ほどです。
※館内は撮影禁止で図録の販売がありませんでした。写真紹介できず残念です。
※この展示の説明を参考にして、2013年12/23の当ブログ、江戸東京博物館の企画「幕末の江戸城大奥」展に加筆、補足いたしました。
お知らせ | 10:03 PM
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2015,01,28, Wednesday
最近ちょっと面白かったことをまとめて紹介いたします。
①色挿しの作業中に写した一枚です。
先週色挿しの時、明るい緑をベースに渋く黄味のある緑を作ろうと染料皿に緑、黄色、赤味のある茶色を筆で混ぜ入れたところ、混ざり合うまでの間、白い染料皿の中で、まるで唐三彩の色合いのように美しかったのです。偶然の妙にしばらく眺めておりました。
写真では混ざり具合があまり写らず残念…
手描友禅で、模様に色挿しをする時、基本的には粉末の染料を染料皿の中で水と一緒に煮溶かして液状にして一色ずつ作って使います。それを利用して色数を増やしたりもします。例えば、濃い一つの色を水で薄めて中間色、淡色と段階をつけた濃淡の色合いを作ったりもします。また煮溶かした赤と青を混ぜれば紫になります。染料は液状にした後で、組み合わせを考えて混ぜると相性のよい様々な色を作ることができるのです。
合わせる染料の分量を加減して、同じ色でも微妙に違いを出すこともできます。
そういうわけで染料皿とスポイドや筆を手に、理科の実験のようにあれこれ混ぜるわけです。
②羽田空港第二旅客ターミナル3階にギャラリーがあるのをご存じでしょうか。
私は今回初めて見学したのすが、狭いながらも落ち着いた雰囲気で空港内の施設とは思えませんでした。
「大名家のお姫様」という題で、熊本の大名、細川家の女性たちに関わる品々の展示でした。興味深かったのは着物の「雛型」です。
A4版程度の大きさに非常に細かく着物の模様を描き込んだものです。受注に際して注文主に見てもらうための下絵にあたります。まるで細密画のよう!驚異!敬服!
合貝(あわせがい)
婚礼道具に欠かせなかったという貝合わせ。この展示品は絵が細かく人物だけでなく背景まで詳細に描かれていました。大名家の所蔵品の合貝でも、もっと簡単な絵の物もよく見るので、これは大変質の高い造りだと思いました。
白綸子地に刺繍の小袖
大正時代のもので新しいので白地も綺麗で、さすがに格式が第一という感じの柄行きでした
(写真は照明が写ってしまいました)
③1月25日 新宿高島屋で
驚きの絵を観ました。
画家で
山本太郎さんとおっしゃる方の展示会に行き合わせて観たのがこの絵です。
いうまでもなく尾形光琳の紅梅白梅図屏風をもじったもので、中央の流水がピンク!よく見ると流水は右上方の缶から流れ出ているのです。
缶ジュースがこぼれ出ているのが流水なのです。凄いですね。
よくぞこんな表現を思いつくものです。もじった絵でも、ここまでくると素晴らしい創造ですね。ご本人もいらして「カメラ撮影歓迎、ブログ掲載も大歓迎」と言っていただいたので紹介いたしました。
山本さんは日本画の古典にユーモアやパロディを交えて大胆にアレンジした「ニッポン画」を創作されているそうです。今後どんな創作をなさるのでしょうか。機会あればまた拝見したいものです。
着物あれこれ | 12:06 AM
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2015,01,09, Friday
上野の東京国立博物館が新年イベントの一環で
長谷川等伯の
「松林図」を
今月12日まで展示しています。 ちょっと慌ただしかったのですが行ってまいりました。
この絵については「歴史の教科書で見ただけだけど凄い絵だね」という感想をよく聞きます。私もまったく同感で、教科書で初めて見て「こんな絵があるのか」と驚いた覚えがあります。だいぶ以前に最初に本物にお目にかかった時も、「本当にこんな絵があるんだ!本当に松林だ」とあまり進歩のない驚きを感じたものでした。
今回改めて拝見…。
愛読書「等伯」(安倍龍太郎作)の影響もあり「なるほどこの絵の主役は松ではなく霧だ」などと考えつつ眺めました。
この屏風は
六曲一双の大作なので、教科書などで紹介される時はたいてい右隻だけの写真になっています。美術書でも右隻と左隻が別のページになっていたりします。
今回改めて一双が並んだ展示で鑑賞すると、その
中央部で主役の霧が一番深いと分かります。
別々の写真では中央部が分断されてしまうので分からないことでした。
近寄って観ると、普通の筆ではなくササラのようなもので描いたようでした。硬い硬い筆で激しい勢いで描いたものだと分かります。小説にあるように竹筆で昼夜を分かたず描いたのかもしれません。

左隻
平面に観るより、このように屏風として展示されると松の木を覆う霧の流れがよく分かります。
ひんやりとした感じです。
とんでもない天才が長年の精進の末にたどり着いた境地だったと安倍龍太郎さんは描いていますが、私のような凡人は、ただただ観るだけ、眺めるだけで十分という絵でありました。
※屏風用語のご参考に。左右二点で一つの屏風になっている場合、一双の屏風と呼び、それぞれを右隻、左隻と呼ぶそうです。松林図のように一隻の屏風が六畳みの場合、面一つを一曲、または一扇と呼ぶそうです。「松林図」六曲一双は「六畳みの屏風、左右一対で一点の屏風」という意味になります。
いずれも最近覚えたばかり。
間違いがありましたらHPの問い合わせフォームでご指摘ください。
全館を観る時間はなかったのですが、せっかくなので新年を祝して飾られたコーナーだけは走り見てきました。
正倉院御物のろうけつ染めで羊を描いた屏風の復元品。
羊のデザインはササン朝ペルシャの影響を受けているそうです。
幕末期の打掛 武家女性の婚礼衣装で、鶴などお目出度い柄がぎゅう詰めになっているのは典型的な様式だそうです。
同じく
幕末期の陣羽織
お武家の好みで牡丹、龍、鳳凰が、これもギュッと詰まっています。
正面中央階段の踊り場に池坊の生け花が飾られていました。
お正月らしい展示でした。
※上野の東京国立博物館は
所蔵品の撮影は自由です。他の美術館から借りて展示しているものには撮影
×の印がついています。友禅模様の参考にできるので嬉しい美術館です。
※「よく何度も行けますね」という感想をいただきますが、地の利に恵まれているおかげです。当方から上野まで地下鉄利用で30分。生地屋さんなどが人形町界隈にあり、近いので用足しのついでに立ち寄れるのです。やはり美術館の多い日本橋、大手町界隈へは地下鉄で15分です。気軽に実物にふれることが出来るのは仕事がら本当にありがたいことです。
展覧会ルポ | 11:02 PM
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2015,01,03, Saturday
謹賀新年

ぼかし地染めと無線友禅 「薔薇」
旧年中は多くの皆様に大変お世話になりました。
ご相談、ご用命くださったお客様方はもちろんのこと、
ご助言、お手助け下さった白生地屋さん材料屋さんなどご担当の皆様、
仕立て屋さん、しみ抜き屋さん、東京手描友禅の先輩方、
本当にありがとうございました。
新しく迎えた2015年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
ぼかし屋友禅 宮崎桂子
毎年恒例のウィーンフィル、ニューイヤーコンサートをテレビで楽しみました。
このコンサートは会場を彩る花の装飾が毎年工夫を凝らされ、聴くのも観るのも楽しみです。
今年は朱色系の赤をサーモンピンクに合わせた、赤は赤でも東洋的な朱赤を基調にした華やかな色目でした。
指揮はズービン・メータ氏で、「技術屋さん」や「学生さん」の舞踏会のために作られたような親しみやすい表題の曲目が多く、メータ氏ご自身がたいへんフランクなお人柄だそうです。
「シャンパンギャロップ」では本当にシャンパンを舞台の上で配っていました。
本日はご紹介したいことが二点あります。
天皇陛下のお言葉と、サザンオールスターズの歌。
ちょっと驚く取り合わせですが!(^^)!
宮内庁発表の報道によれば、
天皇陛下は年頭の所感のなかで、今年が戦後70年の節目であることから
「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今極めて大切なことだと思っています」とおっしゃっています。
私の両親は東京の下町育ちで、子供のころ米軍の空襲の中を逃げて生き延びました。
天皇陛下とは同世代です。
このブログで天皇陛下のお言葉を紹介するとは思っていませんでしたが、感銘深かったので、まだご存じない方にもお知らせしたいと思った次第です。私も学ばなければ…
二つ目は暮れの12/31NHK放送の紅白歌合戦で放送されたサザンオールスターズの歌です。ご覧になった方も多いと思いますが、改めて歌詞をご紹介します。申し上げるまでもなく、作詞作曲の桑田佳祐氏はサザンのリーダーで、私の世代を代表する歌手です。
同世代にこのようなアーティストがいることを誇りに思います。
♪
ピースとハイライト♪ 歌詞(J-Lyric.netから転記)
何気なく見たニュースでお隣の人が怒ってた
今までどんなに対話(はな)しても、それぞれの主張は変わらない
教科書は現代史をやる前に時間切れ
そこが一番知りたいのに何でそうなっちゃうの
希望の苗を植えていこうよ♪
地上に愛を育てようよ♪
未来に平和の花咲くまでは…憂鬱(Blue)
絵空事かな?お伽噺かな?
お互いの幸せ願うことなど
歴史を照らし合わせて助け合えたらいいじゃない♪
硬い拳を振り上げても心開かない
都合のいい大義名分(かいしゃく)で争いを仕掛けて
裸の王様が牛耳る世は…狂気(Insane)
20世紀で懲りたはずでしょう?
燻る火種が燃え上がるだけ
色んな事情があるけどさ♪
知ろうよお互いのイイところ!!
希望の苗を植えていこうよ♪
地上に愛を育てようよ♪
この素晴らしい地球(ふるさと)に生まれ
悲しい過去も愚かな行為も
人間(ひと)は何故に忘れてしまう?
愛することを躊躇(ためら)わないで♪♪♪
お知らせ | 04:59 PM
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