東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
東京都工芸染色協同組合 七支部員で染め帯の展示を行っております。



ぼかし屋の出品は、前回ブログで染め風景をご紹介した橘の染め帯一点です。



糸目糊がとれてスッキリと白い線が浮き出てます。だから糸目友禅とも呼ばれます。


お太鼓に締めるとこんな感じ。


表参道にご用の節はお立ち寄りくださいませ。
明日28日は会場におります。

お知らせ | 11:19 AM | comments (x) | trackback (x)


帯を締めると前柄とおたいこ柄にバッチリ橘の実がたわわに実っている図で染め帯を作りました。

地染 帯なので少し厚手の生地。

青味の強い緑色です。柑橘類の葉っぱの色からとりました。


色挿し ミカンではなく橘の実、念のため(^^;)
色を試し染めしながら挿していきます。


橘は春夏秋冬、葉が緑であることを称えた歌が万葉集にあります。
実がたわわになっても葉が濃い緑であるのは、例えば、葉も色づく柿の色合いとは違うということです。
おめでたい木とされていて、お雛様の左右に桜と橘がありますね。

ぼかしを多用して黄色からオレンジ色、少し緑色の残る橘の実を描きました。


前々回にご紹介した「片歯刷毛」が大活躍です。


熱源にさらして乾かせながら作業するのは、滲みだしを防ぐため、キレイにぼかすため。

色挿し終了。蒸して、糸目糊を落とし、水洗い、湯のしをお願いして完成へ。


橘は実さへ花さへ その葉さへ
枝に霜ふれど いや常葉の樹    聖武天皇


ぼかし屋の作品紹介 | 11:40 PM | comments (x) | trackback (x)
上野の国立博物館で、今は珍しくなった着物を見ました。
絽の着物紋付の産着です。


 縹地 海辺風景 単衣 19世紀江戸時代

絽は透けるように織った夏用の絹地
見るからに涼し気な紺色の夏の着物です。
刺繍も使われていますが、一番重要な模様である浜松は糸目糊で表現した友禅染です。


夏に透ける絽の着物でおしゃれしている方を、かつてはひと夏に数回は見かけたものですが、最近、とくに今年はゼロでした。
着物離れもとにかく……とにかく夏が暑過ぎるからだと思います。
生地が透けているからこそ下着をきちんと着る必要がありますし、帯はどう着付けても暑い……。
同じ東アジア圏でも、帯のない形で着衣が発達した韓国のチマチョゴリが羨ましいですね。などと言うと帯の機屋さんに叱られてしまいますが(^^;)
地球温暖化で35度連発の今の夏では熱中症対策が第一になってしまいました。

こちらは更に見かけることはなくなった産着、それも紋付です。
サイズが大きく見えますが、おそらく誕生直後は肩上げを多くして赤ちゃんをくるむように使ったと思います。今も最小限の肩上げが残っていますね。


 薄茶平絹地 貝模様 産着 17世紀

1600年代作とのことですが、友禅の技術が確かなので後期の作でしょう。
背中央に一つ、両袖と両胸にも紋がある五つ紋付きで最高格式の作りです。紋は縁を飾られた向い雀。綿入れ自体が贅沢品(綿が貴重)だったことを思えば、大変力の入った幼児用の着物です。



友禅特有の糊防染が効果的です。
模様にあまり色がなく、地色も薄茶なのは始めからそうデザインされたのでしょうか。
それとも江戸時代初期の作で非常に古いので退色?いえ専門家が見てタイトルに薄茶地といれているので始めから薄茶に染められたのですね。


紋が可愛く見えるような飾りつきなので女児用を思わせます。綿入れなので冬着なはずですが、海辺の貝の模様?ちょっと不思議な産着。由来を知りたいものです。
同じ江戸時代でも初期はまだ幕末期のようなカラフルな友禅染(後染め)は出来ませんでした。江戸中期以降に鮮やかな色合いの染料が日本にも入ってきて友禅染の発達を促したそうです。

今は子供の着物を手描き友禅で誂える話はトンと聞かなくなりました(>_<)
残念ではあるものの、実は……
汚すのが仕事の幼児に目くじら立てずに済むように、小さい間は化繊の着物でよいという意見に私も賛成です。
このような絹、友禅、綿入れの着物はお大名クラスか豪商、大地主などごく一部の人々のもので、一般の武士、商人はもっとささやか、庶民の子共は使い古しの木綿布子にくるまっていただけ。模様がないか古い絣か。
デパートの売り場で可愛い化繊のプリント柄の3才お祝い着を見ると、カラフルな着物を幼児に着せられる時代を有難く思います。

着物あれこれ | 10:39 AM | comments (x) | trackback (x)


手描き友禅ではよく模様の中をぼかして濃淡をつけます。
模様が立体的になるのと、手描きならではの優しい雰囲気が出るためです。

ぼかしで活躍するのが片歯刷毛(かたはばけ)です。


右から4本が片歯刷毛、残る2本は丸刷毛。
比べると片歯刷毛は薄く先端の片側だけが少し尖らせてあるのでこの名前があります。どちらもぼかしで使われますが、片歯刷毛の方が細かい作業に向きます。
片歯刷毛に番号がついていて、大きな番号ほど大きな面を一気にぼかすことができます。


複雑に組み合わさった薔薇の花びらを立体的に見せるためにぼかしているところ。


色はあらかじめ濃淡で複数揃えます。


色調によりますが、このように大きな花は花弁一枚ずつぼかしていきます。


ここでは5番、6番のサイズを使いました。
水を含ませた片歯刷毛の尖った方にだけ染料を含ませて塗ると水の助けで染料が濃淡にぼかせます。


全体の色を挿し終ると大輪の花出来上がりです。
最後に糸目糊が抜けるとスッキリします。
さらに大きいと丸刷毛も併用することもあります。

手描き友禅の模様色挿しで使用する刷毛は片歯刷毛、丸刷毛、牡丹刷毛など。
ぼかしの雰囲気によっては染め筆のままぼかすこともあります。
とても細かい所や、尖った先端などには面相筆の穂先も使います。
先人が工夫して生み出してきた刷毛や筆、頼りになる道具です。
作ってくださる職人さんに感謝<m(__)m>


東京手描友禅の道具・作業 | 08:34 PM | comments (x) | trackback (x)
2019年6月15日の朝日新聞の記事の紹介です。



 手漉き和紙の製造に欠かせないトロロアオイを生産してくれる農家が、このままではいなくなってしまうという記事です。
和紙の原料のコウゾ。そのバラバラの繊維をまとめるのにトロロアオイから取る「ねり」が必須なのに、重労働のわりには高くは売れないことや農家の高齢化もあって、わずかに残ってくれていた生産農家が作付けを中止すると表明したのだそうです。
 悲しいニュースです。農家のご事情も重々…

和紙は手描き友禅にも欠かせません。代表例では、
真糊(米粉と糠から作った糊)を絹地に引く時に使う道具、渋筒(しぶづつ)


 上から伏せ糊用サイズの使い古し(繊維が強くまだまだ使えます)
伏せ糊用の新品、そして糸目糊用の新品。

 使い古しの先端には口金がついています。新品も使う時の必要性に合わせて先端を切り口金を咬ませて使います。水分のある糊を常に一定の柔らかさ(含有水分)に保つのに厚い和紙で作られた筒が向いているのです。柿渋を塗って強度を高めているので渋筒と呼ばれています。
筒と一緒に写っているのは渋札(しぶふだ)
新品の先端を紙縒りして紐状にし、名前を書いて絹地の端に穴を開けて通しておきます。
蒸しや洗いといった他の業者さんにお願いする工程の時に迷子になるのを防ぎ、希望する作業内容も書いておきます。蒸気や水をくぐり抜け最後まで生地に付いていてくれるのは和紙だからです。


真糊による伏せ糊作業風景です。


渋筒が2本見えます。先端の太さを変えて糊を付けたいところの形状に合わせて使い分けます。霧吹きや水、濡れ布巾も、常に使いながら作業します。

 そうそう!和紙といえば着物を保管する「たとう紙」も忘れてはいけないですね。湿度から守ってくれるのはもちろんですが、着物を包んだ状態で持ち運びのためにザックリと三つ折りにしても破れもせずに中の着物をシワシワから守ってくれるのは、やはり和紙だから。

 記事によれば、和紙業界として文化庁に生産支援を求めているものの、「具体的対応は決まっていない」そうです。
ご存じの方も多いと思いますが、日本のお役所はまずこうした事に資金を出しません。
伝統文化、伝統工芸で、普通に民間任せにしていれば絶滅するだけというものに、遺す価値があるという共通理解が得られるなら、経済的な支援や、ドイツのマイスター制度のような制度的支援をすべきだと思うのですが。
日本の国の制度でそれらしい支援は、文楽や歌舞伎を下支えする人を養成する学校があることくらい。他はまったく…
天然素材だけで製造する手漉き和紙が失われたら…
室町以来の日本画の掛け軸や屏風など、100年から150年に一度は裏打ちの和紙を剥がして新しく貼り直さなければ、次世代に遺せないと聞いたことがあります。
日本の文化工芸の基礎のような手漉き和紙、無くなってよいと思う日本人はいないでしょうに!!

手描き友禅制作に必要な道具、材料でも危機に瀕しているものは沢山あります。
材料だけでなく生地や糸も
裾回し(着物の裏地、八掛とも)の数少ない製造業者さんの一軒が廃業し、裾回しの品不足、品質劣化が懸念されるというニュースが友禅業界に届いたのはごく最近のことでした。


着物あれこれ | 11:39 AM | comments (x) | trackback (x)

往年の大ヒットドラマ「おしん」をNHK BSで再放送中。
当時は見ていないので、この機会に毎朝見ております。

戦前の小作農の貧しさや商家の奉公人の過酷な労働、労働でなく奉公だから限りなくタダ働きに近い事等々が描かれていますが、当時の日常風景も随所に見られます。

昨日の放送で面白い場面がありました!(^^)!
おしんが着物を洗い張りするのです。女主人の絹の小紋。


まず解く。台所の立ち仕事の合間に。

隣家とのすき間のような庭で、洗った生地に刷毛で糊付けしているところ。


おしんが持っているのは引き染め用の五寸刷毛
今、東京手描友禅では良い刷毛は京都の製造業者の物を取り寄せているのですが、かつては東京でも製造販売されていて誰でも手軽に買えたのでしょうね。


糊付けしてピンとさせた生地を縫い直す。今度は夜なべ仕事で。
解くのと違い、まとまった時間座り込まないと仕立ては出来ないからでしょう。

着物は基本的に解いて生地の状態に戻さないと洗えません。
解く、生地を縫い合わせ反物状に戻す
それを洗い乾かす
そのままではヘナヘナなので生地に糊をつけて張りを持たせる。
張り手に生地の端と端を挟んで引っ張っておき、刷毛で液状の糊をつけていくのです。そして湯のし屋さんに出して生地巾を整えた後で仕立て直す、以上が工程です。

昔は家庭でも洗い張りや簡単な染めをしたと聞きますが、ドラマとはいえ映像で見ると実感がわきました。
このような引き染めに含まれる作業は馴染み深いはずですが…
この映像でみて初めて気付いた事が…

今は当然のように使われているプラスチック製のバケツがこの時代には無かったこと!
おしんは何度も腰を屈めて足元の木製たらいに刷毛をつっこみ糊を含ませ直しています。

プラバケツは軽くて、取っ手が付いていていますから、糊なり染料なりを入れて左手でぶら下げながら右手で刷毛を動かせるのです。左手は取っ手を持ちつつ生地も押さえられます。
下に置いた盥までいちいちかがむなんて大変(>_<)
想像しただけで腰が痛くなりそうです。
作業しながら生地に沿って移動するのに、盥では付いてきてくれません…
仮に木製の桶に麻縄で取っ手をつけたとしても…重い!
プラバケツが無いというだけで、現代の引き染めとは似て非なる労働です。

それにしても、おしんが刷毛を動かす姿はバッチリです。


確かにこの位かがみ、足も踏ん張り、手も大きく動かすのです。
実際にしている所を観察するか、教わるかしなければ出来ない動作でした。


かまどの火と刷毛の音だけが聞こえる無音に近いシーン。とてもきれいでした。

このブログのために画像をトリミングしていて気付いたのですが
画面左、かまどの上方にかかっている赤い団扇
まったく同じ物がぼかし屋にもあります!


ウン十年前に渋谷の画材屋さんで買い、揮発地入れなどに便利に使い続けているものです。
いかつい大きさで大風量です。
団扇と一緒に写っているのは伸子針
張り手で縦方向に張った生地を、横方向にもピンとさせるための竹針です。

染料がついて汚れたものを洗って干しているところでした。

最後にぼかし屋の糊張り風景


フノリ地入れと呼びます。
引き染め専業の業者さんを除けば、今も細長く隙間のような所でする作業です。
友禅染は人の多い街中の伝統工芸なので、たいてい空間事情は厳しく、狭くチマチマした場所が舞台です。もちろんぼかし屋も団地の一室(^^;


着物あれこれ | 07:33 PM | comments (x) | trackback (x)
日本の手描友禅の模様の参考に
イギリスの模様の展覧会を観てまいりました。

ウィリアムモリスとイギリスの壁紙展 そごう美術館(6/2まで) 

このチラシの模様を私が見た時につい思ってしまうのは
「よくある感じの模様だね」です。
でも、こういう感じの模様は古来あったのではなく、最初に本格的に壁紙や布の模様として製造したウィリアム・モリス(1834~1932)の業績を紹介する展示です。


とても魅力的な模様が図録の後カバーに印刷されています。
菊をモチーフにした構成。牡丹も入っていて日本の影響を受けているそうです。色合いを変えていくつものパターンで壁紙を制作。

古くから絵画や金銀の細工で壁を飾れた王侯貴族は別として、市民が自宅を飾り始めたのはそれほど古くないそうです。産業革命の結果、製造力も市民の購買力も上がって19世紀を迎え、そういう時期に画家でもあったウィリアム・モリスが、生活を取り巻く物品にも美しさを、という考え方で多くの作品を発表したわけです。

この菊の壁紙で飾った部屋の再現コーナーもありました。
(再現コーナーは撮影可)

カーテン、テーブルクロス、クッションカバーそして壁紙

現在の生活にある様々な布類に複雑にパターンを組み合わせた模様を染めたり織り出したりしています。

    図録の中から紹介

ノーベル賞の選考委員会は「その業績の元になった研究、その研究者」を探すそうです。それと同じことを感じました。
いわゆる唐草文様は大昔からありましたから、葉がモチーフとして左右対称など平面に並ぶ模様なら珍しくなかったのですが、それをパターンの一部として複雑に組み合わせて構成したのはモリスが最初。その図案は見ていてとても勉強になります。


こちらはミュージアムショップで買ったクリアファイルの模様。
とても大胆ですが、自然な組み合わせになっています。


葉をパターン化した壁紙。
本当に「よくある感じ」ですが、商品として売られ続ける中で、様々な他の商品のデザインのもととなっていったために「よくある感じ」に見えるわけです。

ヒナギクのパターン。


ふと気づいたのですが、ぼかし屋のファクスが置かれている台のレース。

このようなパターン模様を最初に本格大量生産販売したモリス。その影響のもと、今の身の回りの様々な商品のデザインがあるのですね。

少々脱線しますが、野々村仁清。


写実的で鮮やかな花の描写は、室町期以降、屏風絵や掛け軸には珍しくありませんでしたが、最初に壺に焼き付けたのは彼。
この壺を見るとつい「よくある感じ」を抱いてしまいますが、江戸初期当時とても画期的な試みと技術だったのでした。

もっと有名な例が元祖アニメと言われる鎌倉期の鳥獣戯画

今のアニメと同じ、とつい思ってしまいがちです。
鳥獣戯画の方が大々先輩なのを忘れないようにしなければ。
作者は確定していませんが、ノーベル賞の価値がありますよね。

そういうモノが無い環境で、そういうモノがを創り出した方々のすごさを、そういうモノが溢れている今の私たちはウッカリ忘れがちかもしれないと、見慣れた感のあるモリスの壁紙を見ながら思いました。

最後に会場の再現コーナーの写真で、モリスの模様を現代にアレンジした部屋をご覧ください。

すてきです。


展覧会ルポ | 01:21 AM | comments (x) | trackback (x)
本日は下絵描き風景を紹介します。



誂え染めの手描き友禅では、まず白い絹地を裁って、白い着物の仮縫い状態にします。仮絵羽(かりえば)仕立てと呼びます。
模様が縫い目を境に途切れたりしないように、連続させて一枚の絵のように染め上げるためです。絵羽模様といいます。

複雑な模様では実物大で染め上がりと同じ下絵を紙に描き、それを生地に写しとります。



机の手前の台に乗っている部分は着物の上半身。絹が大漁、大量(‘◇’)

友禅の作業机は中央に四角い穴を開けてあります。


染める時はそこに熱源を置き、下絵描きの時は電灯を置いてガラスで塞ぎ、ガラスの上に下絵を、さらに生地をおけば、下から明るく照らされて模様を写しとりやすいのです。
以前は小さな電灯というと白熱灯しかなくて、夏などは暑い思いをしたものですが、今はLEDなど熱くならない電灯が色々あって助かります。

仮絵羽仕立てしてあると肩口など平に伸ばせない箇所があります。描きたい所を小さく延ばし文鎮でしっかり押さえて作業します。


遠目には刺繍枠をはめてあるように見えます。〇でなく□ですが。
もちろん刺繍枠ではなく文鎮で押さえているのです。

生地は2重3重になっていますから、半端な文鎮では押さえが効きません。
しっかり重く、かつ絹地のためには当りの優しい文鎮が貴重なのです。

これまでに知る限り、文鎮の最高峰富山県高岡市の金胎漆のもの。


金属に漆をかけてあるのでズッシリ重く、表面は柔らかく生地を傷める心配がありません。
漆に螺鈿細工が施されて綺麗で、文鎮の方も傷つけないように作業中は丁寧な動作を求められます(^-^;

 文鎮については2017年11/21の当ブログで詳しく紹介しています。

ぼかし屋の染め風景 | 06:57 PM | comments (x) | trackback (x)
前年度後半にNHK BS放送が懐かしの刑事コロンボの人気投票上位20を下位から順に土曜日に放送を続け、一番好きな「別れのワイン」が3月の最後、つまり第一位として放送されました。
過去数回見ていますが、今回初めて気づいたことがあり、テレビ画像をお借りして紹介させていただきます。

それは各場面に「赤」が「挿し色」として使われていること。

挿し色とは画面にアクセントとして使われる色で、絵画にも映画にも、織物や友禅染にもあります。
日本映画の小津安二郎監督が赤を好んで挿したそうです。この「別れのワイン」にも赤が、疑惑や緊張感を高める効果で使われているのです。
(写真では全体に朱赤になってしまいましたが、テレビ画像では真っ赤や重々しい赤ワイン色)


犯罪の舞台となったロスアンゼルスのワイナリー

ドラマは赤ワインの乾杯シーンから始まります。



左がエイドリアン・カッシーニ
高級ワイナリーの責任者で世界有数のワインの目利き。
愛蔵の赤ワインでお客様をもてなしている。
私室に戻ったところ、仲の悪い異母弟が入り込んでいる。
実はワイナリーは弟の名義。弟は実務は行わずに利益だけ持っていき派手な生活。


多額の現金目当てにワイナリー売却を決定したと、いきなり告げられエイドリアンは激高。手近な置物で弟を殴り気絶させてしまう。

ニューヨークへの出張予定があることを利用し、エアコンを切ったワイン貯蔵庫に閉じ込めて留守中に窒息させればアリバイを作れると思いつく。彼は気絶している弟を貯蔵庫に放り込む。
貯蔵庫に鍵をかけ、ヤレヤレと思った彼は弟が乗ってきた真っ赤な車に気付く。
(結局この車がコロンボを彼のもとへ引き寄せることになる)




彼のネクタイは赤ワイン色。

自分の車庫に隠すと

素知らぬ顔で予定通りニューヨークへ出発。

飛行機内の様子。


座席で隣の秘書に弟あての手紙や送金を指示し犯罪偽装する。
静かな機内の場面で秘書がメモのため赤い鉛筆を走らせる。
鉛筆の赤色だけが忙しげに動く。
(この秘書は後で事実に気付き、彼を脅して結婚を迫る)

ニューヨークのオークション会場。
彼がいかに目利きか、そしてことワインに関しては浪費もしてきたと伝わる場面。


帰宅後、彼は弟の車にあったダイビングウエアを遺体に着せ、車に乗せて海に運ぶ。遺体は海に落とし車は海岸に放置する。


ダイブ中の事故に見せかけるために。

さてコロンボの登場。


カッコイイ車を羨ましがる若い警官の言葉から、
車は海岸に置かれたばかりだと気付く。
推定死亡は何日も前なのに。

コロンボが遺族としてのエイドリアンに会いにくる。


ストーリーはすべて赤ワインと共に進む。


エイドリアンはコロンボが遺族に会いに来たのではないと気付く。

コロンボはワイナリーの様子を調べる。


彼の友人たちに聞き合せをする。



(コロンボが忙しく移動中だと現す場面。
赤のために落ち着かない雰囲気。通行人の服まで赤)

彼がどんどん追いつめられる緊張が漂う画面が続く。


状況から彼が犯人と確信したコロンボだが証拠がない。

彼のニューヨーク滞在中(ワイン貯蔵後のエアコンが切れていた間)、ロスアンゼルスが季節外れの高温に見舞われていたことに気付いたコロンボは、彼を高級レストランに招待する。


出かける彼と秘書。夕暮れの灰色の中に秘書の服の裾の赤が際立つ。

コロンボはソムリエの協力を得てエイドリアンの貯蔵後から持ち出した高級ワインを、素知らぬ顔でふるまう。

(後ろの席には真っ赤な服の人が、ソムリエの盆には重厚な赤色が)

高温のためワインの風味がすでに損なわれていると見抜いた彼は、
同時に自分の貯蔵庫のすべてがダメになってしまったことを悟る。

(テレビ画像では彼の手元の瓶の口も鮮やかな赤)

自分に対する怒りに任せて、ワインを海に破棄しているところにコロンボがやってくる。

ワイン瓶の赤が効果的。車のテールランプの暗い赤と合わせて、まさしく挿し色

彼はワイン初心者だったコロンボがワインの温度変化などの勉強を重ねて犯罪の自供に追い込んだことを称賛、コロンボは自分の運転で彼を連行する途中、最高級のデザートワインをエイドリアンに贈り乾杯する。


ここで初めて赤が一切無い画像となる。 ワインも
観ている側の緊張がホッと解けてドラマが終わる。

この作品はコロンボシリーズ人気投票で、2位を引き離しての1位だったそうです。
シリーズには珍しく衝動殺人であること、犯人とコロンボが互いを尊敬しあう点が人気の秘密と思っていましたが、今回は映像そのものもストーリーを引き立てているのだと気付きました。撮影する時に効果を考え、色調の方針を立てて作品を作るのでしょうね。名作は何度見ても面白いです。


犯人エイドリアン役はドナルド・プレザンス、映画「大脱走」で主要登場人物の一人を演じた名優。私がリアルタイムで知っている刑事コロンボの方も、すでに時代劇になってしまいました。
挿し色についてはこれからも機会を作って、着物や和物の場合でご紹介したいと思います。


東京手描き友禅 模様のお話 | 01:55 PM | comments (x) | trackback (x)

大きな大きなバラの帯をお試し中です。



糸目糊を通常より太く引いてみています。
太く勢いのある糸目糊を大きくな花に合わせてみるつもりです。


下絵の上に糊を置いた所と、まだ下絵だけの所と。色が違います。


ゴム糸目の場合は伸子に張らずに生地を机に置いたまま引く方も大勢いらっしゃいますが、私はもともと真糊の出なので、真糊の引き方のままゴム糸目も伸子に張って引いております
生地の向きを変えやすく、糸目に強弱をつけやすいので。


ぼかし屋の染め風景 | 10:41 PM | comments (x) | trackback (x)

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