「着こなしの変遷」展

 
前回お知らせした丸紅ギャラリーの展示を見てきました。
「着こなしの変遷、幕末明治の女性の和装」展です。


着物自体の展示は数多くありますが、どのように着ていたのかに焦点を当てた展覧会は初めてのように思います。(図録写真から)
会場のあちこちにマネキンによる着装例が展示されていました。とても分かりやすく当時の着方や大きさが説明されていました。


濃いグレーの縮緬地の紋付に織帯を結んでいる途中。

五つ紋付なので礼装。おはしょりを取らずに裾長に引きずる形。織の帯は約30cm幅のまま胴回りに結んでいます。花柳界など特別な例を除いて現代では見られない着付けですね。


縮緬の黒紋付に織帯

今でいう黒留袖をお引きずりに着付けています。裾の松林模様はとても低い位置に描かれています。現在の黒留袖は前身ごろの膝より上までタップリと柄付けしますが、当時は引きずる裾にだけ模様がありました。これは明治以降も着物のマナーとして残り、戦前まで年齢により柄付けの高さが決まっていました。若い女性は膝上まで、既婚者は膝、中年以降は膝下が概ね目安でした。
展示室で見た時、印象的だったのは帯揚げと袂から見える赤色。少ししか見えないのにインパクトあり全体をピリリと引き締めていましたよ。


縮緬の色無地、五つ紋付は第一礼装です。
現代では模様のない淋しさから婚礼の席で着ている人を見ることはありませんが、かつては婚礼の出席者が着る礼装でした。
この色無地は引きずる裾の返しにだけ友禅染の模様が付いています。おしゃれですね!色無地の格式を崩さずに模様を楽しんだのですね。こういう実例は初めて見ました。
こちらの着装には今回の企画展示の主要ポイントが他にも。



まず目を引くのが半襟を大きく見せる胸元。
幕末、明治期は襟を寛げる着付けで半襟も主役級だったそうです。
襟を寛げている結果、紋は胸というより腕の付け根にまで下がっていますね。

このマネキンの着付けでは帯は折ってありました。帯締めがある点も現代と同じですね。
ただし当時の帯締めは強度の欠け飾り程度だったそうです。帯自体はあくまでも締めあげてお太鼓結びにしていたそうです。
もう一点は飾りとしての帯留め。精巧な金属性。江戸時代まで刀の製造に関わっていた人々は金属の細工、加工業に転じたことは有名ですが、帯留め製造に従事した人も多かったという説明がありました。

半襟を大きく見せる着付けの写真も展示されていました。


連れだって写真を撮ってもらう、当時としては大変贅沢な事だったと思います。


解説によればお茶汲みの女性。江戸時代はアイドル的存在になる女性もいました。写真の女性もなかなかの器量良しとお見受けします。

着付け例ではありませんが、着物の展示から最後にこちらを。


紺繻子地 立ち木模様振袖

実に美しい刺繍でした。手が込んだ刺繍というだけでなく糸の勢いがあり木々や葉が躍動的なのです。解説では「割縫わりぬい」という技法による表現だそうです。


明治期の作だそうですが、作者は当然のように不明。これほどの技術者も名を遺すことのない時代だったのですね。
補足:袖の長さのわりに「振袖」って本当に?とお思いかもしれません。会場の解説にもありましたが、この時代の日本女性はとても小柄。平均身長は145cm程度だったそうです。振袖も裾長に着付けたことと身長を思えば「振袖」に納得します。
丸紅美術館の所蔵品なのでまた見られる機会があればいいなと気持ちに残る刺繍でした。

展覧会ルポ | 11:14 PM | comments (x) | trackback (x)

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