ぼかし屋の染め風景

 
東京手描き友禅の染め工程の中で、一番映える花形工程が模様の色挿しです。
今回は先方のご希望で上半身は赤い大輪のバラだけ。裾模様が緑や紫を主体にしたカンパニュラの模様だったのとは対照的で、振袖でなければ実現できない柄行きです。



紅色系、朱色系、その中間と3通りの赤にそれぞれ濃淡を3段階と極薄いピンクも準備。濃淡ぼかしするためです。


色挿し方法に決まりはなく制作する人それぞれに流儀もあります。
ぼかし屋ではこのような大輪の花の場合は、花びら一枚ずつぼかしていきます。



身頃の部分を作業机に並べ、左右を確認します。色がつながっているか、全体としてバランスがよい濃淡になっているか。3種類の赤の色合いの配置もバランスよく!
交通安全ではありませんが、「指さし確認」しています。



この写真では、生地の端(伸子で張られた部分の上下)が巻き込んであるのがご覧になれます。
着物の身頃の生地は足首から肩を越え、また足首を覆う位置まで一つながりで、おはしょり部分も含め3m以上。長~いのです。円滑に作業を進めるために、「今は染めない部分」は巻き取って留めておくのです。
こんなふうに。


巻いて洗濯挟みで留めます。糸目糊がよく見えています。


 裏からみるとこんな感じ。色挿しが済んでいる部分は裏から見ても同じ色が染み出ています。手作業で色挿しした証拠です。


巻き込み部分を晒や手拭いでカバーしてあります。これは作業中に染料が飛ぶなど汚れがつくのを防ぐためです。


生地がコンパクトになって伸子を持ちやすく、この状態で色挿し作業するのが理想です。ただ色が乾いていない、色を見ながら作業する必要があるなど、長い生地を引きずるように作業する場合もあります。


ほら、上の方が伸子に張られていますが、下の方は伸ばしたまま。この写真の場合は色合いの確認が必要で伸ばしたままとなっています。
そうそう、赤い色がついた部分にビニールが貼られているのにお気付きでしょうか。染料は乾いただけで蒸していない時は生地に定着していません。擦れて他の部分に染料が移るのを防ぐためです。
色を塗るだけでなく、アレしたり、コレしたり。
色々忙しく色挿します(^^;)


ぼかし屋の染め風景 | 06:46 PM | comments (x) | trackback (x)

モナコ公国の手描友禅振袖を製作するにあたり、国旗の赤白の色で地色とすることと、模様としてバラ、カンパニュラ、それに王宮を描くことというご希望がありました。
ネット検索やモナコを取り上げたテレビの画像や本で王宮の形と立地を調べて今回の図案の参考にしました。

一番よく見かけた角度で撮影された王宮の写真はこちら。


断崖と言っていいほどの急斜面の上にある平地を利用してお城が作られています。中世以来の歴史あるお城だそうです。単なる王宮ではなく要塞としての機能のあるお城のようですね。

崖の手前が森であることを利用して、振袖の裾模様は手前にカンパニュラの群生、その向こうに森と遠景にモナコの王宮を描きました。


本物の色は参考にしますが、あくまでも着物の模様なので綺麗に見える範囲の色を使います。



写真を見ると屋根に赤が使われていまして、模様の色合いとして貴重です。

最後の仕上げで王宮には銀彩も使うので、その点も考慮した色挿しです。

途中で生地を横に並べ、全体の色の調子を確認しながら進めます。


裏から見ると糸目糊が見えないので、出来上がりの感じを掴みやすいので、折々裏返して確認します。
対角線に張った竹製の太い伸子を模様伸子(もようしんし)と呼びます。

横に張った伸子は細いので伸子針(しんしばり)とも呼びます。どちらも広く伸子(しんし)です。

生地は長く、真ん中の赤い部分は上半身になります。


色挿し作業の間も赤地の上半身は衣桁などに掛けておきます。生地が傷まないよう、別の色で汚さないよう、アレコレ気にしながらの色挿しです。



王宮の向こうにさらに岩山があります。モナコではとても目立つコブが連なった岩山だそうです。


王宮の色挿し終了(‘◇’)ゞ


次はいよいよ地色が赤い上半身、生地の真ん中の部分、衿、肩、袖へ進みます。


ぼかし屋の染め風景 | 06:23 PM | comments (x) | trackback (x)
前回はカンパニュラの花を青紫色に色挿しする様子をご紹介しました。
今度は葉っぱの色挿しです。


なぜ、色を全部準備して花も葉も他の部分も同時に作業を進めないの?とお思いになる方もいらっしゃることでしょう。それは、無理だから、なのです(^^;)

濃淡ぼかしで多数色を常に使うため、花だけ葉っぱだけに分けてさえ、机の上は10~20色の染料でいっぱいになります。それぞれ乾燥しないように濃度を維持して染めるには、図柄を区切りよく何段階かに分けて作業するのが現実的なのです。

柄の多い振袖はなおさら段階が多くなります。
モナコ公国振袖の場合、①カンパニュラの背景の森、②花、③葉、④背景の王宮、⑤上半身のバラ、⑥葉、⑦ツタ模様と7段階に分けました。


さて色挿し③にあたる葉の番。緑を濃淡で色挿しします。
手前にあるのは色見本。結構色数がありますね。

森の色挿しに使った柔らかい黄味のある緑に比べ、今回はきっぱりと強く青味の緑。
カンパニュラの花が青紫系の色合いなので、緑も青になじむ色目なのです。
青と緑の境のような色味を主体にします。


色見本と一緒に写してみました。
花と葉、両方の色見本です。並べても相性が良いのはどちらも青が主だから。


花だけだったところに、葉にも色が入ると生きてきます。
背景の森と手前の葉っぱの色を、森は黄系、葉は青系にしたことで、手前が埋没するのを防いでくれています。


裾模様の花にすべて葉と茎がつき存在感がでましたね!


群生するカンパニュラの向こうに王宮が見える図案
次はこの遠景の色挿しに進みます。

ぼかし屋の染め風景 | 11:11 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅として、いよいよ一番華やかな工程、花模様の色挿しです。
ここまで来るのは長かったですね!


まず染料の準備。裾模様は群生するカンパニュラの向こうにお城が見えている図柄です。


色は濃い青から青味の紫、紫と青い染料の量を調整して三段階、それぞれに濃淡3段階、一番弱い淡色紫まで用意。
カンパニュラはキキョウの仲間で、色々な形があるようですが、振袖の模様の効果を考えて、一番見栄えのする大型のキキョウ型にしました。
広い花弁でぼかし効果狙いです。


長い生地を模様伸子(もようしんし)に張って作業していきます。

ちょっと細かく紹介しますと……


振袖が出来上がった時に三種類の青紫がバランス良く散るように、どの花をどの青紫にするか、先に決めて青花ペンで印をしておきます。ズームで糸目糊がよ~く見えてます(^^)



大きな花弁を一番の濃色から白に近い淡色までぼかすには一度では綺麗に上がりません。複数回に分けて重ね塗りします。最後に一番濃くなる所に先に色をいれておきます。


乾いたら染料を重ねてまたぼかしていくのです。




完全な乾燥ではなく理想は生乾き。机下の電熱器が活躍します。この花が乾くまでに別の花をぼかして、というように順を追って作業していきます。



同じ面を連続でご覧いただいていますが、だんだんと濃淡がついてメリハリあるカンパニュラになっていきます。

上の花は染料が乾いています。
下の花はまだ濡れていて色が発色せず、よどんで見えますね。



さらに染料を挿して、濃淡の差を強くしていきます。


花芯はまた後でごふんの白を挿しますが、まわりの紫色でだいぶ花芯も際立ってきました。


最後に縫い目を境に色や濃淡の具合がきちんとつながったか、色を間違えなかったか、確認しているところです。


模様のぼかしの方法は特に決まりはなく、製作者によって好みの方法もありますので、この手順がすべてではありませんが、水の力を借りて染料をぼかす点はすべての友禅染に共通です。


ぼかし屋の染め風景 | 07:43 PM | comments (x) | trackback (x)
地色を染めて白く残した模様部分を彩色することを「色挿し」と言います。
友禅挿し」とも。故早坂師匠は「友禅する」という動詞も使っていました。
さてその準備
は当然ですが、染料匙、水分調整に使うスポイド、均染剤や粘剤、皿などなど。


まず粉末の染料を煮溶かして、色を掛け合わせ、調整して希望の色を作ります。


手元の粉末染料。師匠以来のものもあれば最近購入した色も。
材料屋さんによって色味が違います。

原色の粉末染料を煮て希望する色の濃色を作ります。

これを基本にして水で薄めれば淡色になり、他の色を微妙にかけ合わせて少しだけ違う色も作れます。



友禅の作業机に開けてある穴は便利で煮炊きもできるというわけです。

振袖は色挿しに長い日数がかかるので、水分蒸発など変色を避けるために、出来上がった基本の濃色(液体)はボトルや小さなタッパーに入れて保管しながら使います。


染料は染料皿に出すとすぐ水分が蒸発し始め、色が濃くなり始めます。スポイドは染料皿に水を足しながら作業するためのものです。最初から最後まで同じ濃度で予定した色合いを保つように。

どんな手順で色挿しするか、全体プランをたて、今回の振袖の色挿しは、最初に裾模様の森の部分から入ります。


裾の背景となる森は黄ばみの強い緑系。


木々が濃色から淡色へ。ぼかし作業。


色を作るときに使った色試し布と一緒に。
模様が絵羽になるように、左右を確かめながら色挿ししていきます。


上半身の赤い部分も写っていますね。
着物は長~い反物を染めて作ります。染めている最中も長~いのです(^^;)

ここでひとつ重要な脇役を紹介します。
作業机には穴が開いていて、下にニクロム電熱器があります。


生地に熱をあてて、乾かしながら染めることで、糸目糊の外に染料が浸みださないようにするためです。ぼかす作業も熱に当てながらの方が濃淡差が付けやすく綺麗に上がります。

さて一般家庭では見かけない機械が!

机の下に置いた変圧器です。
電熱器に100%で通電するとニクロム線が赤くなり、かなりの熱量になります。それでは乾きが速すぎますし、第一生地が焦げてしまいます(>_<)
そこで変圧器を通して電圧を下げ、低めの熱さが保たれるようにするのです。温度に決まりはなく、染める人の好みと季節にもよります。
粉末染料を煮溶かす時は、それよりも熱めに調整します。
ニクロム電熱器変圧器も今となってはそうそう売っていません。貴重なアナログの道具なのです。


ぼかし屋の染め風景 | 10:01 PM | comments (x) | trackback (x)
模様が入る部分を糊で伏せ、地色の染料を刷毛で染め終わりますと、


このように地(模様の背景)の部分だけでなく、伏せ糊の上にも染料がついて、あまりキレイとは言えない状況です。
フノリと染料でゴワゴワ、お煎餅のように硬くなった伏せ糊がのさばり、伸子針(しんしばり)の跡もツンツン出っ張り、生地はまるで嵐をくぐったご苦労様な状態です。

この後、塗った染料を生地に(糸の奥深くまで)定着させるために「蒸し」という作業があります。大きな窯に生地を吊るして水蒸気で蒸すのです。
その後、水洗いして伏せ糊を洗い流すと、模様部分が白く、染料が付かずに残るわけです。
この「蒸し」と「水もと」は京都の丸京染色さんにお願いしております。


まずはこの生地を京都に送る準備です。
生地を張り手から外し、剥ぎ合せミシンを使って一つの反物状に縫いつなげます。
間に紙を挿みながら巻き取り、巨大な海苔巻きにして宅急便で京都へ。

実はこのあたりの写真がありません。作業の記録として写すという発想が足りなかったり、うっかり忘れたり。記録するというのは一仕事だと思った次第。

そして!京都から帰ってきましたよ!すっかりキレイな反物に戻って。
(保護のために薄いビニールを被っております)


模様部分が白く残っているでしょう?
この部分に色挿しして模様を彩色していくのですが、まず先にキチンと地染めできたか着物状に並べて確認します。
ぼかしのラインが絵羽になっているか
(縫い目を境にズレたりしていないか、ちゃんとつながったか
縫い目を境に色の濃度が違ったりしていないか。


胸元の上前は大丈夫。


下前はぼかしのラインが湾曲しているので一番ハラハラ。


裾模様の空にあたる水色のぼかし。つながってます。


一直線に赤のぼかしが出る背の部分。大丈夫。


仕立てる時に縫い目にあたる部分に青花で線を書きました。右が胸、左が袖となります。
縫い線をはさんで模様がつながり、赤の色合いも同じように発色したことを確認。発色具合が違うと色の手直しが必要になるところです。

モナコ公国の振袖の場合、赤と白で上下を染め分けた国旗のイメージを保つため、赤は国旗と同じ赤色でというご希望でした。
日本伝統の赤は少し朱色によっていますが、紅系の染料を加えて調整した「真っ赤っか」蒸しのお陰でハッキリした赤に発色してくれました。ホッ(*^^)v

この写真は染め上がりの生地の白と赤の部分を合わせて国旗風に撮影したものです。


友禅の引き染めによるモナコ公国の国旗です(‘◇’)ゞ


ぼかし屋の染め風景 | 10:19 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅は多くの場合、一人の製作者による一貫制作ですから、この振袖でも地色を染める工程に進みます。前回紹介の伏せ糊で、模様部分をカバーして染料が入らないようする防染作業が済んだので、いよいよ地の色(模様の背景の色)を染めるのです。地染(じぞめ)といいます。

伏せ糊が一層よく生地に食いつくように、まずフノリを刷毛でのばして塗ります。地入れをいう作業で、洗濯糊で生地をピシッとさせる感じで、伏せ糊を始める前にしたのと同じ作業です。

フノリは海藻を煮溶かした液状の糊
手描き友禅は最初から最後まで様々な固さの糊の助けを借りて染めるのです。
ピシっとしていれば染料が均一に染み透り、塗りムラが起こる危険が減りますが、ゼロには出来ない(-_-;)

赤の部分で使用した染料試し布


染料は粉末の酸性染料をグツグツと煮溶かして作ります。
今回染める赤、ブルー、黄緑のうち、一番難しいのは赤。染めた後、蒸して洗って最後にどのように発色するか分かり難いためです。
同じ赤でも微妙違う色合いがあり、混ぜて煮ながら調整して作ります。赤染料はそれぞれ紅や朱にかかっているので、混ぜて真っ赤っかに見える色を出すわけです。


何度も色試しして前日までに準備した染料三色。
染料は生地に着くと色がよく見えますが、液体の時は黒っぽいのです。取り違えを防ぐために色バケツを使ったり、大きな色の印を付けたり。今回は3色なのでまずまず…5色が限界かな。

ぼかし染はまず生地に霧を吹いて水分を含ませます。水分量が多ければ淡色に、少なければ濃色になります。さらに染料についていない刷毛で生地をこすってぼかしのグラデーションを作ります。


一人で作業しているので細かい写真は写せないのですが、この写真には「ぼかし当り線」がまだ消えずに写っています。

右のぼかしラインの向こうからコチラまで線が3本残っています。染料や霧の水分でやがて消える線です。
予定通りの位置でぼかしを終わらせるために「新花」という下書き用の液体で線を引いてあるのです。どこまで霧を吹くか、どこまで刷毛を走らせるかの位置が分かるようにするためです。


この写真は短い生地が写っているでしょう?


試し染め部分です。生地の一部を使い模様の一部と地色を本番部分と同じように、ただし一足先に染め作業をしていくのです。色試しやぼかし方の最終確認といったところです。


伏せ糊の色の変わっている所は青い染料がついた部分。
伏せ糊防染(染まるのを防ぐ)の役割がよく分かる写真となりました。

赤も同じく、よく伏せ糊が働いてくれています。


右袖の前側は赤の塗切り。キッチリ真っ赤に。


裏から見ると伏せ糊をしたところには赤い染料が入り込まずに白く残っているのが確認できます。

ひとまず ホッ(^^;)




ぼかし屋の染め風景 | 09:51 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の工程のなかで、糸目糊、下絵落とし、地入れときて、いよいよ伏せ糊に突入です。
着物の模様の背景色(着物地、全体の色)を染める前に、模様の部分に糊を覆いかぶせて、染料が入らないようにする(防染)ための作業です。


糊は餅粉と糠粉を練り→蒸し→さらに練り→塩を加え、季節により(湿度により)グリセリンを加えて作ります。かつてはすべて自作でしたが、材料の入手難もあり現在は蒸して練り上げた状態の糊を材料屋さんから購入し、好みで調整して使っています。


伏せ糊をおいている最中。
乾いていないネバネバの糊が模様を覆っています。
このように模様の糸目糊にぴったり沿って糊の置くには道具が必要です。


糊筒 大小2種類 
筒は丈夫な和紙で作られています。口金を付けて希望の太さで糊を絞り出して、糸目糊のフチに沿うように、模様から糊がはみ出さないように糊で模様を伏せて行きます。
伏せたら糊が乾かないうちにトノ粉(木材のおが屑の粉)でカバーしておきます。


上部がトノ粉を振ったところ、下部はまだ糊だけ。
トノ粉で表面をカバーすると糊が丈夫になり、染める時には染料や水分を吸い取って糊を保護してくれます。

トノ粉を振っているところ。このお風呂椅子は伏せ糊専用(^^;)
この作業中は新聞を敷いたり、頻繁に掃除機をかけたりしますが、余分なトノ粉をブラシで掃ったりするので室内はトノ粉でジャリジャリ!


作業中のお盆の上
色々ありますね。糊、濡れた布巾、口金を洗う水とマチ針、霧吹き、糊をなでる小さいヘラなどなど。
糊は水分で硬さが変わり、程よい水分がないと作業がやりにくいので始終霧を吹いて、ボールの中の糊の硬さを同じに保ち、糊が付く相手の生地にも程よい水分を与え続けます。

裏から見ると水分の力で生地と糊が密着しているのが分かります。生地の糸の中まで糊が沁み通らせ、かつ他の部分に糊が沁み出ないように用心々。


作業が済むと、染める時と同じ力でまっすぐに張った状態で乾かします。生地がたるんでいると、たるんだ形で糊が固まり、染める時にまっすぐに張ると糊と生地が剥離する原因になります。


乾いてくると透明感が出て、伏せ糊の下の糸目糊の模様が見えてきます。ざっと乾いたら、この状態で一度裏返して、同じ糊で模様のフチだけを裏打ちします。


地色の染料が入り込まないように堤防を厚くするわけです。
表裏の糊が触っても大丈夫なくらいに乾くといよいよ色が登場する染めへ。
これがお煎餅ほどにパリッと乾いてしまうと、糊が割れて染料が入り込みやすくなってしまいます。
添加したグリセリンがお煎餅化を遅らせてくれます。
歯ごたえのあるゼリー菓子くらいになったら、お煎餅になる前に地色を染めないと!
一番気ぜわしい工程です。


ぼかし屋の染め風景 | 11:02 PM | comments (x) | trackback (x)

前回紹介した下絵洗いが終わると、水のためにシワシワになった絹の上に図案をなぞったゴム糊が糸目状に残っている、でもまだ不安定で、ゴム糊が「生地に食いついていない」状態です。
そこで、


まずこのように生地を張り手にかけて伸子針(しんしばり)で伸ばして、


生地の裏から「揮発地入れ」をします。
生地を裏側から脱脂綿に含ませた揮発剤で拭いて、表に付いているゴム糸目糊を裏側まで貫通させるのです。



どんな揮発剤を使うかは製作者次第で、友禅用ゴム抜き剤あり、ベンジンありですが、ぼかし屋ではロウケツ染めの材料として調合されたロー落とし剤を使っています。

その後で、フノリを水で溶いて刷毛で絹地全体に塗る「ふのり地入れ」を行います。
フノリって何?とお思いの方へ。
「ふのり地入れ」はまだあと2回も登場するので、その時に写真付きで説明いたしますね。
イメージとしては洗濯糊と同じで、生地面を平に張りを持たせるためのものです。
とにかく友禅染は生地がぴぃ~んとしていないと作業出来ない、とご記憶下さいませ。

揮発とフノリ、2種類の「地入れ」が済むと、シワシワだった生地がぴぃ~んとして、次の工程へ進む準備だできるわけです。


アップでご覧ください。
ぴぃ~んとした生地の上にしっかりと糸目糊が付いて、模様を描き出しています。


最後にもう一度、フノリを刷毛で伸ばして生地全体に糊の成分を含ませます。
すると色の染料が生地に留まりやすくなり、染め付けが良くなるのです。染料が糸目糊を越えててしまう「はみ出し」も防止できます。糸目糊は染料をせき止める堤防なのです。

これで友禅染の準備が整いました。

次は模様を糊で伏せて防染作業です。
手描き友禅染は糊防染につぐ防染の作業が続きます(^^;)
糊がフノリか、糸目糊か、伏せ糊かの違いで、フノリ地入れだけでも通常3回は行います。


ぼかし屋の染め風景 | 11:23 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅の制作工程には色々な作業があるのですが、さてこれは何をしている風景でしょうか?


(答えは一番最後に)

前回の紹介風景までで下絵糸目糊置きが終わりました。
普通はこの後に色を染める工程が紹介されますが、ここでは糊と染めの間の隙間作業を紹介いたします。


こちらは下絵を糸目糊でなぞり終わって、下絵が不要になったところです。
糸目の下から濃い青で下絵がのぞいています。
形を訂正したり、ぼかしを入れる予定の箇所につけた印など色々ついています。

このまま染め始めると青花の花汁で描いた下絵が流れ出て生地を汚してしまうので、染め作業に入るまえに下絵を洗い落とすのです。ぼかし屋ではお湯を使い、簡単に流れ落ちます。
お湯をくぐることで、絹生地の染め付けも良くなると感じております。


洗うと、絹の生地は縮み、幅もすぼまります。
でもご安心、この後でフノリ地入れなどの工程で形を整えながら染めでいきます。


水洗いした振袖用の長~い生地を室内干しして(外では虫やホコリの心配が)
完全に乾燥させてから、次へ進むのです。


ほら下絵がとれて図案通りの糸目糊だけが残ってスッキリ!
ゴム糸目糊の水に溶けない成分を利用した方法です。

糸目糊おきと、染料による着色という主要な工程の間の、隙間の工程、ニッチですが、省略できない大切な部分なのです。
(この辺りは同じ東京手描き友禅であっても、製作者によって違う部分です)

最初の写真は室内干ししているところでした。



ぼかし屋の染め風景 | 10:59 PM | comments (x) | trackback (x)

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