2022,03,26, Saturday
手描き友禅は一点物のオリジナル作品なので、その模様の色挿しは、
模様に合わせた染料作りから始まります。
例えば同じ緑でも、
青に近い緑から黄色に近い色合いまであるのです。
それぞれの図案に合う緑を調合して作ります。例えばバラや椿の葉は青味の強い濃い色。紫陽花は黄色味のある明るい緑。菊の葉はその中間でしょうか。
染料は粉末状。材料屋さんで大びんや袋入りで売っています。作業しやすいように小瓶に移しておきます。

原色だけでなく基本的な中間色も調合されていますが、自分の染めたい色を出すためには さらに自分で調整するのです。中央に写っているのはお抹茶色。頻繁に使うので多めに準備。この色に黄や青味を足したり、茶を加えてさらに地味にしたり。

友禅染の作業
机は真ん中が四角く切ってありまして、染め作業の時は
電熱を置き、図案を描くときは
電灯を置き上にガラス板の乗せられるのです。

昔ながらの
ニクロム線電熱の上に染料皿をのせ、
グツグツ煮て染料を溶かして色調整します。
色試し布を使います。水彩絵の具などとは違い、
友禅染の染料は液体状では色が正確に判別できないので、必ず布を染めて確認します。

これでよし!となったら煮えている皿を電熱から下ろして粗熱を取ってから作業机に上げます。なにしろグツグツのままでは染料が飛び散る危険もありますから。

熱がとれたら、必要に応じて
均染剤(ムラ防止)と
トメゾール(粘剤、はみ出し防止)を加えで色挿し準備完了となります。
東京手描友禅の道具・作業 | 12:09 AM
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2022,01,22, Saturday
今日は手描き友禅に欠かせない道具の手入れをしました。
伸子針の色抜きです。
伸子針(しんしばり)というのは、

このように地色を
引き染めするにも、
模様の色挿しをするにも、は生地をピンと張る必要があります。
欠かせないのが伸子針で、
竹の先端に金属針を打ってある棒針です。
生地を横糸にそって横断するように端と橋に金属針をかけて、生地を突っ張らせる感じです。

染めが終わると染料がついてこんな状態。このまま白い生地に使えばどうなるか。赤や青の染料で汚れてしまいます。
次回の使用に備えて染料を煮洗いして落とすのです。

方法は一つではありませんが、ぼかし屋では大きなホーロー鍋で
ハイドロコンクという粉末の抜染剤を入れて煮落とします。

グラグラ煮ています。
針の上下を入れ替えながら。竹も熱くなっているので軍手が欠かせません。

色が抜けたら、今度は
水洗い。ハイドロコンクの成分が竹に残らないように。

水切りして日当たり良いところで二三日かけて
完全に乾燥させます。
湿気が残っていると保管中に竹にカビがつく心配があります。

綺麗になりました。次の染めへ
スタンバイです。
ちなみにこの伸子針。
自然の竹で職人さんが作ってくださるものなので、一本一本の太さが微妙に違っています。
染めの作業をしていると、その時々によって、
生地が含んだ水分の具合が変わり、すると
生地の横幅に違いがでることがよくあります。針をうっても
今一つピンとしない事や、逆に張り過ぎて
生地が痛がっているような場合があるのです。
そこで
竹ごとの太さの違いを利用して、適切な針に差し替えて、ピン!の張り具合が生地と染め作業にとって丁度よいように調節できるのです。
竹の伸子と違って染料が浸みこまないグラスファイバー製の伸子針もあるのですが、ぼかし屋では竹一辺倒です。
竹ですから何度も使えば折れることもあり消耗品なのですが、これからも作って下さる職人さん、よろしくお願いいたします。
東京手描友禅の道具・作業 | 02:59 PM
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2021,07,12, Monday
これは
友禅染の材料です。何でしょう?

答え→
紙青花。単に青花とも。
植物から搾り取った青い液体を紙に含ませ、乾燥させたもので、友禅染の下絵を描く時に必要量を切り取り、水を加えて、滲み出た青い液体が下絵専用の染料になります。不要になったら水で洗い流して消せるのです。
貴重なものなので、一回の使用分に切り分けて
一枚ずつラップでピッチリ包み冷凍庫で長期保存いたします。
以前はもっと無造作に使っておりましたが、近年この紙
青花は絶滅が危惧されております。
2021年の生産はもう見通せないと聞きました。
青花の最後の生産農家、中村さんがご高齢のため作付けが難しいそうなのです。
以前NHKの番組「日本の里山」で紹介された時、2016年8月3日の当着物ブログでも紹介しましたが、
http://www.bokashiya.com/blog/c8-.html
その時の写を一部ご覧ください。

青花と呼ばれている「
オオボウシバナ」

すべて人手、人手で育てて収穫

水で揉み、布で漉して青い汁をとります。簡単そうに見えてこの布で漉すという作業は重労働。
汁を紙に塗り込んで、乾燥させ友禅の材料の紙青花となります。
乾燥させると、ほら、最初の写真の紙青花に。
青花には「
新花」という化学合成品もあるのですが、消えやすいことが長所でも短所でもあります。仮絵羽仕立ての白生地に下絵を描いてお客様に見ていただくには、紙青花は欠かせません。
かつては材料屋さんに行けばいつでも買えたもので、今は手に入りにくくなった物は色々ありますが、紙青花はその代表です。
もう来年も分からないのです。冷凍でどのくらい保存可能かは分かりませんが、極力傷まないようにして冷凍庫に仕舞い込みました。
青花にしろ、和紙の材料にしろ日本古来の美術品や工芸品を支える材料を生産してくれる農家へは、国による支援がなく、どこも生産の継続はとても難しくなっていると聞きます。
美術工芸品そのものは文化庁の、食料生産をする農家は農水省の管轄ですが、食料でない植物を生産する農業には監督官庁がなく、つまり保護を申請する先もないそうなのです。
「検討します」と言っている間に生産のノウハウは失われていくわけです(T_T)
東京手描友禅の道具・作業 | 09:24 PM
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2018,05,26, Saturday
振袖用の白生地を裁って仮絵羽仕立ての準備をしました。
東京手描き友禅の誂え染めでは、まず白生地をサイズに合わせて裁ち切り、仮の仕立てをしてから下絵を描くのです。

今回使うのはこちらの生地。
欄や菊のおめでたい地紋です。

反物をまず巻きを解いて長さを確認し、難がないか見ておきます。
巻棒から解くと大きな絹の山に。

真っ白の輝く美しさで、毎度のことながら「私なんかが手を加えていいのかしら」と思ってしまいます。変身の甲斐ある仕上げにしますからね、と言いながら採寸。

印打ち。
裁ち切っていきます。勇気がいります。

途中何度も長さを確かめつつ、切り終わったら着物の形に並べて最終確認。
仮絵羽仕立てへ進みます。
6/14追記
仮絵羽仕立てが出来上がって戻ってきました。地紋がきれいです!
花嫁衣裳のようですね(*^^)
東京手描友禅の道具・作業 | 04:07 PM
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