2018,05,26, Saturday
振袖用の白生地を裁って仮絵羽仕立ての準備をしました。
東京手描き友禅の誂え染めでは、まず白生地をサイズに合わせて裁ち切り、仮の仕立てをしてから下絵を描くのです。
今回使うのはこちらの生地。
欄や菊のおめでたい地紋です。
反物をまず巻きを解いて長さを確認し、難がないか見ておきます。
巻棒から解くと大きな絹の山に。
真っ白の輝く美しさで、毎度のことながら「私なんかが手を加えていいのかしら」と思ってしまいます。変身の甲斐ある仕上げにしますからね、と言いながら採寸。
印打ち。
裁ち切っていきます。勇気がいります。
途中何度も長さを確かめつつ、切り終わったら着物の形に並べて最終確認。
仮絵羽仕立てへ進みます。
6/14追記
仮絵羽仕立てが出来上がって戻ってきました。地紋がきれいです!
花嫁衣裳のようですね(*^^)
東京手描友禅の道具・作業 | 04:07 PM
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2016,07,15, Friday
手描友禅の染め作業、「裁ち切り」
東京手描友禅は基本的に、一人の製作者が下絵から染め上がりまでの染色作業を一貫して行います。
ぼかし屋も一貫制作です。ということは…
友禅染のデザインや染色作業、その準備や後始末も自分でする、ということ。
前回ブログでご紹介した伸子針(しんしばり)の色抜きは後始末の方でした。
よくお客様から 「一本の白い反物がどうやって着物になるの」 というご質問をいただきますので、このブログでは機会をみつけて少しずつ工程をご覧にいれています。
今日は制作の始めの一歩、準備の一コマ、「裁ち切り」の作業風景をご紹介します。
絹の白生地をサイズに合わせて裁ち切って仮絵羽仕立ての準備をするものです。
長~い白生地は3丈物。(裾回しも含む場合は4丈物)
尺差し「鯨尺」で測りながら、袖2枚、見頃2枚、衽に切り分けます。
測った通りに袖、見頃と切り離しますが、反物に最初の鋏を入れるのは今もドキドキします。
新花(後で色が消える)で印をうち、肩山や剣先位置など今後の作業に必要なところには糸印をつけておきます。
表裏が分かり難い生地の時は「こちらが表側」という糸印もつけます。印の仕方に決まりはなく、製作者それぞれが自分に分かるように決めた印をずっと使っています。
生地を切り離す時は、布を織った時の縦糸、横糸から逸れないように真っすぐ切るのですが、それが案外難しいのです。
一番の難所が、衽と衿の部分を縦に長く延々と切り続けるところ。
新花で印をつけてあるものの、集中しないと縦糸から大きく脱線して切り目が曲がってしまうので、切り始めたら終点に向かってひたすら切り続けます。
切り離した生地を並べました。
左から衿、衽、見頃2本、袖2枚です。
何だか少し着物に近づきましたね。
白生地の反物は始めの位置に生地のメーカー(機屋さん)や産地の印字があります。
この部分が左袖後ろにくるように裁ち切ります。
仕立ての時には切り離されてしまうのですが、生地が染め上がって、剥ぎ合せ縫いして反物状に戻した時に必要なのです。
反物の表札とでもいいましょうか。
一本の白生地から染め加工した品ですよ、と伝える役目も果たします。
裁ち切りが済むと次は友禅の初期工程へ。
仮絵羽仕立てや下絵描きが始まります。
さぁ~て!
東京手描友禅の道具・作業 | 11:20 PM
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2015,08,30, Sunday
東京手描友禅の道具、伸子(しんし)
着物生地に手描きで染付けする作業に欠かせない道具に
伸子があります。
「しんし」と読みます。生地に模様を筆描きする時や、手描き友禅用の糸目糊置き、伏糊置きをする時に、
長い生地の一部だけ(作業したい部分)をピンと張るのに使うものです。
伸子には、長くてサイズが色々ある
模様伸子(もようしんし)と、基本的に反物の横幅を張るサイズの
伸子針(しんしばり)の二種類あります。
作業中の写真をご覧ください。
見頃一本の裾模様二か所を
伸子で張っているところ。作業する面と裏側と。
生地を対角線に大きく張っているのが模様伸子。
×に交差した部分を左手で持って作業します。
生地の横幅を等間隔で張っているのが伸子針。
どちらも
先端に針がついていて、その針を生地に挿して張るのです。
伸子針は地色を
引き染めする時も使います。
引き染めをすると伸子針の先端部分(針の根元)が
染料で汚れます。
繰り返し使用するために
汚れるつど色抜きします。たとえば緑の染料が付いたまま次の白生地に針を使うと、生地の端に緑色がポチポチと針から染み付いてしまうのです。
色抜き剤をいれた湯に伸子針を入れてグラグラ煮て色抜きします。
色抜きと同時に、
熱い湯のおかげで曲がった伸子針がまっすぐに戻ります。
竹って大したものです。もう四半世紀以上前から使っている伸子も現役なのですから。
何度でもまっすぐに戻り、生地をピンと張ってくれるのです。
色抜きしたら、色抜剤が残らないよう伸子針をザクザク水洗いして、
三日ほど乾かして出来上がりです。作業に欠かせない金盥と軍手も一緒に写しました。
みんな友禅の
縁の下の力持ちたちです。
東京手描友禅の道具・作業 | 12:49 AM
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2014,12,25, Thursday
長い白生地を染めるには---友禅染の下準備。
当ブログをお読みくださった方からご質問をいただきました。
「長い反物。どうやって普通の住宅の中で染めているのですか」
答えは「
切ってから染める」です。
お客様のサイズに合わせてまず白生地を裁って白い着物を仕立てます。
仮絵羽仕立てという簡単な縫い方です。ここに下絵を描きます。
仮絵羽仕立て
仮絵羽の上に下絵を描いているところ。
これを切り離し、糸目糊置きした後はこのように着物は各パーツごとにバラバラです。
バラバラの生地をまた元の反物の状態に縫い合わせます。
見頃2本、衿と衽で1本、袖2枚で1本、裾回し1本、計5本の長い生地にして、生地の切り口には染色作業用に端切れを縫い付けます。(張り手や伸子に生地を掛けるため)
ミシンは
剥ぎ合せ専用のミシンです。
2014/3/13のブログ手描き友禅の裏方道具、継ぎ合わせミシンでも紹介しています。
縫い合わせが済んだところ。
長い反物の状態に戻りました。
これから先がいよいよ染色作業となります。
東京手描き友禅は誂え染めの一点物が多いので、
このように切り分けて作業することができます。
引き染めの専門業者の方や、型染め屋さんは条件が違うので反物を切ってしまう訳にはいかず、細長い大きな作業場で仕事をなさっています。
※当ブログには
お問い合わせフォームがついております。
ご注文に限らず。ご相談やブログについての質問などなど…歓迎です。
お気軽にフォームから送信してくださいね。
お返事申し上げます。
2014年12/27 追記
端縫い掛け、ふのり地入れ(14年8/9ブログで紹介)と進み、本日地染めをいたしました。
裁ち切って、剥ぎ合せて染めていることがよく分かる写真を撮ったので追加で掲載します。
端縫いかけした
端きれが生地を守っています。染色作業では必須です。端きれは絹の着物生地でなければ役に立ちません。(化繊では強度が足りず、染料を吸ってくれないため)着物を制作するごとに余った生地を色試しに使ったり端きれにしたり、無駄なく利用しております。
これが今年最後、〆の地染めになります。
お正月は色挿しを頑張ります。捗るかな!?
皆様よいお年をお迎えください。
東京手描友禅の道具・作業 | 09:41 PM
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