大発会の振袖

 
大発会の振袖
2025年が明けて半月、早いですね。
今年の金融機関の事始めの1月6日、東京株式市場で大発会がありました。
そのニュース映像を見て、じっくり驚いたお話から今年の着物ブログ始めたいと思います。


(画像はテレビ局、新聞社のネット配信ニュースから)

「振袖姿の女性が見当たらない!」と驚いたのでした。若い方々は「それ驚くようなことこと?」という反応だと思うので、比較のために35年ほど前の大発会の写真をご覧ください。


手締めをする参加者の最前列にビッシリ立ち並んだ振袖の皆さん。

高度経済成長の1960年代以降、豪華な振袖を着た証券会社の女性社員が大発会に参加するのが恒例で、新年の象徴でもありました。

背景にはいくつか要因があります。
和服が日本人の日常生活の中にあったこと、浮き沈みありながら経済が拡大を続けたこと。
今と違い証券会社の社員がみな待遇の安定した正社員だったこと(特に女性労働者について)と同時に女性社員に求められた役割が職場の花であったこと。それが常識であり別に強制せずとも仕事始めの朝、自前で振袖を着て出勤する女性社員がたくさんいる時代が長く続いたのでした。(寿退社強制の時代でもありましたよ、念のため)


かくいうぼかし屋も子供のころ、そういうお姉さん方に憧れ「大人になったらお正月は振袖で会社というものに行く」と思っていました。実際に大人になったらそんな習慣はどこへやら、でしたが。

 減少していた振袖姿でしたが、今年の大発会でついに姿を消した事に驚くのは何故かネット検索してみましたら、
昨年2024年は元日の能登地震を受けて大発会は黙とうで始まっておりました。
2020年~2023年はコロナ感染防止で参加少人数が距離をとってマスクで並んでおりました。当然振袖姿なしです。
コロナ前の2019年まで遡ると振袖女性が10人弱参加しているようでした。


おそらくバブル経済の終わった1990年代急速に振袖が減ったと思われます。その後の喪われた30年の間は、証券会社から職場の花的な社員女性が消え、何と言っても着物離れが進んだ結果として今年の大発会の風景になったのですね。男女雇用機会均等法が生まれ遅々として進まないながらも労働者としての男女平等が意識されてきたことも影響していることでしょう。
証券会社でスーツを着て働く女性が増えるのは素晴らしいことです(^^)
ですが、大発会を一種のお祭り、新年の景気づけと見る場合、振袖姿があってもいいと着物屋としては思うのです。男性も羽織袴で威儀を正すのもよし、法被にハチマキ〆でもよく、要となる時にはもっと和装を楽しみましょうよ、と言いたいです、自戒を込めて。

※今年の大発会、他の角度からの写真には式段上ではないものの参加者の中に数人の振袖姿がありました。


着物あれこれ | 10:38 PM | comments (x) | trackback (x)

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