2021,03,04, Thursday
モナコ公国をテーマにした
手描き友禅の振袖の制作工程を少しずつ紹介してまいりました。たくさんの工程のうち、
花形は模様に色を挿すところ。その色挿しの紹介も今回が最後となります。
振袖は
袖だけで普通の訪問着一着に相当するほどの模様量があります。
振袖の色挿しとは、始める時は「どうなることやら」と思い、ひたすら作業を続け、途中では「明けない夜はない」と自分を励ましながら、終わりが近づくと淋しくなる、ものです。

裾模様、上半身のバラと進み、残るは
バラの葉とアクセントで描いた
ツタ状の模様を残すのみ。
染料皿の数もぐっと減り、机の上もサッパリしています。

このように巻いてはずらせて模様伸子に張りながら作業します。


緑やグレーが入るので全体が落ち着きます。
染料が乾いたら、またずらせて張り、
また色挿しを繰り返すのです。


生地の下の端に
あて布がついています。地色の
赤を引き染めした時の刷毛の跡がよく見えております。模様伸子で強く引っ張られる力を、あて布が分散してくれる役目もあります。

染めてはずらすので、東京手描き友禅では
作業机の上はこんな風景ですが、京都では室内に柱を立て、ローラーを組み、生地をクルクルをずらせて染めることが多いそうです。便利だなと思いますが、東京流にも大きな利点があります。

このように染めの途中でも、気軽に模様伸子に張ったままで並べられるので、模様がつながっているかどうか、配色のバランスがよいかどうか確認しやすいのです。
いよいよ長かった色挿し工程が終わります。
ぼかし屋の染め風景 | 10:23 PM
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2021,02,09, Tuesday
東京手描き友禅は制作者にもよりますが、地色や模様に
ぼかしを入れて濃淡をつける場合が多いようです。ぼかし屋という名称も模様のほとんどに濃淡や複数色のぼかしを入れて制作するところから。
ぼかしは一般の名詞なので、ちょっと図々しい名乗りで気後れしておりますが(^^;)
今回は模様のぼかしに使う
片歯刷毛(かたはばけ)も一緒に紹介します。
刷毛の巾は色々。ぼかす面積によって使い分けます。
竹でしっかりと毛を挟んだ平たい刷毛ですが、よく見ると毛は竹の部分と
平行ではなく、斜めになっています。
まず刷毛に水を含ませ、斜めの
尖った方にだけ染料をつけ、
水の力を借りてぼかしをします。
毛の部分が乾くと綺麗なぼかしにならないので、刷毛はそのつど水で洗います。

水にドッとつけて洗うと毛の中の
染料の残りが刷毛全体に回ってしまうので要注意。
筆洗の
縁を利用して、刷毛をしごきながら洗うのです。

すると、余分な染料が毛の尖った方から直接筆洗の中に落ちていきます。
染料のついていない側が汚れずに洗えるのです。
生地にぼかす以前に、
染料が刷毛の毛にある時点で、すでに濃淡がついている訳です。尖った方が濃く。
片歯刷毛も色別に揃えてレッツ染め。
前回紹介したように、大輪の花の場合は一輪を何回かに分けて染めます。
全体のイメージでは「赤いバラ」ですが、模様ですから、着た時に綺麗に見えることが第一。バラによって赤の種類や濃さを変え、白(ごふん)も使って豪華に。
作業机での写真では電灯のために赤の部分が
朱色がかって見えます。
色は太陽光で見た場合が基準。色を作る時や色挿しに最中にも幾度も
太陽光の明るい窓際で色合いを確認しながら進めます。
太陽光のもとでは赤は
紅色がかっているのをご覧いただけるでしょうか。こちらが本当の色。
今回は上下で色、模様が異なる着物の色挿しです。裾模様の青や紫の強さとのバランスも見ながらバラの赤を決めていきます。
このあと葉とツルを染めます。色挿しも終盤へ。続きは次回に。
ぼかし屋の染め風景 | 11:26 PM
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