ぼかし屋の染め風景

 
総柄の帯地の制作1

帯には大きく分けて織り帯と染め帯があります。有名な西陣織や博多織の帯は「織り帯」
染め帯は友禅染や紅型などの型染で模様を※後染めした帯をいいます。

後染め→ 白糸で織った後、白生地に彩色して模様をつける染め。
 先染め→ 糸を先に染めてから織って模様を織り出すので生地になった時には色も模様もついていること。

今回は手描き友禅で後染めする帯地制作風景の紹介です。
模様は総柄とします。お太鼓部分や前にだけ模様付け(名古屋帯)するのではなく、生地全体に模様を広げて変わり結びもできるようにした帯地になります。




まず模様の図案。バラとカンパニュラを組み合わせて流れを作って 模様の混み具合や花と葉の形を描き直しながら調整。




図案が完成。丸くリースのようになっていますが、実際には細長い帯地に半円をずらせて描きます。


使う生地はこちら。


金通しの生地です。絹糸に金糸を混ぜて織り、生地に金色の光沢を持たせた生地です。豪華な雰囲気になります。

この生地に図案を写しとって染め作業へ進むわけです。続きは次回に。

ぼかし屋の染め風景 | 11:29 PM | comments (x) | trackback (x)
無線友禅のお試し
今回はあまり経験のない染め方を試し染めしてみました。
伝統工芸品としての友禅染には二種類あります。
手描き友禅と型友禅です。そのうち手描き友禅はこのブログでお馴染み、ぼかし屋が行っている技法。糸目友禅ともいい、模様を糊で線描きして防染した生地に染料を筆や刷毛を使って染め、模様を描き出します。
こんな感じです↓


↑糸目糊で防染した跡が白い糸のように線で残るので「糸目友禅」

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、手描き友禅に含まれる技法の中に「無線友禅」があります。糸目糊による糊防染をせずに、生地にまったくフリーハンドで絵を描くように筆で模様を描くのです。
ぼかし屋では無線友禅はごく例外的に模様の一部に、例えば葉っぱなど、添える事があるものの、ほとんど未経験でした。
次回作では糸目友禅の重要脇役として併用し、初めて花も描く事になったので実験しているところなのです。

(写真が歪み、渦も出ています。生地の縮緬はデジカメと相性が悪く渦がでやすいのでご容赦下さい。縮緬表面の細かい粒粒したシボがデジタルの読み取りを邪魔するらしいです)

まず試作生地に下絵を描きました。
ふんわり感を出すために生地は濡れた状態で描きますので、水分で消えないタイプの下描き染料(新花と呼びます)を使いました。

さてさて、どうかな~


ピンクのバラを無線友禅で描きましたが、糸目友禅と違うボンヤリ感は出たと思います。
下絵の新花は筆描きの間、水分では消えず、染めた後の加熱で消えることも確かめました。
無線友禅はボンヤリ、フンワリだけでなく境目をクッキリさせて多色を重ねることも出来ます。ついでに余白でやってみました。


クッキリした桜が重なりあってます。無線友禅ですと、この重なり部分を糸目が邪魔しないので色の重なりが自然に見えます。

まず次回の図案ではこのフンワリの方で行きたいと思います。
予定はバラではないのですが、試作でバラが出来れば他の花は何でもOKなはずなのです。
バラは一番難しいですから。

ぼかし屋の染め風景 | 12:40 AM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅染めの仕上げ、金彩

訪問着の染めの作業が終わると生地はこんな感じです。


糸目糊を洗い落としてもらいますと糊の色が無くなり、生地の糊の跡が糸の目のような白い線に変わることで、模様自体をとても柔らかい印象になります。良く言えばふんわりと、悪く言えばちょっとボンヤリした感じになります。
ここに顔料や金色を加えることで模様にアクセントを与え、着用した時により綺麗に見えるようにする工夫です。東京手描き友禅の場合は、花弁を金線で縁取ったり、花芯部分を鮮やかな色合いの顔料で描いて立体感を出したりすることが多いようです。


金彩作業中の机。
豆絞り模様の手拭が写っています。もう染め上がっている着物生地ですからなるべくカバーしておくのです。机の上には金粉や顔料、刷毛などがあります。



染めの色挿しの時と同様、絵羽模様の流れが不自然にならないよう縫い目になるところの左右がつながるように注意しながらです。

金彩が入った状態。


生地の両端、耳があたるところが直線ではなく一部少し出っ張りがあるのでご注目を。これは染めの時の伸子針(しんしばり)の跡なのです。染め作業直後はもっと出ていますが、水もと、湯のしをしてほぼ真っすぐに戻っているものの、よく見ると少し残っているのです。
これは伸子針を使った証拠、つまり手仕事で染めた証明なのです。亡き師匠は「伸子針の跡は手描き友禅染の勲章」と言ったことがあります。


出来上りです。
衣桁に掛けて全体を確認。金彩、顔料などに使った水分のため生地が歪んでいます。これを湯のしで直してもらいます。
今後、この湯のし作業の様子もご紹介したいと思います。

ぼかし屋の染め風景 | 11:40 PM | comments (x) | trackback (x)
糸目糊落としbefore,after

☆before☆
手描き友禅の誂え染めでは色挿しの作業が終わると色の調子を確認するために模様伸子を外してから生地を並べて全体の様子を見ます。
前 左胸側の、衿、身頃、袖を並べたところ。


色の調子を見るとは、色の濃淡が全体で見た時に不自然でないか、流れが出ているかです。
裾模様を並べたところ。


白生地を仮絵羽仕立てしてから下絵を描き、解いて染め作業をする手描き友禅染め。染めが終わったばかりの状態はこんな感じです。黒っぽく糸目糊が残っているだけでなく、伸子針(しんしばり)の跡でナミナミに歪んでいるのです。
生地にご苦労様と言いたくなります。

これから整理屋さん(丸京さん)へ生地を送る準備をしました。
当て布など不要な部分を解き、元の生地の状態に縫い戻します。


巻き戻すと、生地の裏が見えています。手で色挿ししたことがよく分かる色合いをしています。つまり表と同じ染料がじっくりと裏まで浸みわたっています。


以前にも紹介した生地の剥ぎ合せ専用のミシンが写っております。
生地が巻きの状態に戻ったので、いよいよ丸京染色さんへ行ってらっしゃい!です。

☆after☆
さて丸京さんから戻ったところ。
蒸して色を定着させ余分な糊を落とし水洗いして湯のし(生地の整地)をしてもらった絹地が戻りました。


裾模様を並べました。左右両方の衽(おくみ)部分は縫い合わせたまま。生地の終わりに当て布が付いたまま。手描き友禅の作業風景の紹介ですから、いかにも途中という状況をそのまま写しました。


上前の衿、身頃、袖のつながり。着用すると一番目立つ部分です。
糸目糊が落ちて白い線が浮き上がり、生地の歪みも取れて生地がまっすぐに。光沢も取り戻しましたよ。

右袖の後ろ側。


次回は仕上げ作業です。

ぼかし屋の染め風景 | 10:19 PM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅の色挿し


長い生地を模様伸子に張り、染める部分を表に出し、作業しない部分を端に巻き込んでおきます。持ちやすく、作業しやすくしながら作業机で染めていきます。





訪問着ですから、絵羽模様。つまり縫い目の境を越えて模様がつながっています。

このように並べて境目の左右に同じ色が続くように、間違えないように色を挿していきます。


張った生地の間から電熱器が見えています。染料を煮る時は赤く熱していましたが、色挿しは、ニクロム線が赤くならない程度の低温で温めながらの作業。赤くなっていたら生地が焦げちゃいます(^-^;


このように裏返すと出来上がりの色調が確認しやすいのです。
なぜかといいますと、「裏側には糸目糊がないから」

糸目糊は模様をくっきり縁取っているわけですが、出来上がりますと、糊はみな落とされて、糊の跡が糸目に見える白い線になって残ります。
色挿ししている最中に見るより、模様の出来上がりはよく言えば柔らかく、悪く言いますとボンヤリします。折々に裏側をチェックして、程よい色の具合かどうか確認しながら作業を進めます。


手前に写っているのは、色試し布。この布を見ると、色のラインアップが一目瞭然ですね。
淡い黄緑地に緑、黄、オレンジ系の黄を配した今回の色調にはヒントがありました。


アイスクリームメーカーのハーゲンダッツの2021年8月10日の新聞広告です。薄い青緑の背景にオレンジ色の卵がくっきりと。アイスクリームの柔らかいクリーム色も美味しそうに馴染んでいます。
この広告を見た時に「何ておしゃれな色合い、頂きたい!」と思ったのでした。写真では分かり難いかもしれませんが、色だけでなく内容もおしゃれなのです。
上から、「ミルクと砂糖とバニラと卵で出来ているアイスクリーム」と読める足し算の式が書いてあるのです。
時間がかかりましたが、今回の色調のヒントにさせていただきました<(_ _)>



ぼかし屋の染め風景 | 06:15 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅の職人組合が主催する染芸展への出品作は蘭の訪問着です。
制作工程をご覧いただくのに、あいにくカメラが壊れてしまい、下絵、糸目糊置きの写真がありません。データは操作出来なくなったカメラの中。いずれ新しいカメラを購入しましたら、データを移動させ、パソコンに取り込む予定です。どのようなカメラにするか決心がつかず、修理不能で返却された愛用のカメラを眺めてはため息をついております。
という訳で、色挿しからはスマホ撮影しました。
当然ながら画質が今一つ。それにブログ用に加工するのもカメラ写真のようにはいかず、苦戦しております。
実際より長細く、広角レンズなので横にも広がった画面となっております。ご容赦ください。いつもの作業机が広く写っております(^^;)


下絵を考える時、およその色合いは同時に考えるのですが、最後に色見本を使って色をラインアップ、自分の中で着物全体の色調を決めます。

写っているのはパントーンの色見本帳。
色の流れと濃淡が確認できるタイプで、着物用ではありませんが、とても便利です。今回の蘭は緑の花が主体でオレンジと黄色も取り合わせる方針。


まず染料を煮て色を作っております。グツグツさせて粉末の染料を煮溶かします。


訪問着は柄の量が多い、つまり色がたくさん必要なので絵皿ではなくステンレスボールで煮て、絵皿に移して使用します。


準備できた色の数々。今回は何本か新しい筆もおろしました。

生地を模様伸子(もようしんし)に張って作業をする部分を表に出してピンとさせまおきます。



色作りに使用した色試し布↑
作業中にも試すのでどんどん増えていきます。染めている作品で使用している生地の余分の部分、または同レベルの生地で試します。生地の厚さや織りで色は違って見えるからです。


色挿し作業を始めたところ。
糸目糊だけのところに全部色が入っていきます。これからが長~い。

ぼかし屋の染め風景 | 06:36 PM | comments (x) | trackback (x)
本日のブログは、モナコ公国振袖制作のうち、染め工程ではないものの、手描友禅ならではの作業として「参考にした写真」のお話です。

友禅模様には、梅はこう描く、牡丹はこう描くといった型式があります。でもぼかし屋はせっかくの手描きなので、独自の表現の方をしたいものだと思っております。
ただ、面白いもので、写真そのものや、本物の花そっくりに写生した画が、そのまま着物の柄になるかというと、ダメなのです(^^;) 写実だけでは模様となったときに綺麗に見えない…
昔の諸先輩方が生み出した型式には、それなりの理由があるのですね。模様である以上、どんな花でも物でも一定のパターンを決め、それを繰り返すように描く方が綺麗に見えるのです。

だから作図する前には、この材料(花など)なら、どんなパターンで行こうかな、と考えることになります。

先方の希望で、今回の材料はバラ、カンパニュラ、王宮の3点。
作図中から彩色くらいまで、考えの参考になってくれる写真で机の回りはいっぱいになっていきます。
今回は、モナコ公国の振袖を製作した時の作業机の回りを記念に撮影しました。
上半身を彩ったバラのパターンの検討中、色々と目に付いた写真たちです。


グレース公妃の著書「My Book of Flowers」
からコピーしたピンクのバラ(左上方)を基本にしました。下中央にあるのは萩尾望都さんの著作「ポーの一族」から。一昨年の夏に銀座松屋で開催された「萩尾望都展」で購入したカレンダーの絵で、御存じエドガーとアランが豪華な赤いバラの花束を持っています。このバラの彩色も参考にさせていただきました


他に、ゴッホのバラ(左)安井曾太郎のバラ(右)


バラは作図してこんな感じに。
上半身はバラでいっぱいに、というご希望だったので、頭の中はバラ、ばら、薔薇でした。

カンパニュラの決め手となったのはこちら。


やはりNHKの番組から。日本の楚々とした桔梗とは違い、かなり大振りな青い花です。モナコのお隣、フランスの画像です。


バラとカンパニュラ、染め上がり生地はこんな感じ。

振袖のもう一つの要素、王宮。
モナコというとF1グランプリやカジノの画像はたくさん検索できるものの、王宮の情報は少なく、テレビ番組にも頼りました。
この画像は、モナコ王室専属シェフの方を取り上げたNHKBSのドキュメントから。


王宮正面とモナコを象徴するという2コブの岩山が写っていて、とても助かる情報でした。
中世以来の要塞でもあった歴史ある王宮は、堅固な岩山の上にそびえるお城です。ネットから、テレビから写真はたくさん撮りました。代表はこちら、

(旅行会社のネット情報から)

そして、こんな作図になりました。


ぼかし屋はアナログな伝統技法なので、作図は模造紙やトレシングペーパー、ペン、鉛筆で行いますが、当然、ネットやデジタルカメラの恩恵を受けております。
色々な情報を与えてもらえるのは有難いことです。

ぼかし屋の染め風景 | 07:32 PM | comments (x) | trackback (x)
さて刺繍が済み、すべての染色作業が終了しますと、最後の工程は仕上げの「湯のし」
東京手描友禅の本拠地である高田馬場の湯のし屋さん、吉澤湯のしさんにお願いしました。
金彩仕上げで使う顔料の水分は生地を歪めます。それに刷毛で擦ったり、刺繍屋さんで枠に張られたりしたことでも生じた歪みもあります。これを、蒸気を当てて矯正してもらうのです。


大きな専用の機械。ドラムからモクモクと蒸気があがります。


ゆっくり回るドラムの端には細かい針がついていて、生地の端を咬ませて回転させることで、生地が順に蒸気をくぐっていく仕組み。


白生地をして織り上がった時の生地の状態に戻してくださる技術で、これが本当の手加減。
手描き友禅だけでなく、着物の染めには不可欠な工程です。

湯のしが済んで、出来上がりの反物になりました。


最初に生地屋さんから届いた時の白生地はこちらでした。


同じ生地が、色と模様がついて着物生地となったわけです。
ビフォーアフターをアップでご覧ください。



刺繍や金彩が傷まないように紙やビニールをはさんで巻き取っているので、こう見ると海苔巻きのようですが、織り、染め、刺繍のカタマリです(‘◇’)ゞ


東京オリンピック関連して企画された、全出場国をテーマにした振袖を伝統技法で制作するというプロジェクト。東京都工芸染色協同組合を通じて参加、ぼかし屋はモナコ公国をテーマにした振袖を担当いたしました。たいへん勉強になる貴重な機会をいただき、関係者の皆さまに深く感謝しております。ありがとうございました。
次回ブログは周辺話題を少々(^^)/

ぼかし屋の染め風景 | 12:06 PM | comments (x) | trackback (x)
モナコをテーマにした振袖の二着目の制作では江戸刺繍をあしらっていただくことにしました。
友禅は華やかさがある染め上がりになるので、多くの場合礼装や晴れ着となります。江戸時代に友禅染が発達する中で、友禅染に刺繍を合わせて豪華さを出した振袖、小袖が多く登場してきます。
で!このたびの制作の機会に、刺繍で仕上げていただくことにしたわけです。

お願いしたのは江戸刺繍の猪上雅也さん
以前、他の方の友禅作品にあしらわれた井上さんの刺繍を見て一目ぼれし、機会があればこの先生にお願いしよう!と決めておりました。

一番のポイントは、背の中央に先方(モナコ公国)のご希望で入れた冠の形に金糸をあしらって豪華にすることです。



下部に生地の端が写っています。刺繍の作業台に糸で括り付けてあります。


まだ本仕立てではないので生地の耳が写っていますが、刺繍上がりを背中心で合わせると、だいたいこんな感じ。ピンクの糸も入り、冠全体が紋所として立体的になりました。
大きな刺繍紋といったところですが、実際に着装すると帯に隠れ、衣桁に飾ると目立つ場所です。

刺繡は他に、王宮と国花であるカンパニュラにも。
写真の右端に、刺繍の作業台に生地の耳が縫い付けられていますよ!


モナコの王宮もともと海に面した岩山を利用して作られた中世の要塞だったとか。
要塞がぷっつり途切れていて形が少し不自然ですが、右端は縫い代に入るため模様が途切れております。

地中海に面したモナコの青い空と岩山はモナコの風景に欠かせない要素。
空に翻るモナコ国旗も刺繍でグレードアップ。





王宮のシンボルとなる中世以来の塔は、石造りであることを刺繍で表現していただきました。
やはり全体を同じ調子で縫うのではなく、強調部分に刺繍をお願いしました。


猪上さんご自身で撚りをかけて糸の色合いや光沢をお作りになっています。
拝見した時、そうそう!こんな風にして頂きたかったんです!(^^)!と思わず猪上さんに申し上げたのでした。


ググっとアップして、
小さい部分ですが、ここが王宮の入り口。写真で見ますと、実際は両側に兵隊さんが立ち、重厚でものものしい入口のようです。この着物では遠景を描いているので、入口も小さく、着物の模様ですから、可愛らしくしました。
金糸の飾りがぴったりです。


写真に写りにくい花芯の白い刺繍がよく見えています。
カンパニュラの花芯や縁取り。


手描き友禅では、「すべてを同じようにするのではなく、それぞれに違えて全体で見たときにきれい」を目指すので、そもそも花の色合いが少しずつ違い、金彩の有無、刺繍の有無でさらに違いをつけます。
全体で見た時に強弱がつくように、重要な位置の花を豪華にしてあります。


刺繍をいれていただいた王宮とカンパニュラの裾模様。
こんな感じで、とお願いした以上に美しい刺繍をあしらって頂き、ありがとうございました。
<(_ _)>

ぼかし屋の染め風景 | 05:02 PM | comments (x) | trackback (x)
モナコ公国の手描友禅振袖 制作風景 19 仕上げの金彩

丸京染色さんの作業のために剥ぎ合せミシンで生地をつなぎ合せて一反の長い生地に戻して京都へ行った生地。糊を落として湯のしも済み、ピシッときれいな反物に戻った生地が京都から戻ってきました。


今度は解いて着物の形の各パーツの生地へとバラします。並べて位置関係を確認しながら、どの程度の金彩をほどこすか決めます。


くすんでいる糸目糊がとれて、湯のしで生地の光沢が戻り、とても華やか!
金彩の仕上げはいつも行うわけではなく、着物の用途や色調によります。当然今回は派手めに。

金彩と一口に言いますが、金色を使う仕上げ彩色のこと。金色や銀色の粉を顔料や接着用材と混ぜ、マスキング用のフィルムや刷毛、筆を利用して生地に彩色するのです。手描き友禅の最後のお化粧といったところです。


左端に写っているのはマスキングフィルムカット用の道具。カッターの刃に電熱が通り、フィルムだけが切れて生地には影響しない程度の電熱が通り、熱さを利用して絹の上に張ったフィルムを模様の形に切り抜くことが出来ます。

このカットの作業を、私の師匠であった早坂優先生は、熱を使わず刃を直接フィルムに当てて、指の加減だけで切り抜いていました。すぐ下に絹生地があるのにですよ!
「修行時代には電熱カッターなんて無かったからね」とおっしゃっていたものです。
私はとても真似できません。専用の道具に頼っております。
師匠が今もお元気だったらな、と思うことは多いです。

生地にフィルムを貼って


模様に沿って切り抜き


銀色の粉を刷毛ぼかし

済んだら、フィルムを剥がします。銀色の吹雪をアクセントにしました。

金や銀も色の具合は色々。自分で調合します。


このままでも綺麗ですが、


華やかなバラのアクセントには、やはり光の強い金色で、花びらのうち、強く見せたいところに筆描きで金線を加えます。

立体感が出て、強い印象になります。
(金彩の方法は製作者により様々です)

彩色したところが乾くまで少々時間がかかります。
衣桁も動員して部屋中に広げながら作業します。華やか~な室内となります。



ぼかし屋の染め風景 | 10:58 PM | comments (x) | trackback (x)

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