2020,05,22, Friday
さて着物の形に仮縫いした白生地に下絵が描かれた状態となりました。
これを解いて、もう一度
最初の反物の状態に戻して友禅染へ進みます。
例えは悪いですが、トイレットペーパー状の長~く真っすぐな形にすれば、
模様伸子(もようしんし)や
張り手に張っての作業が可能になるのです。
縦に長~く裁ち切った衿と衽(おくみ)の部分には、それぞれ
当て布を長~く縫い足して、生地の幅を
裁ち切る前を同じ幅に戻しておきます。
そこで活躍するのが
「剥ぎ合せミシン」
生地と生地の切り目を剥ぎ合せる専用のミシンです。
着物需要の低迷から、
もう生産されていないミシンなので「宝物」
災害時は抱いて逃げるつもりでおります。
この「剥ぎ合せミシン」は
染め上がった時にもう一度活躍します。
染め上がりなら生地に色があってミシン糸が見やすいので、その時に詳しくご覧いただくつもりです。
こちらが染色
作業するばかりに準備ができた白生地を写したものです。
生地の
端にも当て布がついています。
地色を染める時に生地に食い込む
「張り手」の針から生地を守るためです。
友禅染の特長は、
糸目糊という線状の糊で下絵をなぞって防染すること。
糊が付いていた部分には染料がつかないので、最後に糊を落とすと、染まらなかった部分が
糸の縫い目のような白い線で浮き上がります。
その糸目糊を引いているところ。糸目糊を置く、とも。
下絵をなぞる糸目糊には、餅粉から作る
真糊と、合成ゴムを利用した
ゴム糊の2種類がありますが、これはゴム。どちらにするかは染め作業に順序によります。
順序は柄行きと色合いによります。
今回は
地色に真っ赤なぼかし染めが使われるため、地色染めを模様色挿しより先にするためゴム糸目を使っています。ゴム糊は水洗いでは落ちない事を利用した順序です。
糸目糊置きが済んだところで、要所々を合わせてみて、
模様が縫い目を越えてもつながっていることを確認します。
「ちゃんと
絵羽模様になっているかな?」です。
ちょっとややこしい説明ですが、今後ご紹介していく作業風景へ進むとご納得いただけるかな、と思っております(^^;)
ぼかし屋の染め風景 | 06:00 PM
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2020,03,31, Tuesday
オリンピック関連プロジェクト、イマジンワンワールドに参加して制作したモナコ公国をテーマとした振袖の染めの様子を工程ごとに少しずつ紹介していきたいと思います。
追加でご注文いただいた時の記録を主にご紹介しますが、初回制作版の写真も利用させていただきます。
最初は何といっても
生地の準備。
生地問屋さんの揃えてもらった
同練りの三丈物二反。
同練(どうねり)とは
同時に作った糸で織った、という意味です。
生地の模様が同じでも、練りが違うと同じ染料を使っても同じには発色しないからです。
本紋と呼ばれる振袖用の地紋で、沙綾形文に菊や蘭が織り出されています。
まず巻を解き、全体の長さを確認します。
白い絹が山のように重なります。本当に美しく、いつも
「これに色を付けてしまっていいのかな」と思ってしまいます。白い雪の上を歩いてはいけないような感じです。
尺差しで計って印を打ちます。
まっすぐ計って、まっすぐ裁ち切らなくてはなりません。
この時、活用するのが
「畳の縁」
ヘリと畳面のわずかな
段差を利用して生地をまっすぐに固定して計るとずれません。
裁ち間違いしないよう
何度も何度も計り直しながら鋏でザックリいくわけです(^^;)
衽と衿の間の長い所も延々とまっすぐ切ります。
裁ち切りが済んだら、仕立て屋さんにお願いして
仮絵羽仕立てしていただきます。
振袖の形にしてから、生地に下絵を描くためです。
着物が出来上がった時に、
縫い目の越えてつながっている模様を絵羽(えば)模様といいます。
例えば豪華な牡丹の花が縫い目でブツッと途切れていたら残念です。
絵羽模様で広々と牡丹の模様がつながっていると立派ですよね!
絵羽模様にするための
下準備の仕立てを仮絵羽仕立てと呼ぶわけです。
仕立て屋さんから仮絵羽仕立てとなって戻って来たところ。
出来上がりサイズに合わせて綺麗に着物の形になりました。
さて!
ここに図案を描くわけです。
縫い目を越えて模様がつながるように。
その図案については次回に…
ぼかし屋の染め風景 | 04:43 PM
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2019,03,31, Sunday
大きな大きなバラの帯をお試し中です。
糸目糊を通常より太く引いてみています。
太く勢いのある糸目糊を大きくな花に合わせてみるつもりです。
下絵の上に糊を置いた所と、まだ下絵だけの所と。色が違います。
ゴム糸目の場合は伸子に張らずに生地を机に置いたまま引く方も大勢いらっしゃいますが、私はもともと真糊の出なので、真糊の引き方のままゴム糸目も伸子に張って引いております。
生地の向きを変えやすく、糸目に強弱をつけやすいので。
ぼかし屋の染め風景 | 10:41 PM
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2017,10,04, Wednesday
先だっての「しゃれ帯展」に出品した無線友禅の帯の染め風景を写しました。
「
無線」とは文字通り
「線が無い」友禅染のこと。
これに対するのが
糸目友禅。下絵を糸目糊でなぞってから色挿しするので、
糊の跡が白い糸目状の線となって模様に残るからです。
通常友禅と言えば糸目友禅を指しますが、糸目糊を使わずに水彩画のように描く技法を「無線友禅」と呼ぶのです。糸目状の線が無い仕上がりになるからです。
今回はまず染色用の墨色で下絵を描き、さらに色を染める更紗模様風の染めにしました。
墨下絵の次に地染めをします。
ローズグレーの濃淡2色でぼかすので、先に濃い部分を染め、後から染料を重ねて染めます。
下絵とは別に、ぼかしの目印となる線が
新花(水で消える染色作業用の青色)で描いてあります。この目印に沿って刷毛で染料をぼかしていきます。
一部を赤でぼかし
コントラストを楽しむ色合いにしました。
地染めの次に色挿し。
伸子で張ってありますが、前後に白い布を被せてあるのは汚れや擦れを防ぐためです。
墨の線からはみ出さないようにバラの色を挿していきます。
(もっと更紗風にわざとはみ出させる方法もあります)
仕上がり
実際に締めるとローズグレーの濃淡が目立つ配分になっています。
お太鼓のタレ先はグレーで、お太鼓の下の部分の赤と対比、するとおしゃれだな、と。
お太鼓の中をくぐる手先は濃いグレーになります。
ぼかし屋の染め風景 | 02:59 PM
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