モナコ公国の手描友禅振袖 制作風景 ⑦伏せ糊

 
東京手描友禅の工程のなかで、糸目糊、下絵落とし、地入れときて、いよいよ伏せ糊に突入です。
着物の模様の背景色(着物地、全体の色)を染める前に、模様の部分に糊を覆いかぶせて、染料が入らないようにする(防染)ための作業です。


糊は餅粉と糠粉を練り→蒸し→さらに練り→塩を加え、季節により(湿度により)グリセリンを加えて作ります。かつてはすべて自作でしたが、材料の入手難もあり現在は蒸して練り上げた状態の糊を材料屋さんから購入し、好みで調整して使っています。


伏せ糊をおいている最中。
乾いていないネバネバの糊が模様を覆っています。
このように模様の糸目糊にぴったり沿って糊の置くには道具が必要です。


糊筒 大小2種類 
筒は丈夫な和紙で作られています。口金を付けて希望の太さで糊を絞り出して、糸目糊のフチに沿うように、模様から糊がはみ出さないように糊で模様を伏せて行きます。
伏せたら糊が乾かないうちにトノ粉(木材のおが屑の粉)でカバーしておきます。


上部がトノ粉を振ったところ、下部はまだ糊だけ。
トノ粉で表面をカバーすると糊が丈夫になり、染める時には染料や水分を吸い取って糊を保護してくれます。

トノ粉を振っているところ。このお風呂椅子は伏せ糊専用(^^;)
この作業中は新聞を敷いたり、頻繁に掃除機をかけたりしますが、余分なトノ粉をブラシで掃ったりするので室内はトノ粉でジャリジャリ!


作業中のお盆の上
色々ありますね。糊、濡れた布巾、口金を洗う水とマチ針、霧吹き、糊をなでる小さいヘラなどなど。
糊は水分で硬さが変わり、程よい水分がないと作業がやりにくいので始終霧を吹いて、ボールの中の糊の硬さを同じに保ち、糊が付く相手の生地にも程よい水分を与え続けます。

裏から見ると水分の力で生地と糊が密着しているのが分かります。生地の糸の中まで糊が沁み通らせ、かつ他の部分に糊が沁み出ないように用心々。


作業が済むと、染める時と同じ力でまっすぐに張った状態で乾かします。生地がたるんでいると、たるんだ形で糊が固まり、染める時にまっすぐに張ると糊と生地が剥離する原因になります。


乾いてくると透明感が出て、伏せ糊の下の糸目糊の模様が見えてきます。ざっと乾いたら、この状態で一度裏返して、同じ糊で模様のフチだけを裏打ちします。


地色の染料が入り込まないように堤防を厚くするわけです。
表裏の糊が触っても大丈夫なくらいに乾くといよいよ色が登場する染めへ。
これがお煎餅ほどにパリッと乾いてしまうと、糊が割れて染料が入り込みやすくなってしまいます。
添加したグリセリンがお煎餅化を遅らせてくれます。
歯ごたえのあるゼリー菓子くらいになったら、お煎餅になる前に地色を染めないと!
一番気ぜわしい工程です。


ぼかし屋の染め風景 | 11:02 PM | comments (x) | trackback (x)

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