2017,05,31, Wednesday
手描友禅誂え染めの振袖:英国風にbespoke kimono:ビスポークの着物:米国風にcustommade kimono:カスタムメードの着物……呼び方は色々ありますが。
ぼかし屋は東京手描友禅を誂え染めで承っております。
お客様の様々なご希望に沿うよう工夫していくなかで、こちらが勉強をさせていただく事も多い日々です。
本日ご紹介するのは、黒地に染めた上に鮮やかな菊の花を散らせた個性的な振袖。
黒地散らし菊文様振袖
アニメの物語に登場する少女が着ていた振袖と同じイメージで、というご注文でした。
アニメのクラシックな雰囲気を壊さないように、実際に二十歳のお嬢様が着た時に綺麗に見えるように、お客様と相談しながら柄を起こしました。
ちょっとワイルドな雰囲気の菊。
お客様が「こんな感じの菊が好み」とイラストで説明してくださったので、とても助かりました。
古典的な雰囲気を出すために、菊に合わせた濃い朱色で染めた比翼をつけて
「比翼仕立て」にしました。
三尺の大振袖にも朱色の振りを付けました。
歩いたり袖が揺れたりすると、裾や袖のうしろ側に朱色がのぞき市松人形のようにクラシックです。
比翼仕立ては現代では黒留袖に多いのですが、本来は格式ある礼装で広く行われていました。今でも振袖や色留袖など、ご希望によって比翼をつけ豪華な雰囲気にいたします。
製作風景をご覧ください。
仮絵羽仕立てした状態で下絵を描いていきます。
ぼかし屋では紙青花を愛用しています。
衿、胸、袖にかけて模様がつながります。これを絵羽模様といいます。
サッと描いてある〇 仮絵羽仕立てでお客様に羽織っていただいて調整した時に、ここに花を増やすと決めてつけた印です。
裾も連続した模様に。絵羽とは「縫い目を越えて模様が連続している」こと。
たとえ散らし文様でも、絵羽模様になっていると着用した時に格の高い印象を与えます。おそらく室町期以来日本人の馴染んできた屏風絵や襖絵の影響だと思います。 <br />
糸目糊置きの作業
仮絵羽仕立てを解き、生地は伸子に張ってピンとさせてあります。
糸目糊置きが終了
今回は黒地なので模様の色差しより先に地色の染めを行いました。
模様も地色も一貫制作のぼかし屋ですが、黒染だけは専門の黒染屋さんにお願いします。
黒染め屋さんから戻ってきた生地にフノリ地入れしています。
糊気がないと模様色差しの時に染料が生地に定着しません。染料が糸目糊を超えてはみ出す原因にもなります。
いよいよ色差し。
大きな菊が単調にならないよう、各色とも三種類の濃淡を用意しています。
外に向かって淡くなるよう 花弁ごとに水の力を借りて、薄い色から濃い色へと ぼかし染めしていきます。
途中で 「絵羽模様の左右で色が合っているかどうか」「各色の菊の散り具合はどうか」確認しながら作業を進めます。
最後に生地を並べて再点検。
一番裾に生地を伸子の針から保護するための「端切れ」がまだ付いたままです。
整理屋さんから戻ってきた生地。糸目糊がとれて、
糊の跡が糸目のように白く浮き上がって見えます。(糸目糊の名前の由来)
さらに水洗いで余分な染料や糊成分などを落とし、乾燥。湯のしで生地目、生地幅を整えて、最初に糸から白生地に織られた時と同じ状態に戻りました。色、模様がついているだけが違いです。
左端の縫い目は、衿と衽(おくみ)を剥ぎ合せたところ。
仮絵羽仕立てを解いて染める誂え染めでは、作業中必ず衽の中央、衿との境にこの縫い目があります。
アニメの少女の振袖には金銀は使われていませんでしたが、現実の振袖として少しは金色も欲しいところ。
金をぼかし状に柔らかくあしらいました。
出来上がりの生地はスッキリと光沢が出てとてもきれいです。
染色作業がすべて済んで点検しながら衣桁に掛けて眺めているところ!(^^)!
お客様に上がりを確認いただいて仕立て屋さんへ移動します。
お嫁入りも近いというわけです。
ぼかし屋の作品紹介 | 11:41 PM | comments (x) | trackback (x)