2015,01,30, Friday
文化学園服飾博物館で、日本の染織技術について大変参考になる展覧会が開かれています。「時代と生きる・日本伝統染織技術の継承と発展」2015年2月14日まで。
https://museum.bunka.ac.jp/
伝統の染織というと、古い時代の遺物か、1900年前後に発達した絞り染めや友禅の手仕事の技術の紹介が中心になることがほとんどですが、
今回の展示は現代の機械染めの技術までを系統だてて紹介しているところが貴重です。
江戸の昔からほとんど技術が変わっていない手描友禅は別として、型友禅の方はどんどん機械化されてきたことが、大変分かりやすい説明と作品例の展示、それにビデオで紹介されているのです。
最初に、職人さんが型紙をスッスッとあてて手際よく染料糊を摺り込んでいく手仕事による型友禅の染色作業の様子をビデオで見ることができます。それと比較しやすい展示で、型染めの機械化の過程も紹介されているのです。
一番機械化された型友禅がいわゆるシルクスクリーンによるプリント捺染で、この工程ビデオでは、何層にも連なるローラー型の機械の中をベルトコンベアのように反物が進んでいっておりました。このような様子は初めて見ました。迫力ありました。
手染め屋としては、ちょっとため息が出ますが。
でも型友禅の機械化が進んだからこそ、大正、昭和期に友禅染の着物を多くの人が楽しめるようになったのです。手描友禅と手仕事による型友禅だけではとうてい多くの需要に応えることはできませんから。
最後に現代のデジタルプリント技術も紹介されていました。
貸衣装用の振袖や留袖のインクジェット印刷による色付けの様子をビデオで初めて拝見…。
これは染めではなく、写真のプリントでおなじみの印刷技術で、友禅風の模様や色を布に高速プリントするものです。
真っ白い生地が、インクの吹き出し口を通過する時に、シュッシュッと吹き付けられるインクで、一瞬にしてカラフルな振袖になっていくのです。
模様部分も地色の部分も、金銀までも同時に!
そのスピードといったら!
一反分の色付けが、おそらく10分程度で済むのではないかと思いました。
ほかに絞り染め、紬などの織りの技術、浴衣の注染などについても詳しい展示と作業を紹介するビデオを見ることが出来ます。
受付の方のお話では、この展示を企画なさった学芸員の先生は、伝統技術と現代の技術のつながりについて大変詳しい方だそうです。
着物の染織技術から発達したのが日本の服飾のプリント技術であるとか、明治以降の洋服制作に刺繍など様々な着物の技術が転用されたことは以前から聞いています。
着物というのではなくとも、日本の染織にご興味ある方は是非お立ち寄りになってはいかがでしょうか。
文化学園服飾博物館は渋谷区ですが、新宿駅南口から徒歩10分ほどです。
※館内は撮影禁止で図録の販売がありませんでした。写真紹介できず残念です。
※この展示の説明を参考にして、2013年12/23の当ブログ、江戸東京博物館の企画「幕末の江戸城大奥」展に加筆、補足いたしました。
お知らせ | 10:03 PM | comments (x) | trackback (x)