江戸期の友禅染

 
 この夏、上野の国立博物館展示で、江戸期の友禅染の優品を拝見しました。

 友禅の小袖などで色が退色せず綺麗に残っているものは貴重です。
とても美しかったのでカメラに収めてきました。
(常設展示のほとんどは、有難いことに撮影自由です。何箇所か、写真に手前のガラスの反射が写ってしまいました)



  小袖(萌黄地 菊薄垣水模様)

 このように腰から下にだけ模様をつけるのは1700年代以降の雛型に見られるそうです。



裾の流水は光琳水(こうりんみず)と呼ばれます。秋草文様のお手本のようです。


  小袖(浅葱 縮緬地 垣に菊模様)

やはり腰から下の模様付けで、友禅染で菊に柴垣を描いています。
この図柄は糸目糊で防染した白い垣の強調しています。




腕に覚えの糸目糊職人が糊置きしたのでしょう。こちらは糊のお手本ですね。
1800年代のものだそうです。



帷子(浅葱麻地 流水菖蒲蔦銀杏 花束模様)

1800年代の、今ならお洒落着風の浴衣といったところ。
紋付きです。いったいどのように着付けたのでしょうか。




糊で残した波や岩の白場が冴えています。鹿の子糊(絞りのように見せる模様)も多用し、刺繍もあしらった豪華な友禅です。



 銀杏と菖蒲が並ぶなど、現在の柄行きではあまり考えられないのですが、江戸や明治期の着物を観ると、よく季節が一致せずとも自由に組み合わせて模様にしています。
そういえば桜と楓の取り合わせは、琳派の画家も好み、仁阿弥道八の「桜楓文鉢」などが有名です。
現代人ももっと自由に四季の花の組み合わせを楽しんでもよいかもしれません。

 最後に紹介するのは、友禅の、おそらく振袖が転用された例です。



 手前は「ドギン」 

 ドギンとは、1800年代(琉球 第二尚氏時代)の奄美大島の巫女さんの上着で、このドギンの下にはスカート状の裳を着用したそうです。几帳・檜扇に鉄線を染めた友禅の着物を仕立て替えたものと説明文にありました。



 これほど華やかな柄行きの染めの振袖に金糸の刺繍も。京友禅なのでしょう。大店の娘さんの婚礼振袖だったかもしれません。または新品の染め上がりを購入して巫女さんの衣裳にあてたのかも。
 この着物地はどんな運命をたどって奄美にきて琉球の巫女さんの上着になり、今上野に飾られているのでしょう…

 ドギンと一緒に写っているのは、同時期の奄美の花織の着物。遠目には無地の織物のように見えましたが、近くで見ると透けるほど薄く花菱文で織られています。とても綺麗でした。




展覧会ルポ | 01:19 PM | comments (x) | trackback (x)

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