聚光院の狩野永徳「花鳥図」

 
前回の風神雷神図に続き、京都で観てきた絵について。
 京都は幾度か観光で訪れましたが、今回初めて絵を見るためだけに一人で歩き回ってきました。
第一の目的は大徳寺聚光院の襖絵公開です。
 狩野永徳の原画はふだん京都国立博物館の収蔵となっていますが、聚光院の創建450年の記念に今年度に限り里帰り。本来の場所である聚光院方丈で見ることが出来るのです。



 撮影してよいのはこの門の所だけ。
庭を含め一切不可で手荷物も預けて、建物を傷めないように、とのことでした。
確かに木材は古くカサカサしていて、大勢の人が入ると負担になる感じでした。
よって以下の写真は、絵葉書、手持ちの図録などから。

   
方丈の中央の間の襖絵16面 「花鳥図」狩野永徳 大徳寺聚光院

 聚光院の花鳥図は左右の側面と正面奥の三方あります。

一番有名なのは右の側面、梅の老木を描いたもの。

右の側面、右寄りの一部

正面は松に鶴、山水を描いたもの。

           正面の左半分
襖の向こうは仏間で、見学時は中央襖が開かれていました。


 左の側面一部(右半分) 松や芙蓉に鶴、雁など。
2014年に日本国宝展が開かれた時は、この左側面が展示されました。
ガラス越しながら至近距離で観て、鶴が非常に写実的で驚いたものでした。


 松や岩が豪快な描き方なのに比べ、鶴や小禽が細かい描き方で、特に鶴は若冲を思い出させるほど羽根や足が微細な筆使いだったのを記憶しています。


 左側面の一番左端

 さて、今回は絵の前に立つことはできず、廊下側から室内を覗き込んでの鑑賞でした。
扉が全開にならないので(作品保護のためでしょう)三か所から見学の一行は分かれて覗き込むのです。
 展覧会のガラス越しでしか見たことのない絵の本物がすぐそこに…。

面白い事に気付きました。
国宝展で観た「松に鶴図」(左側面)では、松が全体(襖四面)のうち右に寄り過ぎで、


しかも右手前でこちらに向かって伸びる枝だけが不自然に濃く描かれていると思ったのですが、



 こうしてお座敷で見ると… なるほど、
本当は松の枝は、柱をはさんで正面襖の左端にも対となる濃い枝が伸びているのでした。



 想像ですが、お座敷で正面に向かって座ると、
左隅の松の枝々が自分に向かって伸びてくる感じがするのでは?
永徳が柱と角度を利用して立体感を味わえるようにしたのですね。

部屋全体で構図を見ると、正面に向かって左隅(鶴二羽と松)と、右横(梅の老木)の
二か所に重点
が置かれていたことと分かりました。

 隣室は同じく永徳の「琴棋書画図」

               写真はごく一部です。

 琴棋書画を楽しむ文人たちより、まわりの風景を重視した描き方で、岩と松の山水画のようでした。
琴棋書画図には似つかわしくない言葉使いですが、「ド迫力」を感じました。
写真はごく一部だけ。お伝えできず残念です。

狩野永徳がこの板の間で、出来上がった襖をはめ込んで眺めた時もあったはず…。
450年間よくぞ残っていてくれたものです。

 この特別公開は来年の3月まで。予約など案内のサイト
https://kyotoshunju.com/reservation/?page_id=2

予約時間別にグループ見学で、覗き込むだけ、です。くれぐれも。
でも現場で観た価値はありました!


聚光院さんは通常、精巧な複製襖をはめておられるそうです。
そちらもいつか拝見の機会があれば嬉しいですね。お座敷に座って。

展覧会ルポ | 04:05 PM | comments (x) | trackback (x)

ページのトップへ