着物のお手入れ(アイロンかけ)

 
山田洋二監督の「武士の一分(いちぶん)」をビデオで鑑賞しました。
その中で、主人公の下級武士の妻が、夫の袴に火のしを掛ける場面がありました。つまりアイロン掛けです。鉄の容器に炭火をいれ、容器の底を布にあてることでアイロンがかかる仕掛け。聞いたことはありましたが、実際に使う様子を、映画とはいえ見られたのは貴重です。身分が低いので裃もごく質素な木綿か麻の物。でも大切に扱う妻の姿が印象的でした。
ところで、タンスにしまってあった着物に、思いがけないシワがついたり、持ち歩いてシワを寄せてしまったりする事がありませんか。
正しく畳み直して時間が経てば直ることが多いのですが、どうしても直らない、または急ぐ場合はアイロンをかける事もできます。
ただし、ワイシャツでもかけるように無造作にアイロンを着物地の上においては失敗してしまいます。スチームの浮かしアイロンで、当て布の上から一瞬だけ掛けます。アイロンの重みを着物に掛けてしまうと、着物の上にアイロン跡が付いたり、縫い代の中の返し布部分の僅かな厚みが浮き出てしまったり、危険が沢山あります。重みをかけずに一瞬かけては着物地の様子を確認し、足りなければまた一瞬かける、と繰り返すと大きな失敗は避けられます。
スチームアイロンの方が着物のシワはよく取れますが、着物の絹は水分で縮みます。蒸気をあまり当てると、その部分が縮むことで布の風合いが変わってシミのように見える事もあります。ご注意くださいね。
火のし掛けの時代は、柔い絹物などはどうしていたのでしょうか。あのような鉄の容器では無理だと思いますから、きっと上に座布団など柔いものを置いて時間をかけてシワを伸ばしていたのでしょうね。
そういえば私の高校生時代は、制服の紺のプリーツスカートのプリーツを整えるのに、寝押しをしていました。今の若い方はご存じないかもしれませんが、プリーツを整えた状態で、上にそうっと布団を敷いて寝て、翌朝布団の下から出すとプリーツがきっちりしているというわけです。今?見かけなくなりましたね。皆さんのお宅はいかがですか。技術が向上し、洋服布がシワになりにくくなったためでしょうか。寝押しをする話は、もう聞くことがないように思います。

着物あれこれ | 10:58 PM | comments (x) | trackback (x)

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