紅葉の季節

 
 各地で紅葉の季節となりました。
 一年で一番好きな季節なのですが、追い立てられるような気持ちになる季節でもあります。
街やデパートの飾りにクリスマスディスプレイが登場すると、「まだ待って!お願いだから!」と思います。着物関係でも「年内に」というお話が出てまいります。もう一歳年齢が上乗せされる時期でもありまして……。

 手描き友禅の着物屋としては色々見て歩きたいところですが、なかなか思うように時間がとれません。昨年と今年は幸運にも紅葉の名所を見ごろの時期に訪ねる機会に恵まれました。

  日光の紅葉と竜頭の滝



 このような大自然の中で観る紅葉はもちろん素晴らしいのですが、私は建物の中から、あるいは建物を背景に「庭」として観る紅葉もとても美しいと思います。

  京都 青蓮院の庭



 青蓮院で何といっても一番印象的だったのは御簾越しの紅葉。つたない写真で残念です。



 ささやかな紅葉が御簾越しに観ることで、とても引き立つものですね。
 平安貴族の世界では男性は女性に直接会うことはできず、いつも御簾か几帳越しだったので男性の恋心がくすぐられたのだとか、さもありなん。

 紅葉の中でも、緑から黄色や赤に色が移っていく途中の木を見るのが好きです。手描き友禅の模様表現にぴったりなのです。手描きの友禅染めでは、模様の葉一つ一つを片歯刷毛というごく小さな刷毛でぼかして染めることができるので、移ろう色の表現が得意なのです。





 もちろん赤や黄にすっかり染まったところも良いですが。



 紅葉(もみじ)は昔から日本の代表的な文様です。着物の模様としてだけでなくご存じのように日常の様々な器や布にもみじが描かれています。
 ちょっと身の回りを見渡して紅葉の食器を並べてみました。



 左からもみじ散らしのぐい呑み、もみじを写し取って焼いたティーカップ、流水紅葉の器。
ティーカップは焼き物でありながら、まるで和紙に本物の紅葉葉を漉き込んだようなのです。どんな技術で作るのでしょうか。
 同じ紅葉でもそれぞれ形の出し方が違って楽しいです。

 ぼかし屋の紅葉模様の出し方は比較的リアルな形のもみじ葉です。
(ホームページにて紹介している東京手描友禅の訪問着)





 手描友禅の模様としては、紅葉の中央を濃く色挿しする場合が多いのですが、ぼかし染めを利用して葉の中央を薄く白抜きして葉の尖った部分を強調するようにしました。ふっくりした雰囲気の葉になりました。水の流れを漂うもみじのイメージです。
 表現方法は友禅模様の柄行きによって様々です。

 最後はわが砦、ぼかし屋ベランダから撮影した紅葉です。



 団地のささやかな緑ですが、お気に入りの眺めです。
 紅葉の時期が少しでも長く続きますように!

季節の便り | 12:50 AM | comments (x) | trackback (x)

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