東京手描友禅 模様の参考に

 
東京手描友禅 模様の参考に

 手描き友禅の模様作りの勉強にするのだからという名目を立てまして、年末に台北へ旅行しました。故宮博物院の見学と夜市を食べ歩きするのが目的でした。
 故宮博物院はさすがに素晴らしい展示でした。特に紀元前数千年の昔に作られた青銅器の数々が見事でした。
 中国といえば龍の文様です。
 青銅器にはもちろん多くの龍があしらわれていましたが、驚いたのは5000年前に作られた龍の頭部を文様化した玉石の飾りが変色もなく白く輝いていたことです。これほど昔に想像上の動物を高度にデザインする力があったのですね。敬服、敬服。玉石を磨いて造形する技術も忘れてはいけませんが。
写真で紹介したいところですが、全所蔵品の図録は高価で手が出ず、購入した抜粋版は玉器の掲載が少なく残念です。

 中国の文様でもう一つ重要なのが牡丹の花です。
 友禅染の模様として使われる頻度は一番でしょう。故宮でも絵画や工芸品に様々なデザインで登場していました。染物屋としてはこれを観なければ!
 図録から紹介します。



  明代の漆塗り花瓶(一部)

 日本でもおなじみの形に彫られた牡丹。花自体は左右対称ですが、葉は余白を埋めて自由に伸びています。



      清代の七宝焼き
 小さな可愛い壺で嗅ぎタバコ入れだそうです。牡丹の模様の物4点。左下の作例は日本でもよく見られる写実的な牡丹ですが、他3点は幾何学模様化されています。葉を唐草文にして左右対称、放射線状に広がる意匠で面白いですね。



 こちらも七宝焼きの器です。
 黄金色を背景に正面から左右対称で底から蓋まで色違いで模様が連続しています。模様としてはアラビアの王様に似つかわしい雰囲気ですね。ただ椀の形や蓋物であるところは、紛れもなく東アジア、私たち近辺の文化で親しみを感じます。



     清代の牡丹図
 長らく日本のお手本になってきた見慣れた牡丹図ですが、大変写実的で白い花は背を向けていたり、クタッとした葉があったり。美化せずに描いているあたりは日本画ではあまり見ないように思います。

 次は着物の模様とは無関係ですが、あまりに素晴らしかったので。



 ご老人が孫の手で背中を描き「う~、気持ちいいのう」と笑っている感じ。膝には子犬がじゃれています。
 清代の作。黄楊の木を彫った羅漢様で、なんと全長わずか2cmです!!!!
 展示室では作品の前にルーペがかざしてあり、覗いて拝見する羅漢様の笑顔がなんと気持ちよさそうなこと。それにもろ肌脱いだ上半身の骨格や生き生きとした筋肉の表現が優れていて後ろにそらした右腕などは本物のようでした。
 制作者の名前は残っていませんが、この作、ミケランジェロに勝っていると思います!

 長い歴史の中国なので観るものもたくさん。
最初は意外に面白かった青銅器文明を力を入れて見学。
玉器、彫り物、漆と続き、絵画を頑張り、書は足を引きずり、最後にまた唐以前に時代が戻って三彩など焼き物が始まった時には「中国にはまだこれがあったんだ~でも~もうダメだ」 
 それでも桃が一面が描かれた素晴らしく大きな景徳鎮の茶壺だけは、意地で何度も眺め、
「なぜ日本では桃の実は絵画の題材にならなかったのだろう。桃太郎のイメージが強過ぎるからかしら」などと思いつつ、故宮探訪を終えました。
丸一日かけましたが本当に全部は見られませんでした。
 今年は日本で故宮博物院展が開かれるそうです。

最後に飛行機の中からみた富士山の写真をご覧ください。
思いがけず綺麗に写せました。静岡上空、太平洋側からの富士です。


展覧会ルポ | 12:42 PM | comments (x) | trackback (x)

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