2014,07,11, Friday
東京手描友禅の振袖 「貝桶文様振袖」ぼかし屋の作品例として、貝桶や牡丹の模様の振袖を紹介いたします。
① 貝桶文様振袖 衣桁にかけたところ。
お嬢様とお母様、お二人のお話を伺って図案を構成いたしました。
「何か古典柄を」というご希望に合わせ、婚礼道具の貝桶を中心に牡丹や菊などを彩りにした柄行きです。地色はお好きなサーモンピンクの濃淡と淡いクリーム色のぼかし染めです。
② 模様の一部を拡大したところ。
生地の地紋(生地自体に織り出されている模様)は振袖ならではの華やかな牡丹唐草です。貝桶表面の模様に地紋と同じ形の牡丹唐草を用いました。このように地紋を利用して友禅模様を染めだすことを「地紋起こし」と言います。
せっかくの誂え染め。何かに因んだ模様であったり、いわれがあったりすると楽しいものです。
「大人っぽい雰囲気」がご希望だったので模様は全体に落ち着いた色合いです。
③ 貝桶文様振袖 姉様畳みにしたところ。
着物を紹介する時は写真①のように衣桁に掛けて背中側から写すのが一般的ですが、本来は帯に隠れるはずの背中部分が写真の中心になってしまい、着用時のイメージを掴みにくいという欠点があります。
ぼかし屋ではお客様にご覧いただく時に、写真③のように姉様畳みをよく利用しております。実際に着用した時の着物の柄行きや色取りが分かりやすいためです。
ぼかしの染め分けを利用して、上半身の上前はサーモンピンク、下前(右胸側)は淡いクリーム色に染めました。片身替わりの着物のような効果で、着用時に立体感が出ます。
この振袖のように裾へ行くほど地色が濃くなる地染めを「裾濃」(すそご)と言います。たとえば気軽な付け下げなどの場合でも、地色が裾濃になっていると立ち姿が映えます。
④ 上半身の拡大
左の前側(上前)には衿から袖先まで絵羽で模様が連続しています。それに右袖の後ろ側も身頃から袖先まで絵羽模様になっていますので、お召しになると、「お花がたくさん」です。
全体の色のバランスを良くするため、袖の地色にも濃いサーモンピンクやクリーム色が使いました。落ち着いた色合いの模様に、ぼかし染めで三色に染め分けた地色の効果で、明るい華やかさのある振袖となりました。
創作一点物ですから、ご注文下さったお客様だけの色、柄行きです。 このページにはお客様のご了解をいただいて掲載しております。
この振袖の制作工程もいずれ紹介したいと思います。
ぼかし屋の作品紹介 | 11:28 PM | comments (x) | trackback (x)