明治・大正の振袖

 
 若い女性や子供の着る振袖のことで少々驚いたことがありました。
 先日、三井記念美術館で開催された「三井家のおひなさま」展を見ました。展示のお雛様が素敵であったのはさることながら、興味を引かれたのはお雛様の持ち主である女性たちの写真でした。
 特に一枚、10代後半から4,5歳の幼児までずらりと並んだ振袖姿の写真がありました。 当時の振袖は五つ紋付き。刺繍や友禅染めの模様が入るのは袖の下半分と裾まわりだけ。上半身に柄はありません。ですから上半身だけの写真ですと振袖か留袖か色無地かは見分けがつきません。その写真は全身像だったので柄行きがよく見えました。
 驚いた点というのは、一番幼い女の子まで紋付きの振袖だったことです。当時の紋は今より大きく、小さな体ですと着丈、袖丈もとても短いですから、袖などは模様の入るスキはあるのだろうかと思います。どんな柄おきにすることやら、と考えてしまいましたが、現代ではこのような紋付き振袖の誂えはまずあり得ないのでした。子供の着物はほとんど全身に模様があってもよい位ですから。 上半身に模様をおかずに紋をおくということは可愛らしさより格式が重んじられたのですね。
 当主夫妻の結婚写真も複数展示されていました。女性が袿姿(袿袴)の写真もいくつか。髪をおすべらかしに結い、それこそお雛様のようでした。
 展示品の雛道具の中に、唐庇車(御所車)がありました。かなり本物に忠実に作られていて、本物を見る機会のない現代人としては、図案作成の有難い参考になりました。図録、もちろん買いました。
 色々な日本画や屏風絵などを見ると勉強になりますので、展覧会にはなるべく足を運ぶようにしています。それに美術館はいるだけで気分転換になる所が多いですね。
展覧会ルポ | 11:26 PM | comments (x) | trackback (x)

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