着物が褸(よれ)撚れ(よれ)?

 
 梅雨が明け、とんでもない暑さがやってきました。ぼかし屋所在地は東京都の南部。埋め立て地で海に近いため、北部や内陸部よりいくらか凌ぎやすいハズですが、暑い熱い!!
 そこで今日は、以前見た涼しげな織物を紹介いたします。
 今年一月の東京国立博物館に常設展示されていた18世紀の能衣装で、
ご覧いただきたいのは、右の白い衣装



水浅葱褸地水衣(みずあさぎ・よれじ・みずころも)

素敵にわざとヨレヨレっと織られているのです。

解説文は以下の通り。

褸(よれ)とは、経糸(たていと)に生糸(精練されていない無撚の絹糸)、緯糸(よこいと)に麻糸を用いて平織にし、経糸の間隔を粗くして緯糸の打ち込みをまばらにすることによって、よろけたような織り目をつけた織物である。能装束において、庶民の労働着として使用する水衣に好まれた。

なるほど!生地をアップいたしますと、



柔らかく涼しそうな生地ですね。
麻糸だけで織ると独特のゴワゴワ感がある織物になるところを、半分は絹糸で織って柔らかくして、材質の違いから絹糸が麻糸の間をフワフワと踊っているような感じに織られていました。

 大辞林によれば、(要約)
水衣→ すいい、みずごろも。
・水仕事などをする時に着る衣。
・能装束の一種。緯(よこ)糸を太くするかまたは緩く織って波打たせた絹の上衣。シテが用いれば漁夫・樵(きこり)などの粗衣に,ワキが用いれば僧衣となる。

 能衣装においては庶民の労働着に使われたとのこと。
日本の夏は昔から湿度が高かったわけですから、働く庶民は少しでも涼しいように、同じ平織でも糸に遊びを持たせて織り、肌に密着しないように工夫したのでしょうか。もっとも絹が労働着に使われたとは思えません。実際は麻か木綿で褸地を織っていたのかもしれません。

 難しい漢字が並びましたが、(よれ)はボロを表わす襤褸(らんる)と同じ文字ですし、形状から見ても、この織り方が「ヨレヨレ」の語源に違いないと思います。
残念ながら、手元の事典や本、ネット検索やら色々あたっても「語源です」と言い切ってくれる文章には出会いませんでした。
 どなたか詳しい方がいらっしゃいましたら、
お問い合せフォームからお知らせくださいますか。

着物あれこれ | 04:02 PM | comments (x) | trackback (x)

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