2015,07,05, Sunday
東京手描友禅の染め帯・若草色と藤色東京手描き友禅の一点物を創作する時は、常日頃やってみたいと思っていた柄行きと色合いを試してみることになります。
「こんな染めをやってみたい」というヒントは様々なところから頂戴します。
もちろん琳派の絵師たちの作品など、著名な美術品からヒントを得る事は多いのですが、日常生活の中から得ることもよくあります。
今回は何気なく見ていたテレビの画面から得たヒントで制作した染め帯をご紹介します。
こちらがその映像。NHK大河ドラマ「伊達政宗」の再放送でした。
真田広之さん演じる徳川家の御曹司が、思うようにならない人生の成り行きに思い悩むシーンです。
暗い室内の向こうに明るい若草色が広がり、小袖の藤色がよく映えていました。
緑系と紫系の取り合わせは、元々あまり好まなかったのですが、この映像は印象に残り、頭の中の「いつかやってみたい引出し」に保管しておりました。
今回機会を得て実現したのが、こちら…
染め工程から何点か写真を紹介します。
引き染め。
濃淡二色をそれぞれ二度に分けてぼかし染め。このような裏からの写真ですと、ぼかしの足をわざと雲取風に形作っているのが分かりやすいと思います。
色挿し
若草色に対して藤色を活かすのが目的ですが、藤色を中心に花の色を複数足して華やかさと出します。
糸目友禅で蘭を描いています。葉の一部を無線友禅でも描き添えて、模様の雰囲気を雲取風の地染めと釣り合わせました。
無線友禅を重ね描きすると、重なり目で色が変化するのを利用して、ちょっと面白く…。
このようにクローズアップすると生地の織り目がよく見えますね。金通しの紋織です。
それぞれ濃淡があるので、使う色はかなり多くなります。
染めていて自分で綺麗だなと楽しむことが出来ました。
悩む真田広之さんの場面は、映像を作るディレクターさんが、「ここはこんな光と色の具合でいきたい」と考えて撮影なさったはず。俳優さんがどんな色の小袖を着たら美しいか、そこも考えたのかもしれません。
さらにそこから頂いたヒントで色取りを考えたわけです。
出来上がりは, 悩みとは無縁な明るい華やかな雰囲気になりました。
これからも、江戸の昔から伝わる伝統的な模様、柄行きを尊重しつつ、
今ならでは、ぼかし屋ならではの東京手描き友禅を試行錯誤していきたいと思います。
色々なところからヒントを得なくては!
ぼかし屋の作品紹介 | 01:06 PM | comments (x) | trackback (x)