森口華弘氏の下絵

 
人間国宝、森口華弘氏は、昭和を代表する著名な京友禅作家でいらしたので、亡くなられてからも作品はテレビや展覧会で紹介されることがよくあります。ですが、今回テレビ放送で、めったに見られない同氏の「下絵」を拝見できました。
BS日テレで毎週金曜20時から放送される「ぶらぶら美術館」の11月13日放送分
「琳派400年の特集」
でのことです。
下絵は公開されることが少ないので、テレビ映像を拝借してご紹介いたします。
 京都国立近代美術館でこの秋に開かれた「RIMPA IMAGE 琳派イメージ展」を番組が取り上げていて、その中の京友禅の技のコーナーに同氏の作品が展示されていました。



 左側の青い作品「流水」について
子息の森口邦彦さんが登場して技法の説明などをなさいました。
蒔糊※を生地にふっては水色を引き染めするという作業を四回も繰り返したことで、この深みのある水の様子を表現したそうです。




 その際、森口邦彦さんがご持参の華弘氏の下絵画帳を披露してくださったのです。


 友禅染め全盛だった昭和3,40年代の達人の下絵ですから、
録画を何度も再生して観ました。


水の流れというテーマで何通りもの作品をお試しになっていたのですね。
細い筆が三本連結された「連環筆(れんかんひつ)」という筆をご愛用で、とても速くサササーっと描いておられたそうです。


言うまでもないことながら、素晴らしい勢いと構成ですね!

 ここで言う下絵とは、着物の柄行きの「雛型」です。実物大の紙下絵もおこしたものと想像しますが、どうだったのでしょう。仮絵羽の生地に直接お描きになったのでしょうか。他の出演者に質問してほしいものでしたが…。

 琳派400年を記念して、今年は京都各所で名作の展示、公開がありました。
京都まで行けない私にとって、この番組は有難い内容でした。

 同じくこの放送で紹介された作品の中に大変印象的な屏風がありました。


    冬木偉紗夫「いざない(風と雷の神)」平成2年

 宗達の風神雷神からイメージをふくらませたそうです。
創作するアーティストって凄い!と、ささやかな模様屋としては尊敬を禁じ得ません。
漆塗りの屏風で、このように塗り分けるのには高度な技術が必要だそうです。


※蒔糊(まきのり)の技法→ 餅粉と米ぬかで作った糊を薄く延ばして乾燥させた後、細かく砕いて粒状の糊を作る。フノリで濡らせた生地の上に糊の粒を降らせてから乾かす。生地に糊粒が固着したところへ刷毛で染料を引き染めすると、糊粒の跡が防染されて点々とした模様として浮き上がる。森口華弘氏はその第一人者で、手描友禅と蒔糊を併用した作風で有名。
展覧会ルポ | 08:01 PM | comments (x) | trackback (x)

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