男性の着物で桜の小袖

 
 関東の桜は残すところ山桜が少々となりました。先日風に吹かれて桜吹雪が舞う中、改めて桜は一瞬の花で諸行無常という言葉が似合うなどと考えていて、 少し前に見ていたTVの時代劇「薄桜記」を思い出しました。
 昨年、同時期のNHK大河ドラマ「平清盛」の時代考証が凝っていて、正し過ぎて登場人物の身なりが汚く?評判が今一つだった(私はファンでしたが)のに対し、こちらは正調TVドラマらしく江戸庶民も小奇麗な身なりで登場。これはこれで楽しめました。
 主演俳優さんが旗本姿、浪人姿とも見栄えがしました。不本意な出来事から浪人の身となった後の姿は粋でした。木綿物の小袖もパリッとした着こなしでした。
ご覧になった方、お気づきでしたが。終盤に羽織袴姿で登場したとき、羽織の下の小袖は紺地に細かい桜の模様でした。いよいよ悲劇的なクライマックスが近いと予告するような気づかいを感じました。
 主人公の妻役の女優さんが武家の女性らしい美しさでした。プライベートでは小紋に織帯。侍女として勤務中は地味な小紋に黒繻子の帯。小紋は裾長な着付けでお引きずりに。帯はきっぱり羽を張らせた文庫結び。同じ絹物の小紋であっても、彼女の母親役は抑えた色合い、一方で彼女の女主人である大名家の女性は豪華な柄の小紋でした。
 楽しめるとは言いつつも、このお話しは主人公夫婦の愛情を描き二人の悲しい死で終わります。山本周五郎の原作から、悲劇と知っているからこそ、より切ない美しさでした。綺麗な時代劇でした。
 そろそろ桜はすべて終わりツツジや藤の季節に移ります。暑い寒いは苦手ですが、四季のある国に生まれてよかったと思います。

着物あれこれ | 12:29 AM | comments (x) | trackback (x)

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