2018,04,20, Friday
サントリー美術館ですばらしい器を見たので紹介いたします。終わってしまった展覧会で恐縮ですが…
「寛永の雅」サントリー美術館
このパンフレットに写っている孔を開けた白い鉢。
会場に入るなりドキッとする存在感を放っていました。
白釉 円孔 透鉢 野々村仁清
展覧会のテーマである江戸寛永期の美術に沿う現代の前衛アーテイストの作品かと思いきや、野々村仁清の作品でした。
鉢に穴をあしらう造作は江戸前期の乾山や道八にもあるようで「透かし鉢」と呼ぶそうです。でもそれらはあくまでも描いた絵を効果的に生かすための空間として孔を開けたもの。
ところがこの鉢はご覧の通りランダムにあけた孔そのものが主人公。
どうしてこれほどの創作を江戸前期という何百年も前に成し得たのでしょう。
オドロキです。
会場で見た時は、孔は片抜きではなく、竹ヘラ状の何かで手でくり抜いたように思われましたが、図録の解説では型抜きしているそうです。
仁清と言えば思い浮かぶ作品は、派手な色絵や、色使いと幾何学的な面白さ
色絵 芥子文 茶壺 色絵 鱗波文 茶碗
または渋く
銹絵 富士山文 茶碗 白濁釉 象嵌 桜文茶碗
それから私が仁清を好きになったキッカケの作品
色絵 武蔵野文 茶碗
といったところでしょうか。
このような作品を作っていた人が、どういうツナガリでこの白い鉢を「作ろう!」と思い至るのでしょうか。
現代のように溢れる映像や製品から刺激を受けることは出来ない、はるか昔に。
本日取り上げた仁清のうち茶碗と鉢はみな縁の部分は真円でなく不均等にズレています。上から見ても横から見ても。
特にこの白い透かし鉢は縁もシルエットも孔の開き方、配置もすべて不均衡。
それで美しいのですから、天才はいるものだと思うばかりです。
帰宅してから手持ちの図録を確認しましたら、2014年に出光美術館で開かれた
「仁清・乾山と京の工芸」展の展示作から仁清の透かし鉢を見つけました。
白釉 菊花 七宝文 透彫 木瓜型鉢
当時は友禅染の模様の参考としてしか仁清をみていなかったので、
色絵物以外はスルー。記憶に残っていませんでした。今回再認識です。
展覧会ルポ | 05:17 PM | comments (x) | trackback (x)