2019,05,15, Wednesday
日本の手描友禅の模様の参考にイギリスの模様の展覧会を観てまいりました。
ウィリアムモリスとイギリスの壁紙展 そごう美術館(6/2まで)
このチラシの模様を私が見た時につい思ってしまうのは
「よくある感じの模様だね」です。
でも、こういう感じの模様は古来あったのではなく、最初に本格的に壁紙や布の模様として製造したウィリアム・モリス(1834~1932)の業績を紹介する展示です。
とても魅力的な模様が図録の後カバーに印刷されています。
菊をモチーフにした構成。牡丹も入っていて日本の影響を受けているそうです。色合いを変えていくつものパターンで壁紙を制作。
古くから絵画や金銀の細工で壁を飾れた王侯貴族は別として、市民が自宅を飾り始めたのはそれほど古くないそうです。産業革命の結果、製造力も市民の購買力も上がって19世紀を迎え、そういう時期に画家でもあったウィリアム・モリスが、生活を取り巻く物品にも美しさを、という考え方で多くの作品を発表したわけです。
この菊の壁紙で飾った部屋の再現コーナーもありました。
(再現コーナーは撮影可)
カーテン、テーブルクロス、クッションカバーそして壁紙…
現在の生活にある様々な布類に複雑にパターンを組み合わせた模様を染めたり織り出したりしています。
図録の中から紹介
ノーベル賞の選考委員会は「その業績の元になった研究、その研究者」を探すそうです。それと同じことを感じました。
いわゆる唐草文様は大昔からありましたから、葉がモチーフとして左右対称など平面に並ぶ模様なら珍しくなかったのですが、それをパターンの一部として複雑に組み合わせて構成したのはモリスが最初。その図案は見ていてとても勉強になります。
こちらはミュージアムショップで買ったクリアファイルの模様。
とても大胆ですが、自然な組み合わせになっています。
葉をパターン化した壁紙。
本当に「よくある感じ」ですが、商品として売られ続ける中で、様々な他の商品のデザインのもととなっていったために「よくある感じ」に見えるわけです。
ヒナギクのパターン。
ふと気づいたのですが、ぼかし屋のファクスが置かれている台のレース。
このようなパターン模様を最初に本格大量生産販売したモリス。その影響のもと、今の身の回りの様々な商品のデザインがあるのですね。
少々脱線しますが、野々村仁清。
写実的で鮮やかな花の描写は、室町期以降、屏風絵や掛け軸には珍しくありませんでしたが、最初に壺に焼き付けたのは彼。
この壺を見るとつい「よくある感じ」を抱いてしまいますが、江戸初期当時とても画期的な試みと技術だったのでした。
もっと有名な例が元祖アニメと言われる鎌倉期の鳥獣戯画。
今のアニメと同じ、とつい思ってしまいがちです。
鳥獣戯画の方が大々先輩なのを忘れないようにしなければ。
作者は確定していませんが、ノーベル賞の価値がありますよね。
そういうモノが無い環境で、そういうモノがを創り出した方々のすごさを、そういうモノが溢れている今の私たちはウッカリ忘れがちかもしれないと、見慣れた感のあるモリスの壁紙を見ながら思いました。
最後に会場の再現コーナーの写真で、モリスの模様を現代にアレンジした部屋をご覧ください。
すてきです。
展覧会ルポ | 01:21 AM | comments (x) | trackback (x)