2019,06,02, Sunday
往年の大ヒットドラマ「おしん」をNHK BSで再放送中。
当時は見ていないので、この機会に毎朝見ております。
戦前の小作農の貧しさや商家の奉公人の過酷な労働、労働でなく奉公だから限りなくタダ働きに近い事等々が描かれていますが、当時の日常風景も随所に見られます。
昨日の放送で面白い場面がありました!(^^)!
おしんが着物を洗い張りするのです。女主人の絹の小紋。
まず解く。台所の立ち仕事の合間に。
隣家とのすき間のような庭で、洗った生地に刷毛で糊付けしているところ。
おしんが持っているのは引き染め用の五寸刷毛。
今、東京手描友禅では良い刷毛は京都の製造業者の物を取り寄せているのですが、かつては東京でも製造販売されていて誰でも手軽に買えたのでしょうね。
糊付けしてピンとさせた生地を縫い直す。今度は夜なべ仕事で。
解くのと違い、まとまった時間座り込まないと仕立ては出来ないからでしょう。
着物は基本的に解いて生地の状態に戻さないと洗えません。
解く、生地を縫い合わせ反物状に戻す。
それを洗い乾かす。
そのままではヘナヘナなので生地に糊をつけて張りを持たせる。
張り手に生地の端と端を挟んで引っ張っておき、刷毛で液状の糊をつけていくのです。そして湯のし屋さんに出して生地巾を整えた後で仕立て直す、以上が工程です。
昔は家庭でも洗い張りや簡単な染めをしたと聞きますが、ドラマとはいえ映像で見ると実感がわきました。
このような引き染めに含まれる作業は馴染み深いはずですが…
この映像でみて初めて気付いた事が…
今は当然のように使われているプラスチック製のバケツがこの時代には無かったこと!
おしんは何度も腰を屈めて足元の木製たらいに刷毛をつっこみ糊を含ませ直しています。
プラバケツは軽くて、取っ手が付いていていますから、糊なり染料なりを入れて左手でぶら下げながら右手で刷毛を動かせるのです。左手は取っ手を持ちつつ生地も押さえられます。
下に置いた盥までいちいちかがむなんて大変(>_<)
想像しただけで腰が痛くなりそうです。
作業しながら生地に沿って移動するのに、盥では付いてきてくれません…
仮に木製の桶に麻縄で取っ手をつけたとしても…重い!
プラバケツが無いというだけで、現代の引き染めとは似て非なる労働です。
それにしても、おしんが刷毛を動かす姿はバッチリです。
確かにこの位かがみ、足も踏ん張り、手も大きく動かすのです。
実際にしている所を観察するか、教わるかしなければ出来ない動作でした。
かまどの火と刷毛の音だけが聞こえる無音に近いシーン。とてもきれいでした。
このブログのために画像をトリミングしていて気付いたのですが
画面左、かまどの上方にかかっている赤い団扇。
まったく同じ物がぼかし屋にもあります!
ウン十年前に渋谷の画材屋さんで買い、揮発地入れなどに便利に使い続けているものです。
いかつい大きさで大風量です。
団扇と一緒に写っているのは伸子針。
張り手で縦方向に張った生地を、横方向にもピンとさせるための竹針です。
染料がついて汚れたものを洗って干しているところでした。
最後にぼかし屋の糊張り風景。
フノリ地入れと呼びます。
引き染め専業の業者さんを除けば、今も細長く隙間のような所でする作業です。
友禅染は人の多い街中の伝統工芸なので、たいてい空間事情は厳しく、狭くチマチマした場所が舞台です。もちろんぼかし屋も団地の一室(^^;
着物あれこれ | 07:33 PM | comments (x) | trackback (x)