フェルメールの絵

 
フェルメールはオランダが貿易国として一番華やかだった時代、17世紀の画家です。日本で言えば徳川家光のころ。長崎に出島ができて鎖国の日本がヨーロッパの国として唯一通商を続けた時期です。同時期のレンブラントほどの知名度はありませんが、一番有名な「真珠の耳飾の少女」(青いターバンの少女)ならご存じの方も多いのでは?
実はぼかし屋イチ推しの絵がフェルメールのこの絵。(写真は展覧会チラシと絵葉書から)


窓辺で手紙を読む女  所蔵:ドレスデン国立古典絵画館

昔々まだ高校生だった時に都内の展覧会に展示され惚れ込んで以来です。ドレスデンは遠く、再度見られるとは思っていませんでしたが、何と絵の方が上野に来てくれたのです。


「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」
4/3まで。上野の東京都美術館にて。


この展覧会チラシは工夫されていて


このように表紙の絵の右半分が入れ替わるように印刷されていて、


入れ替えると絵の右上にある絵、壁にかかったキューピッドの絵が消えるのです。女性の後ろはモスグリーンの薄明るい色合いで無地。(それはそれで実に美しい空間でしたが)
長い間、フェルメールの作品として親しまれてきたのはこの状態の方。ですから嬉しい配慮です。キューピッドは絵を修復した結果、現れたのです。

誰が何故キューピッドを消したかは諸説あり分からないそうです。
ぼかし屋の勝手な想像では→ 持ち主が厳格なキリスト教徒だった時期に「愛のキューピッド」を嫌って消した、です(^^;)

展覧会の解説を要約しますと、無地の壁にはもともとキューピッドが描かれていることは以前からレントゲン撮影で分かっていました。


でもそれはフェルメール自身によって塗り潰されたと考えられてきました。であれば無地の壁はフェルメールの制作の一部です。
ところが最新の技術によって絵具の経過年数が分かり、塗りつぶしの絵具はフェルメールの没後何十年も経ってから塗られたことが分かったそうなのです。すると壁にはキューピッドがいることが彼の意思。
そこでキューピッドを覆っていた絵具を少しずつ取り除き、フェルメールが描いた状態へ修復したのだそうです。



汚れも落とした結果、キューピッドが現れただけでなく、窓からの光はより明るく、女性の姿も背景の壁も明るく浮かび上がったのでした。


東京都美術館に飾られた絵はモスグリーンの色調の中に青、赤、緑、黄が落ち着いた色合いで溶け込み、光の中に手紙を読む女性がいました。女性の服のシワ、後れ毛に光が反射して深みを出していました。


キューピッドの絵が飾られた室内の描写は手紙がラブレターであることを暗示しているそうです。フェルメールの作品の中では大型で、近くで鑑賞できたのでオリジナルならではの細やかな筆使いと色合いを見ることができます。
まだ会期がありますがコロナ感染防止のため入場は予約制です。これからお出かけの方は上野公園の桜が見られそうですね。


展覧会ルポ | 11:08 PM | comments (x) | trackback (x)

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