東京手描友禅の引き染め道具

 
東京手描友禅の引き染め道具
 東京手描友禅が京都や金沢といった友禅の大産地と違うところは、デザインから色差し、引き染めといった友禅工程を一貫して行う製作者が多いということです。製品の販路が全国に広がっていた大産地と違い、江戸は地産地消で小規模な業界だったため分業が進まなかったという説があります。大名屋敷や侍階級が顧客で創作一点物が主流だったからという説も聞いたことがあります。
 ぼかし屋でもデザイン、色差しだけでなく引き染め(主にぼかし染め)も行っています。このブログとホームページで引き染めの写真を多く掲載しておりますが、ご覧になった方から 「長い反物を横に張っている道具はどんな物?」という質問がありました。
 ごもっともな疑問です。普通は道具類は縁の下の力持ちですから写真には写りません。
 そこで本日は引き染めで使う道具類を紹介いたします。



     張り手 (布を挟む二本の木の間には釘のような歯があります)
 
 反物の端に当て布を縫い付け、そこに張り手の針を咬ませて縄で柱と柱の間に反物をピンと張ります。たるむと糊や染料が均一に伸びないので水平に力一杯縄を引きます。

 実際に生地をはったところです。



 一本の生地を張るのに両端で二本の張り手が必要です。
 誂え染めでは仮絵羽仕立てした白い着物に下絵を描いてから解いて染めます。ぼかし屋では身ごろ2本、衽、袖と分けて染めます。ただし振袖にように袖が長いものや、柄行きによっては七本まで分けて染めております。当然ながら張り手は総動員です。







 これは地入れ(生地にフノリを含ませて地染の準備をする)で使う一式です。糊専用の刷毛、フノリを入れた バケツ、霧吹き、伸子針。手前のビニールに入っているのは煮解く前にフノリです。
このバケツはガーデニング用として売っていたものですが、ヘリに刷毛が置ける平らな部分があり便利です。また見かけたら買い足したいと思っています。
 地染の時はこのバケツに染料が入ります。複数の色で染め分ける時はバケツがいくつも並び、色を間違えないように神経を使います。ペンキ類はパッと見ただけで色の違いが分かりますが、バケツに入った状態の染料は色の違いが分かりにくいのです。



伸子針は地染をすると染料で汚れます。しなって曲がっています。
色抜き剤で煮て染料を落とします。すると



このように綺麗に色が取れて竹らしくまっすぐになります。また新たな染めに使えるわけです。さすがに竹、長年使ってもすっきり元に戻ってくれます。
ちなみに…、伸子針は何度でも色落しして使えるのに比べ、刷毛はそうはいきません。
熱湯で洗うだけで色抜き剤などは使えませんので、赤系、青系などなど、それぞれ薄い系、濃い系と何本も揃えております。その一部をホームページに掲載しております。染め工程の案内には張り手を使った地染めの写真も掲載しておりますので是非ご覧下さい。

 最後に2月中旬の東京の大雪の際に撮影したベランダからの写真を紹介します。
夜、未明まで吹雪のように降り続いた雪をフラッシュをたいて撮影したところ、なかなか幻想的な写真になりました。



 雪は普段の東京の汚れを隠してくれるようですが各地に大きな被害ももたらし、綺麗だと喜んでばかりはいられない状況だったのは皆様ご存じの通りです。ぼかし屋でも各種やり取りに日常的に利用している宅急便が大幅に遅れ、日頃の「翌日配達」がいかに有難いものか実感いたしました。


東京手描友禅の道具・作業 | 04:48 PM | comments (x) | trackback (x)

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