2014,03,27, Thursday
東京手描き友禅、模様の参考に芸大コレクション展を観ました。春の訪れとともに観たい展覧会がいくつか始まりました。昨年秋のシーズンは是非と思う展覧会を見逃しているので、この春は時間を作って出かけたいと思っています。
東京芸術大学の美術館では定期的に所蔵品を展示してくれています。
今回目指した展示は尾形光琳の「槇楓図屏風」。
同時に特別展示として「観音の里の祈りとくらし展」が開かれていました。
ポスターの上半分が所蔵品展示の「槇楓図」、下半分は観音様の特別展の方の案内です。
琵琶湖のほとり、昔の近江の国、長浜には村々の寺に数多くの観音立像が伝えられているそうです。織田、豊臣時代には地中に埋められたりして繰り返された戦乱から守られた観音様も多いとか。ポスターの千手観音(日吉神社蔵 重要文化剤)は火災から逃れ川に沈められた際に手を失くしてしまわれたそうです。その後は現在に至るまで地域の手で宗派を超えて大切に守られてきたという説明もありました。
帰宅してから「槇楓図屏風」を再度みるため、久しぶりに日本美術全集「琳派」を引っ張り出してみました。
そして今になって気づいて驚いたことが!
画質のことです。
美術全集は35年程前の出版です。新刊は高価過ぎるので興味ある刊だけでも、と古本屋を巡り中古で一冊ずつ買い揃えたものです。当時最高の技術で印刷されたはずですが…、
今見ると何とも平板で色も暗く冴えないのです。
下は全集のページを撮影したものです。
それに対して今回の展覧会の案内チラシを拡大しますと、
明らかに!昔の美術全集より、チラシでさえ今のデジタル印刷技術の方が、画質が良いのです。
今まであまり気付きませんでしたが、今回実物を観た直後の目で見ると…
全集のページをめくった瞬間に
「え!何?この画質は。何も写ってない!」と思ってしまいました。
これがデジタルとアナログの差でしょうか。ハイビジョンテレビを見慣れると以前のVHSビデオは観る気がしなくなりますが、同じ事のようです。
美術全集の方は背景の金箔があまり写らず絵具の色も平板です。チラシの方は金箔が隅々まで明るく写り、特に葉の緑の陰影が細かくきれいです。こんなに差があるのですね!
と、光琳とは無関係の事を先に書いてしまいましたが、美術全集のよいところは体系的に作品について教えてくれること。
全集によれば、この「槇楓図屏風」は俵屋宗達も同じ題材を描いているのですね。
槇楓図 伝・俵屋宗達 山種美術館蔵
そっくりなので年代的には当然宗達が先に制作。宗達に私淑していた光琳がそれを参考に後から描いたわけです。光琳は宗達の画風を学ぶために多くの模写を行ったとそうです。
意外なことに光琳の方が渋い感じがします。槇の木の足元に宗達は桔梗女郎花といった秋草を華やかに描いているのに対し光琳は竜胆や桔梗を主体にあっさり描いています。枝や葉も光琳の方がより無駄を省きスッキリしている感じなのは宗達の作を推敲して描いたからでしょうか。
背景は金箔で張りつくされていますが、秋草桔梗があることで木々が宙に浮かず、根本の地面の存在を感じられます。
この「槇楓図屏風」はつくづく観ると愉快な感じがします。槇の木が直立と湾曲したものが混在し、さらに「この辺りに赤い色があったらいいな」と思う辺りにまず楓の葉をもってきて、そこに楓の木、枝を置いた感じ。特に光琳の方は「画面の下方に青色があると引き締まるから青のために桔梗と竜胆を増やそう」と光琳が思ったような気が…。 当方の勝手な想像ですが。
宗達に同じ図柄があることなどを見比べられるのは全集ならではです。
出版不況下、充実した美術全集の新たな発行は難しいでしょう。画質が不満でも今あるものを大切にしなくては。苦労して揃えたことですし!もっともいつか本ではなくデジタル映像のディスク版美術全集は発行されるかもしれませんね。
展覧会ルポ | 01:17 PM | comments (x) | trackback (x)