2014,04,09, Wednesday
東京手描友禅 模様の参考に― 絵羽模様着物の模様が、縫い目を境に途切れたりせずに、縫い目を越えて連続していることを
「絵羽模様」といいます。ぼかし屋の作品からひとつ例を挙げますと、
物語模様の訪問着
衽(おくみ)と前身頃、さらに後身頃の間の縫い目を越えて模様が連続しています。
友禅の中でも東京手描き友禅は一点物の誂えが得意なので、お客様のサイズに合わせて白生地をいったん仮縫い(仮絵羽仕立て)してから下絵を描きますから、このように模様を連続させることができます。
型染友禅の場合も、模様がつながるように型を配置するのは手間がかかることです。
さて!
先日NHKで再放送された京都迎賓館を紹介する番組で大変珍しい絵羽模様が紹介されていました。まずはこの写真をご覧ください。
何だかお分かりになりますか。
木目が絵羽模様になった障子の枠です。
一本の木から切り出した一枚板の木目を生かして切り分け、障子の枠に使ったのです。
驚きます!このような凝った作りは他で見たことがありません。
この障子のあるお座敷の様子です。
長く大きな座卓と座椅子の向こう、縁の廊下との間に障子があり、その枠の木目が絵羽模様になるよう気を使って制作されたわけです。障子を開け放った時に木目の美しさが絵羽で楽しめるように制作されたのです。なんという手間と技術でしょうか。
東京赤坂に昔からあるフランス式の迎賓館に対して、純和風の伝統を生かした接待をするために作られたのが京都迎賓館だそうです。外国からの賓客に出されるお料理も京都の有名料亭が回り持ちで引き受ける和食だとか。それにふさわしい建築であるために細かい所までこだわって設計され各分野の和風伝統技術が集められたとか。見学の機会はないでしょうからこの番組は貴重です。
建物については他にも様々なこだわりが紹介されていましたが、ここでは省略します。
ただ一点ご紹介したいのは番組のナビゲーターとして登場なさった女優さんの着物姿が素晴らしかったことです。
どなたもご存じのお二方が日本建築の専門家から説明を受けているところです。
番組の主役は迎賓館の美であってご自分たちではないこと、ただし最高の日本建築という場にふさわしい脇役でありたいと意識なさってお誂えになった着物だと思われます。
色無地と見間違うほどですが、お二人をよく見るとご年齢に合わせてお母様は裾に、お嬢様の方は胸元と背にも大変控え目に模様が配置され、格調高い雰囲気になっていました。模様は刺繍か染めか判然としませんが、古典的な綺麗な色合いの付け下げですね! 着物に詳しいお洒落な方ならでのお二人のプライドを感じる身仕舞いで、この番組の趣旨に大変良く合っておられると思いました。
感服、感服。
東京手描き友禅 模様のお話 | 04:23 PM | comments (x) | trackback (x)