東京手描き友禅の道具・物差し

 
東京手描き友禅の道具・物差し

 手描き友禅、特に東京手描友禅に多い創作一点物を染める場合、お客様の体型に合わせた丈、幅に仮絵羽仕立てを行うので寸法取りはとても大切です。着物は絵画ではありませんから、実際には模様の中を縫い線が通ることになります。模様を綺麗に見せるため縫い線の位置も考慮して図案を考えます。
 いずれにせよ模様を考えて下絵が完成するまで物差しは手放せません。



          愛用の物差し
  下から①メートル、②メートルと鯨尺(くじらじゃく)兼用
      ③~⑤鯨尺 大中小、⑥曲尺(かねじゃく)

 もちろん一番出番が多いのは③、④、⑤の鯨尺です。
②の兼用タイプも重宝しています。⑥の曲尺は本来は建築関係で使われるそうですが、地方によっては曲尺で寸法をおっしゃる方もあり用意しています。
①の竹製の30㎝物差しは我が家にかなり古くから存在していて購入時期は不明です。4,50年前のものではないかと思います。
この写真をご覧ください。



     上は古い竹製、下は今の竹製の物差し

 物差しの断面を比べると古い30㎝物差しの断面は端がすっと伸びているのがお分かりになるでしょうか。指で物差しの端をすーっと触るとかなり鋭利に竹をカットしているのが分かります。これなら設計図など誤差の許されない線も正確に引くことが出来そうです。
 比べて今時商品の下の物差しは竹の端が厚さ数ミリあるのです。ペンをあてる角度によって線にズレが出やすい形状です。着物の制作には差支えないので気にせず使っておりますが、竹の物差しとしての価値は昔の物の方が高いわけです。作る人の腕も違うと思いますが、おそらく材料の竹も違うのではないでしょうか。固い竹でなければ端を鋭く仕上げることは出来ないでしょう。

 ご参考までに鯨尺と曲尺を並べてみました。



      上が曲尺、下が鯨尺です。同じ1寸でもかなり違います。

 最後の写真は便利に使っている巻尺型の鯨尺です。


 お客様の着物のサイズを決定するのに、お手持ちの着物のサイズをお客様自身で測っていただきますが、鯨尺はお持ちでない場合が多いのでこの巻尺をお送りして使っていただくのです。物差しと違って巻尺は封筒に入れて簡単に郵送できるので便利です。
東京手描友禅の道具・作業 | 10:55 PM | comments (x) | trackback (x)

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