東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
昨年同様、「しゃれ帯展」が開催されます。






今年のテーマが「ゲーム」です.。
前回ブログでご紹介した染め帯「なでしこジャパン」を展示予定です。
他に先輩方の楽しい染め帯がたくさん展示されます。
是非お立ち寄りください。
(ぼかし屋宮崎は10/1土曜日に会場当番で詰めております)

お知らせ | 09:16 PM | comments (x) | trackback (x)
 帯用に厚く織られた生地を使って、染め帯を制作中です。


  下絵。生地に模様を置いたところ。
 写真上方から前柄、お太鼓柄、手先の順で下絵が描かれています。

 手描き友禅の染め帯の一般的な柄行きです。
今回はお太鼓の下にのぞく手先にも少し柄を入れました。




 図柄は王朝風の女の子二人が蹴鞠をしているところです。
衵(あこめ、少女用の袿)をおはしょりして、切り袴に沓を履いています。
本当は、年齢に関わらず蹴鞠は男性だけの楽しみ事でしたが、
ま、そこは現代の模様なので。

 パレットのように色々な色がついている「試し布」が写っています。
柄に合わせて作った染料が希望の色のなったかどうか、絹地で確かめるための小切れです。
伸子針でバッテン張りしてピンとさせて使います。




 模様伸子で張った生地の上下に、何やらハンカチが見えます。お弁当を包むような大判のもの。作業をしない部分を巻き取って汚れないように保護しているのです。
作業机近辺は始終拭き掃除して、染料粉などが生地に付かないように注意しています。




 この図案は顔があるので胡粉を使います。
すぐに使えるようになっている友禅用の胡粉ですが、念のため乳鉢で摺って使います。




 色挿しが済みました。向こう下が、梅枝の前柄です。

 ぼかし屋には久しぶりの白地の帯になります。
将来汚れが目立ってきたら、模様部分だけ伏せ糊で防染して地染めができます。
元が白いとどんな色にでも染められて、誂えが二度楽しめるので、特に器物や人物が模様の時は白地、または薄い色目の帯はお勧めです。

 あとは蒸し、洗い、湯のし屋さんへ進み、戻ってきたら金彩で仕上げ作業の予定です。
お顔も描かなくちゃ。(^^)/


9月25日 追記
 帯の仕上げが出来上がりました。
作業風景を写しました。




蹴鞠をする二人の女の子。源氏物語風に言えば女童(めわらわ)



今風に言うならサッカー女子なので、画題は「なでしこジャパン」としました。
「しゃれ帯展」に展示予定です。

ぼかし屋の作品紹介 | 05:39 PM | comments (x) | trackback (x)
 この夏、上野の国立博物館展示で、江戸期の友禅染の優品を拝見しました。

 友禅の小袖などで色が退色せず綺麗に残っているものは貴重です。
とても美しかったのでカメラに収めてきました。
(常設展示のほとんどは、有難いことに撮影自由です。何箇所か、写真に手前のガラスの反射が写ってしまいました)



  小袖(萌黄地 菊薄垣水模様)

 このように腰から下にだけ模様をつけるのは1700年代以降の雛型に見られるそうです。



裾の流水は光琳水(こうりんみず)と呼ばれます。秋草文様のお手本のようです。


  小袖(浅葱 縮緬地 垣に菊模様)

やはり腰から下の模様付けで、友禅染で菊に柴垣を描いています。
この図柄は糸目糊で防染した白い垣の強調しています。




腕に覚えの糸目糊職人が糊置きしたのでしょう。こちらは糊のお手本ですね。
1800年代のものだそうです。



帷子(浅葱麻地 流水菖蒲蔦銀杏 花束模様)

1800年代の、今ならお洒落着風の浴衣といったところ。
紋付きです。いったいどのように着付けたのでしょうか。




糊で残した波や岩の白場が冴えています。鹿の子糊(絞りのように見せる模様)も多用し、刺繍もあしらった豪華な友禅です。



 銀杏と菖蒲が並ぶなど、現在の柄行きではあまり考えられないのですが、江戸や明治期の着物を観ると、よく季節が一致せずとも自由に組み合わせて模様にしています。
そういえば桜と楓の取り合わせは、琳派の画家も好み、仁阿弥道八の「桜楓文鉢」などが有名です。
現代人ももっと自由に四季の花の組み合わせを楽しんでもよいかもしれません。

 最後に紹介するのは、友禅の、おそらく振袖が転用された例です。



 手前は「ドギン」 

 ドギンとは、1800年代(琉球 第二尚氏時代)の奄美大島の巫女さんの上着で、このドギンの下にはスカート状の裳を着用したそうです。几帳・檜扇に鉄線を染めた友禅の着物を仕立て替えたものと説明文にありました。



 これほど華やかな柄行きの染めの振袖に金糸の刺繍も。京友禅なのでしょう。大店の娘さんの婚礼振袖だったかもしれません。または新品の染め上がりを購入して巫女さんの衣裳にあてたのかも。
 この着物地はどんな運命をたどって奄美にきて琉球の巫女さんの上着になり、今上野に飾られているのでしょう…

 ドギンと一緒に写っているのは、同時期の奄美の花織の着物。遠目には無地の織物のように見えましたが、近くで見ると透けるほど薄く花菱文で織られています。とても綺麗でした。




展覧会ルポ | 01:19 PM | comments (x) | trackback (x)
 8月13日の朝日新聞紙面に、ブリュッセルで開かれた花の祭典「フラワーカーペット」が紹介されていました。本物の花を敷き詰めて作る巨大なカーペットで,
街の広場を覆うイベントで、世界中から多くの観光客が訪れると聞いています。
日本とベルギーの外交樹立150周年を記念して、今年のテーマは日本




 日本をイメージするにも富士山とか歌舞伎とか色々あると思いますが、カーペットであるためか、嬉しいことに「和の文様」でデザインされているのです。
しかも地紋のある生地に模様をあしらう友禅や刺繍の着物を彷彿とさせるので、嬉しくなってしまいブログで紹介することにしました。
 拡大しますと、




 外枠を紺地の七宝文様で取り巻き、海老茶の枠に七宝文と二重菱を配置し、内側はクリーム色の地に一面の地紋が籠目と青海波。その上に桜、竹、松、波を描き、中央に鯉や鶴、菊も見えます。



ほぼすべて日本の伝統文様です。すてきですね~~!

 伝統文様とは、「このように描いたら松とする」というような、一定の引き継がれた約束事の上にデザインされた文様の事と考えています。扇形の半円を繰り返して波とする青海波はその代表例。着物や食器、家具などに日本人が描いて、大陸文化の影響を受けながら練り上げてきた文様です。
 はるかベルギーの古い町並みの広場に、このような花のカーペットを作り上げてくださった方々に感謝、感謝です。
 このイベントは2年に一度開かれて、その時の記念すべき事柄をテーマにしているそうです。ちなみに前回2014年はトルコからの移民受け入れ50周年を記念してトルコの図柄だったそうです。
 ブリュッセル市のHPから前回の写真を2枚拝借。



 制作中の画像もありました。大勢の手で花を敷き詰めていくのですね。



 だいぶ以前にテレビで、このイベント用の花を栽培する農家が取り上げられていました。希望に沿う色の花を必要な分に足りるように、一家総出で栽培していましたっけ。

 ブリュッセルで行われるこれほどのイベントなのですから、日本がテーマになったと、もっとメディアが取り上げるべきではないかと思いますが、この時期テレビはオリンピック報道一色でした。残念…


東京手描き友禅 模様のお話 | 10:03 PM | comments (x) | trackback (x)
手描の友禅染の制作に欠かせない材料は色々。
その中に下絵を生地に描く時に使う専用の青い染料、青花(アオバナ)があります。
 先月NHKテレビで、生産農家が青花を作るところが紹介されていました。
普通はまず見る機会のない映像が流れ、
長らく使ってきた青花がどのように生まれるのか、初めて知りました。
 たいへん貴重なので映像をお借りして、
私自身の勉強を兼ね、このブログに内容をまとめたいと思います。
   ※画像はNHKBS ニッポンの里山「あおばなの咲く田んぼ」滋賀県草津市 より



 青花(あおばな)はツユクサの仲間、オオボウシバナから作られるそうです。


ツユクサを品種改良して作り出された大きめの花で、直径は6㎝ほどもあるそうです。


 摘み取り作業
 夏の午前中に(午後にはしおれてしまうので)
雌蕊を残し花弁だけを摘み取るそうです。


 それを練り、何度も布でギュッと漉し、何も添加せずに花100%の青花汁を作り、


 和紙に塗り付けます。


 液体のまま時間が経つと青色が変色するので、
和紙に含ませ乾燥した状態にしないと保全がきかないそうです。



 和紙を乾かして、さらに青花汁を塗る作業を繰り返して、


 和紙の重さから3倍程度になるまで青花を含ませて出来上がるそうです。


 友禅染をする者が手にする青花は、材料屋さんの店頭で、海苔のような形で一枚ずつ売られているもので、青花紙とも呼びます。
 商品として材料屋さんの店頭に来るまで、これほど大変な作業を農家の方がして下さっているとは知りませんでした。着物需要の低下に伴い、青花の生産が減って、扱う材料屋さんも減り、価格も高くなっています。ですが、このご苦労を知ったからには今後お値段に不満は言いますまい!
 貴重な材料ですから、買ったらすぐ冷蔵庫で保管します。色の劣化や、カビを防ぐためです。添加物ゼロなら当然だったのですね。





 青花紙は使う分だけ切り取り、水を含ませ液状にして下絵描きに使います。


誂え染めの場合、白い絹地に青で描かれた下絵をお客様に見ていただくことになります。 下絵は「新花」という化学反応を利用したものでも描くことが出来ますが、黒っぽい色でしかも退色しやすくお客様にご覧いただくには、青花の方が向いています。


  糸目糊が済んだ生地を水に浸し、下絵の青花を落としているところ。
青花は水ではかなく流れ去ってしまいます。(だから下絵用に使われているのですが)

  こんな作業をしてくれる農家はもう僅かだそうです。
番組で紹介されていたのは中村重男さん


 技術を絶やさないために地元の高校生が学んでくれているそうです。


滋賀県草津市の青花農家の皆様、手描き友禅のためにどうぞこれからも青花紙の生産をよろしくお願い申し上げます。無くなったら困ります~~。<m(__)m>
<br />

青花は田んぼのすぐ近く、こんな田園風営の中で生産されるそうです。
稲穂の間にサギが見えますよ。背丈からダイサギでしょうか。
サギがいるということはドジョウなど餌となる生き物がたくさんいる田んぼだということですね。
本当に美しい映像を見せていただきました。



東京手描友禅の道具・作業 | 11:35 PM | comments (x) | trackback (x)
手描友禅の染め作業、「裁ち切り」

 東京手描友禅は基本的に、一人の製作者が下絵から染め上がりまでの染色作業を一貫して行います。
ぼかし屋も一貫制作です。ということは…
友禅染のデザインや染色作業、その準備や後始末も自分でする、ということ。
前回ブログでご紹介した伸子針(しんしばり)の色抜きは後始末の方でした。

 よくお客様から 「一本の白い反物がどうやって着物になるの」 というご質問をいただきますので、このブログでは機会をみつけて少しずつ工程をご覧にいれています。

 今日は制作の始めの一歩、準備の一コマ、「裁ち切り」の作業風景をご紹介します。
絹の白生地をサイズに合わせて裁ち切って仮絵羽仕立ての準備をするものです。




 長~い白生地は3丈物(裾回しも含む場合は4丈物)



 尺差し「鯨尺」で測りながら、袖2枚、見頃2枚、衽に切り分けます。
測った通りに袖、見頃と切り離しますが、反物に最初の鋏を入れるのは今もドキドキします。

新花(後で色が消える)で印をうち、肩山や剣先位置など今後の作業に必要なところには糸印をつけておきます。
 表裏が分かり難い生地の時は「こちらが表側」という糸印もつけます。印の仕方に決まりはなく、製作者それぞれが自分に分かるように決めた印をずっと使っています。



生地を切り離す時は、布を織った時の縦糸、横糸から逸れないように真っすぐ切るのですが、それが案外難しいのです。

一番の難所が、衽と衿の部分を縦に長く延々と切り続けるところ。



新花で印をつけてあるものの、集中しないと縦糸から大きく脱線して切り目が曲がってしまうので、切り始めたら終点に向かってひたすら切り続けます。




切り離した生地を並べました。
           左から衿、衽、見頃2本、袖2枚です。


何だか少し着物に近づきましたね。


白生地の反物は始めの位置に生地のメーカー(機屋さん)や産地の印字があります。
 この部分が左袖後ろにくるように裁ち切ります。
仕立ての時には切り離されてしまうのですが、生地が染め上がって、剥ぎ合せ縫いして反物状に戻した時に必要なのです。
反物の表札とでもいいましょうか。
一本の白生地から染め加工した品ですよ、と伝える役目も果たします。

 裁ち切りが済むと次は友禅の初期工程へ。
仮絵羽仕立てや下絵描きが始まります。

さぁ~て!

東京手描友禅の道具・作業 | 11:20 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅の作業、伸子針(しんしばり)の色抜き

 今日は溜め込んでしまった伸子針の色抜き作業をしました。

 模様の色挿しや、地色を引き染めする時に、生地をピンと張るのに使う道具が伸子針



 細い竹の両端に針がついていて生地の耳部分に刺すので、引き染めをすると染料が竹の先端について汚れてしまいます。

 そのまま次の染めに使うと竹から生地へ染料が移ってしまうので、伸子針を脱色するのが「色抜き」です。



容器にハイドロコンクという抜き剤をいれて煮沸します。抜けたら針の上下を入れ替えて全体をきれいにします。





引き染めをすると、竹製の伸子針が弓なりに曲がるのですが、煮沸のおかげで真っすぐに戻ります。
長年何度でも染めと抜きを繰り返して使い続けています。



仕上げに抜き剤の成分を洗い落とします。
タップリの水にさらに流水も流して完全に。抜き剤が残ってしまって、次回の染めで生地に抜き剤が移ったら大変です!



水を切り、なるべく通気よいように、三日ほど乾かしてから収納します。
針がもれなく付いているので、ついついひっかき傷を作りながらの作業です。

東京手描友禅の道具・作業 | 09:57 PM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅による雨中紫陽花の表現

 季節の移ろいは速いもので、あちこちで見事な紫陽花を見かけるようになりました。
紫陽花はたいへん好きなモチーフで、染めるたび色々試しております。




こちらはそぼ降る雨の中の紫陽花の模様。

背景が明るいとそぐわないし、あまり暗いと嵐のようになってしまうし……
ほどほどの曇天になるよう色合いを考えて彩色しました。
染料による雨粒に加え、銀彩で仕上げに雨を増やしています。

近所で撮影した紫陽花。色の移ろいが見事です。




 お天道様が、藤色からブルーまでの染料を作り、三輪とも違う配分で彩色したかのようです。真似したいものです。

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 先日東京地方の梅雨入り宣言がありました。
絹地の保管には厳しい時期となりました。

ぼかし屋の作品紹介 | 08:36 PM | comments (x) | trackback (x)
拙宅、ぼかし屋所在地は古い団地の一角。

古いことの数少ないメリットは敷地に緑が多いこと。
ここ数日続いた五月晴れで満開となった薔薇を撮影しました。



ほんの狭い一角なのですが、ご近所有志の方々の丹精のおかげで見事に咲いています。
私は観るだけ…
日差しはもう真夏のような強さです。

光をたくさん入れて撮影してみました。



燦々とした光と薔薇の向こうに白亜のお屋敷が、、、、
いえ、単なる団地ですが。(^-^;

木々に囲まれ住み心地のよい団地です。

季節の便り | 10:13 PM | comments (x) | trackback (x)
東京国立博物館の所蔵品展示で 古い友禅染の作例をいくつか観ることができました。

 特に驚いたのがこちら。






  産着  納戸綸子地 宝尽くし模様

 伊達家の殿様、伊達吉村の所用だそうです。かの伊達政宗の曾孫で1680年生まれ。若様の産着がお古とは思えませんから、もしかすると制作時期がはっきりしている一番古い友禅染ではないでしょうか。
 身分の高い武士階級やお公家さんの着衣の模様は、江戸小紋等を別にして、主に織りか刺繍だったのですが、子供用には、洗えて肌触りの柔らかい友禅染めも使われたのですね。


 紐の先まで宝尽くしが散っています。贅沢な地紋に五つ紋付きでした。
江戸時代前期としてはかなり細かい友禅染だと思います。
 
この展示は着物のコーナーではなく、武士の鎧や小袖、武具を飾るコーナーにあり、隣は幼児用の可愛い陣羽織でした。

江戸時代、町人階級は贅沢な織りや刺繍を制限されていたので、友禅染はおもに町方の富裕層のファッションニーズに応える形で発達しました。



振袖 薄紅平絹地 薊菊模様
この振袖は1700年代の江戸中期のもの。

解説に「浅葱色に染めた州浜形の内に、簡略化された薊と菊を糊置きし、墨色や藍色で地味に彩色した、いわゆる光琳模様」とあります。
ここで言う「糊置き」とは、細く絞り出した糊(糸目糊)で下絵をなぞり描きした、という意味です。糸目糊で防染してから染料で彩色すると糊のあとが白く糸目のように残るのが友禅染。この作品は糸目がくっきりを白く浮き上がって見えていていますね。


どんな商家のお嬢さんが着たのでしょう。



 間着(あいぎ) 紅綸子地 牡丹青海波網模様

 こちらも1700年代のもの。間着は打掛の下に着る小袖だそうです。
模様はすべて鹿の子絞り。 たいへん贅沢ですが、上にさらに打掛を羽織ったのですね。

 江戸時代の友禅の話題ついでに、最後にNHKテレビの映像から。
前回の朝の連続ドラマは、最初のころの舞台は幕末期で、
京大阪の大商人の娘さんが主人公でした。
どんなにお金持ちでも町方ですから、織や刺繍は制限されており、着物は主に染めの模様なのです。
ドラマ撮影用とはいえ、毎回素晴らしい友禅染衣装が見られました。



 主人公の袂に偶然鉄砲が飛び込むというシーン。

着物はもちろんですが、裏側の比翼も細かい友禅。帯も染めの模様です。
衣装を楽しめる番組でした。

東京手描き友禅 模様のお話 | 11:17 PM | comments (x) | trackback (x)

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