東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
 手描き友禅の柄行き、模様を作図する時には色々な参考資料も使います。他の工芸品の文様や柄行き、季節の花々、琳派や狩野派の障屏画の写真などが主なところです。ですから作業部屋の本棚には本がいっぱい。
 先日そこに新たな戦力が加わりました。
 「日本の意匠 全16巻」 です。
 5年前に他界なさった師匠、伝統工芸士の早坂優先生の奥様が、長く工房で使われていた一揃いを下さったのです。
何度も何度もお借りして図案作りの参考にした本なので、大変有難いことです。

 貴重な本ですから、ずらりと並べて記念写真。




 手前右の表紙の図柄をご覧ください。
今年の染芸展の友禅体験にお越し下さった方は、あらっとお思いになるのでは?
(御所)車に流水の図です。友禅体験で使われた車の模様のモトとなる意匠です。



片輪車蒔絵螺鈿手箱 

国宝で平安時代の塗り物です。
牛車の車輪は乾燥すると割れてしまうので、川に車輪を浸しておく風景は平安時代の都の風物だったはず、とのこと。

 この全集は1985年、京都書院の発行。これだけの全集を組むことが出来たのは世の中が好景気で、伝統工芸産業全体がまだまだ元気だった時代だからでしょう。
今改めて見ても内容は充実しています。
 たとえば、桜の巻のページには



 刀の鍔の細かい細工や、陶磁器の模様まで写真が載っています。



陶磁器の模様もたくさん掲載されています。

 まさしく着物の模様の参考書!!

 動物の巻には面白い打掛が!


お猿さんの柄です。


 打掛ですから身分の高い人が着たはず。
でもこんな愉快な柄行きを楽しんだのですね。驚きます。

 紅葉の巻には仁阿弥道八の「桜楓文鉢」も載っています。
                  (右ページは桜の花筏文様の水指し)



 この作品の特徴である内側ビッシリの文様がよく写っています。


普通の美術書ではこんな角度から写したりせず、もっと写真の構図として格好良く、器の横から写すはず。おそらくこの本が伝統工芸に携わる人向けの編集であることから、
上から覗き込むような目線で写してくれたのでしょう。
「ほら、こんな図案ですよ」と。

同じく紅葉の巻には何度も見た懐かしい図が。


檜垣に楓散らし文様の能衣装 (江戸時代、岡山美術館所蔵)


この紅葉の色合いが自由で楽しく、
実際にはない色取りなのに模様になると不思議にリアル…
この図には結構影響を受けていると自覚しています。



ぼかし屋の訪問着の作例から。
織や刺繍の能衣装と違い、友禅の方は柔らかい印象です。
でも、要点は同じ(つもり)です。

貴重な全集!師匠ご夫妻に感謝<m(__)m>
大切に、しっかり利用していきたいと思います。


東京手描き友禅 模様のお話 | 12:22 PM | comments (x) | trackback (x)
 着物からのれんや風呂敷、本の装丁まで実用品を型絵染めで模様付けした
現代の染色家、芹沢銈介の展覧会に行ってきました。

 「芹沢銈介のいろは」
※ 東京国立近代美術館工芸館にて。5/8まで。

(写真は展覧会チラシと3/23朝日新聞記事より)

 昨年、金子量重氏から寄贈された作品を中心にした展示だそうです。前回ご紹介した横河民輔氏と同様、お陰で貴重な美術に接することができ、お志に感謝!です。


  文字文地 白麻 部屋着

 この展示で面白かったのは芹沢銈介の「文字文」もじもん。
よく「唐草文様」「樹下獅子文」などと言うのと同じで、
「文字を文様化、模様化した」ものです。

 
 1968年のカレンダー

いずれも70代の作品で、驚くほどポップで大胆!形も色合いも楽しく、こういうデザインが身の回りにあるとステキな生活感が味わえますね。

 作品はほとんど型染の実用品でもあるので、今でも買えるし使っているし、です。
ぼかし屋の場合、仕事柄で風呂敷を多用します。
所持品から芹沢銈介デザインを写してみました。


 たとう紙ごと着物を包める大型サイズの風呂敷。便利にしています。仮絵羽や下絵描きなどの作業を中断する時に、この風呂敷で作業机ごと覆って埃防ぎにも使っています。


  上は反物を包んだ綱の模様の風呂敷。とても古く色が退色しています。
  下は小物包み。野菜を模様化した図柄です。

 風呂敷と言えば…

 白生地反物は丈夫な紙で包まれていますが、持ち歩く時は、さらに風呂敷で包みますと、巻物の状態の生地をしっかり守ってくれます。そして湿気から守るため風呂敷ごとビニールで守って運びます。
 昔このように包んだ反物を生地屋さんに返しに行くとき、(数本お借りして、誂えご注文のお客様に生地をお選びいただき、残りを返却)カバンに縦に入れて運び、叱られたことがありました。
 わずかでも生地がよれるような事をしてはいけない、売り物にならなくなる、と。しっかり包み、なおかつ横に運ばなければならないのでした。
そのくらい丁寧に扱えとの教え。もちろんすぐに反物包みを横にしたまま運べる鞄を買ったのでした。
 以後、生地を運ぶたび、思い出しております。

 この工芸館は竹橋と半蔵門の間くらいにあります。

 昔の近衛師団司令部だったところで、建築遺産として貴重な建物だそうです。

 千鳥ヶ淵にも近いですよ。

4/4スマホで撮影 暗くなりきらない都心の夜空を背景に。

 二年ぶりの夜桜見物でしたが、以前と照明方法が変わっていました。
以前は花見客のいるお堀手前が明るく、今年はお堀向こう側が明るく照らされていました。
近くの桜は薄明り、遠くの桜がはっきり明るく。
 どちらがよいか意見が分かれるでしょう。今年の方が情緒はあると思います。
でも頭上に見上げる桜は…ちょっと暗くて寂しかった気がします。
展覧会ルポ | 12:08 PM | comments (x) | trackback (x)
 久しぶりに上野の展覧会へ行きました。
目的の「ボッティチェリ展」を見た後、国立博物館の常設展示へ立ち寄り、東洋館で展示中の綺麗なお皿を観てきました。


 琺瑯彩 梅樹文皿  雍正帝の時代、1730年頃 中国景徳鎮窯
 小振りですが、白い飾り皿に繊細な紅白梅が描かれていて、「これぞ磁器!」というほどの硬質感の輝く白さでした。梅の表現がとても細かく、極めて細い筆で丹念に絵付けした様子です。

 この展示に立ち寄るきっかけになったのは1/31東京新聞の記事です。



この記事のほとんどの部分は、皿の寄贈者、横川民輔氏のことが書かれています。
興味深いので、主旨抜粋で記事を紹介します。

 作品の解説プレートのほとんどに「横河民輔氏寄贈」とある。
横河氏は大正期に日本橋三越本店を設計するなどした建築家で、現在の横河グループを創設した実業家でもあり、さらに中国陶磁器の世界的コレクターの顔も持っていた。
 1932年から7回にわたり、東京国立博物館に約1100点を寄贈した。同館が所蔵する中国陶磁器約2500点のほぼ半数に上る。
 横河氏の買い付けは、清朝の衰退期に美術品が中国からへ流出し、英国はじめ欧米列強が「爆買い」する時期だった。しかも最初から公のため、つまり博物館での展示を考えての収集だった。日本で個人がこれほど寄贈するケースはまれだという。しかも、本人は目立つことを好まなかった。


 横河電機の社名は知っていても、このような創業者がいらしたとは知りませんでした。
同じ上野の西洋美術館が「松方コレクション」の名前を残して展示しているように、国立博物館も「横河コレクション」などと銘打って顕彰してもよいのでは、と思ったことでした。それぞれの作品名の小さなプレートには寄贈者名が書いてはあるのですが。

 本館の展示も季節柄で、桜の文様が多く飾られていました。

  仁阿弥道八 「色絵 桜樹図 透かし鉢」




 この作は、どの角度から見ても鉢の外側の枝と内側からのぞく枝がつながって見えることで有名です。雰囲気も材質も柔らかい日本の陶器です。


  打掛 「紅綸子地 御簾薬玉模様」(18世紀)

 端午の節句に厄除けのために御簾に飾る花薬玉を描いているそうです。
端午の節句ですが、背景は一面の桜。
女性の身を飾る打掛だからでしょうか。


お洒落な意匠ですね!図案の参考にしようかな!(^^)!

 同じ日、上野公園入口の河津桜。すでにほぼ満開でした。

展覧会ルポ | 11:47 PM | comments (x) | trackback (x)
 昨日無事に今年の染芸展が終了しました。
 浅草の会場に移って初めての開催。場所柄がよかったのか、
三日間のご来場者は約1700人!(‘◇’) 
昨年のほぼ倍増で、諸先輩方もビックリでした。
 当然、友禅染の体験コーナーは大盛況
開催中は本当に多くのお客様とお話ができ、忙しくとも楽しい時間を過ごすことができました。
皆様どうもありがとうございました。





 会場で出品作を撮影しました。
 模様化した菊の花々から生まれた鳳凰が遊ぶイメージで作図しました。
身頃のブルーと同系統色の濃淡で裾濃(すそご)に染めました。
ぼかし線をずらして引き染めを二度繰り返すことで、
たいへん※足の長いぼかし染めとなりました。

 ぼかし染めは、色がグラデーションで薄くなっていき、淡色または、ついに白になる染め。淡くなり始めた所から一番淡く、または白色になるまでの長さを「ぼかしの足」と呼びます。
ぼかしの足が長いほど、なだらかに淡くなっていくぼかし染となります。
短いと、一気に色が消える感じのぼかし染となります。
模様が引き立つぼかし方を考えて染めます。

ぼかし屋の作品紹介 | 11:19 PM | comments (x) | trackback (x)
東京都工芸染色協同組合による
「弟54回東京手描友禅 染芸展」が開催されます。

  会期   3月4日~3月6日、10時~16時半、ただし初日は13時から
  会場   都立産業貿易センター台東館5階
  アクセス 地下鉄、東武スカイツリーライン「浅草駅」



 友禅染の体験コーナー
3月5,6日の二日間 10時~14時

私は三日とも会場の主に友禅体験コーナーにおります。
お立ち寄りの節は、受付にてお呼び出しくだされば、展示作の見どころなどご案内いたします。
大先輩方の力作も展示されますので、どなたにも参考になることと思います。

 このところ染め風景を紹介してまいりましたのが、出品予定作です。

湯のしから戻って、真っすぐ綺麗になった表地に
最後の仕上げ作業をしているところ。


銀彩で鳳凰の羽根を飾ったり、菊の花弁にアクセントを付けたりいたしました。

渋く紺系の帯を合わせると落ち着いた大人向けに、
ピンク系の帯なら若いお嬢様向けの訪問着になります。



菊と鳳凰の組み合わせながら、あまり大仰でない柄行きを目指しました。
菊の中で鳳凰が遊んでいるような…。
地色を裾濃に染めて、着用時に映えるよう※振り違えで上半身にも模様付けいたしました。

着物の場合、模様があまり多いと礼装というよりお洒落着になっていきます。
紋付きの色無地や、留袖のように上半身に模様のないものが本来の礼装でした。
しかし、それでは淋しい、模様を楽しみたいというニーズがあって訪問着が発展しました。
 礼装らしい格式を残した上半身の柄付けとして、左の胸と前袖、右の後ろ肩と後ろ袖にだけ模様をいれることを「振り違え」と呼びます。付け下げなどですと、模様が袖だけ、または左胸だけという柄付けもあります。

お知らせ | 01:12 AM | comments (x) | trackback (x)
 前回に続き、創作一点物の友禅染作業風景をご紹介します。今回は「色挿し」。


         色挿しの途中(糸目糊が見えます)

 「色挿し」は、下絵の上に糸目糊を置いた模様部分に色付けする工程です。「模様挿し」ともいいます。「友禅する」という動詞を使うこともあれば、「友禅挿し」と呼ぶこともあり、そこから分かるように長い工程の中でも「色挿し」は一番友禅染らしい作業です。
何色も染料を作って筆や片歯刷毛で挿していくので、なかなか華やぎもあります。



 でもちょっと大変なことも。
 水と染料(粉末)を煮て液状の染料を必要な色数作り、皿にいれて使います。



 染料は時間経過とともにどうしても乾燥していきます。つまり色が濃くなってしまうのです。濃淡を保つために水分を調節しながら作業を続け、なるべく一段落つくまで一気に済むように、色挿しを始めたら、長時間やりっぱなし状態になる事がたびたび。

 NHKにラジオ深夜便という徹夜の番組があります。深夜から未明に作業が続く時のお友達です。作業を中断しても色が変わる心配のない刺繍の職人さんが羨ましかったりします。もちろん刺繍には刺繍の大変さがあるに違いないのですが。



 見頃部分はとても長いので、生地を傷めないように
折りたたんだりせず、ゆったりさせて作業します。


 模様が絵羽※1になっているので、縫い目を境に色を間違えないように確認しながら色挿ししていきます。


 上前の胸と袖のつながり。
これは色挿しが終わったところ。ふんわりした菊にするために、糸目糊のない無線描きも併用して、個性的な菊と鳳凰の表現です。



左上→ 色挿しが済むと模様伸子から生地をはずして柄行き通りに並べ
      模様のつながり具合や色目が合っているかどうかと点検します。
      まだ生地に端切れが縫い付けられています。
下2枚→ いよいよ色付けの作業は終わりと確認出来たら、
      次の工程へ進む準備をします。
      当て布や端切れを解いているところ。染めた直後の生地は
      シワシワでこぼこしているのがよく写っています。
      解いた綿糸が地色と同じ色に染まって綺麗なかたまりになっています。
右上→ 剥ぎ合せミシンで見頃や袖などを縫い合せて、長~い一本の反物に戻しています。

 ちょっと生地の端をご覧ください!
波打ったように変形しています。これは伸子針や模様伸子※2で絹地を張って友禅の作業をした結果です。蒸気や水をくぐり、張り手や伸子に引っ張られて、いかにも嵐をくぐった感じが生地に出ていますね。
 この後、「蒸し」や「水もと」作業、いわゆる「友禅流し」で糊や余分な染料を落とし、乾かしてから「湯のし」という工程を踏むことで、この変形がなくなり、生地が真っすぐ平らになり、機屋さんが織りあげた時と同じ光沢を取り戻すのです。

※1 2014,04,09のブログに説明があります。
※2 2015,08,30のブログに説明があります。
ぼかし屋の染め風景 | 09:52 PM | comments (x) | trackback (x)
ぼかし屋の創作一点物の染色作業から、最近の染め風景を写しました。

訪問着の制作で生地は三丈物


「縦よろけ」と呼ばれる地紋。




全体に立体感がある地紋で、落ち着いた光沢があります。
反物として横に見るより、肩に掛けて縦に見る方が華やかな生地です。

誂え染めでは、絵羽模様で下絵を描くため、最初に生地を裁ちます。
採寸して裁ち切るのですが、当りをつけてから複数回確認して…
裁ち鋏でザックリ切るときはドキドキします。
襟と衽(おくみ)の部分は縦に長~く切り分けるので、曲がらないように採寸を頼りに生地目にそって切り続けます。
裁ち切っている途中も写しておけばよかった!(^^;)
またの機会に…。

下絵を描きます。
今回は無線と糸目の友禅を併用して菊と鳳凰を染めます。


染めの話ではありませんが、二十年来の付き合い、愛用の文鎮が写っています。
縁の下の力持ちの一つ、文鎮についてもいずれご紹介したいと思っています。



絵羽模様ですから、縫い目を越えて模様が連続するように描いていきます。
生地に描きながらもカーブの角度や位置を調整します。

長いカーブは、地色をぼかし染めする時の位置です。
これが狂うを、仕立て上がりで地色の濃さが縫い目を境に合わなくなってしまうので、とても大切です。裏からも印をつけておきます。この作業を「ぼかし当り」と呼びます。地味で案外時間のかかる作業です。

鳳凰の訪問着ですが、気張らない楽しい、ふんわりした感じを目指しています。
ぼかし屋の染め風景 | 01:45 PM | comments (x) | trackback (x)
        謹賀新年

ぼかし屋の染め風景


      いつもの机で色挿し  染め上がり
        糸目友禅と無線描き  引き染め


 旧年中は多くの皆様に大変お世話になりました。
ご相談、ご用命くださったお客様方はもちろんのこと、
ブログの感想や質問をお寄せ下さった皆様、どうもありがとうございました。

色々相談させていただいた白生地屋さん、材料屋さんなどご担当の皆様、
仕立て屋さん、しみ抜き屋さん、東京手描友禅の先輩方、
本当にお世話になりました。

新しく迎えた2016年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
特にブログの感想や質問、大歓迎です。
ホームページの「お問い合わせフォーム」をご利用いただけます。
お待ちしてます。!(^^)!

 毎年恒例のウィーンフィル、ニューイヤーコンサートをテレビで楽しみました。
このコンサートは会場を彩る花の装飾が毎年工夫を凝らされ、聴くのも観るのも楽しみです。


       今回はウィーン少年合唱団も参加

 今年はオレンジ色とサーモンピンク、白で例年に比べ控え目な印象でした。



 花としては美しい取り合わせですが、会場全体で見ると、ホール自体の金色の装飾に花の色が溶け込んでしまい、例年の華やかさに欠けますね…。



 このコンサートは、昨年あった世界の出来事を
何らかの形で演出に反映させることでも知られています。
 もしかすると、昨年パリで起きたテロや、止まないシリアでの空爆などの
犠牲者を悼む趣旨で、このような飾り付けになったのかもしれません。
番組中の解説では、特に舞台演出に関する話題は出ませんでしたが…。

 今年の指揮者はマリス・ヤンソンス氏。スタンダードな演奏を大切にする方だそうです。後半は誰でもよく知るメロディーが続き、私のような素人には楽しい演目でした。
この番組は元日のライブ放送です。でも毎年録画して観るのは三日か四日。
ですから見終わると、お正月も過ぎ行く~(^^;)感を味わいます。

もうすぐ成人式。
お客様が心置きなく振袖を楽しめるよう、晴天でありますように!!

お知らせ | 11:39 AM | comments (x) | trackback (x)
人間国宝、森口華弘氏は、昭和を代表する著名な京友禅作家でいらしたので、亡くなられてからも作品はテレビや展覧会で紹介されることがよくあります。ですが、今回テレビ放送で、めったに見られない同氏の「下絵」を拝見できました。
BS日テレで毎週金曜20時から放送される「ぶらぶら美術館」の11月13日放送分
「琳派400年の特集」
でのことです。
下絵は公開されることが少ないので、テレビ映像を拝借してご紹介いたします。
 京都国立近代美術館でこの秋に開かれた「RIMPA IMAGE 琳派イメージ展」を番組が取り上げていて、その中の京友禅の技のコーナーに同氏の作品が展示されていました。



 左側の青い作品「流水」について
子息の森口邦彦さんが登場して技法の説明などをなさいました。
蒔糊※を生地にふっては水色を引き染めするという作業を四回も繰り返したことで、この深みのある水の様子を表現したそうです。




 その際、森口邦彦さんがご持参の華弘氏の下絵画帳を披露してくださったのです。


 友禅染め全盛だった昭和3,40年代の達人の下絵ですから、
録画を何度も再生して観ました。


水の流れというテーマで何通りもの作品をお試しになっていたのですね。
細い筆が三本連結された「連環筆(れんかんひつ)」という筆をご愛用で、とても速くサササーっと描いておられたそうです。


言うまでもないことながら、素晴らしい勢いと構成ですね!

 ここで言う下絵とは、着物の柄行きの「雛型」です。実物大の紙下絵もおこしたものと想像しますが、どうだったのでしょう。仮絵羽の生地に直接お描きになったのでしょうか。他の出演者に質問してほしいものでしたが…。

 琳派400年を記念して、今年は京都各所で名作の展示、公開がありました。
京都まで行けない私にとって、この番組は有難い内容でした。

 同じくこの放送で紹介された作品の中に大変印象的な屏風がありました。


    冬木偉紗夫「いざない(風と雷の神)」平成2年

 宗達の風神雷神からイメージをふくらませたそうです。
創作するアーティストって凄い!と、ささやかな模様屋としては尊敬を禁じ得ません。
漆塗りの屏風で、このように塗り分けるのには高度な技術が必要だそうです。


※蒔糊(まきのり)の技法→ 餅粉と米ぬかで作った糊を薄く延ばして乾燥させた後、細かく砕いて粒状の糊を作る。フノリで濡らせた生地の上に糊の粒を降らせてから乾かす。生地に糊粒が固着したところへ刷毛で染料を引き染めすると、糊粒の跡が防染されて点々とした模様として浮き上がる。森口華弘氏はその第一人者で、手描友禅と蒔糊を併用した作風で有名。
展覧会ルポ | 08:01 PM | comments (x) | trackback (x)
 ネットで無料受講できる面白そうな講座をみつけました。
世界の大学が参加しているMOOC(=Massive Open Online Courses 日本語では、大規模公開オンライン講座)、その中の一つであるOpenLearning, Japanで、着物ファンに役立ちそうな講座がスタートしたのでご紹介します。

学習院女子大学
日本のきもの -歴史と今- 


 服飾史や工芸史の専門家たちが講師役で、着物の成り立ちや着物ファッション史、染織技術について4週にわたり、画像と共に話してくれます。
 11/4からすでに開講していますが、12/9までに新規登録すれば受講開始できますので、ご興味がありましたらお早目に。登録はどなたでも、無料です。

アクセスは、https://www.jmooc.jp/

または「JMOOC」と入力して検索すると容易にHPが見つかります。



 受講登録から終了までに流れが載っています。
画面をスクロールすると下部の中央に日本のきもの -歴史と今- の講座案内もあります。



 案内に従って受講登録すると講座の視聴開始となります。



 課題やテストもありますが、
単に面白そうなところだけ聞くだけでも、ちょっと覗いてみるだけでも、OKです。
今に引き継がれる振袖の歴史友禅染江戸時代流行の着物柄行き、講師が江戸小紋の技術者を訪ねて話を聞くなど、面白そうな項目が並んでいます。私もこれから受講してみるつもりです。

 昨年11/23のブログで立命館大学の京都の伝統工芸の講座をご紹介したJMOOCgaccoと同種のプログラムです。
お知らせ | 06:11 AM | comments (x) | trackback (x)

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