東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
思い切りよく暑い日が続きます。( ;∀;)
ありがたい事に友禅染は家の中で行う作業です。 

ただ生地全体を染める地染め(じぞめ)は、染めの種類や作業所によっては外で行われるようですが、友禅の場合は手描き物でも型友禅でも、直射日光は禁物なので屋内で作業します。

ぼかし屋は手描き友禅なので、自宅の一部を利用して屋内作業で地染めしています。
冷房の使用は…… 場合によりけり、です。
ぼかし染めに時間がかかる場合、冷房の風あたりのよい一部だけが早く乾いてしまいます。すると綺麗にぼかせなくなるので暑くても我慢。
一気に染めてよい場合は、今日のような炎暑の日は冷房を掛けております。助かります。

手描き友禅の場合、模様に色を塗る色挿し(いろさし)で使う電熱器の方が夏は辛いものがあります。
部屋に冷房をかけても手元に熱源があれば暑い~のです。
冷房温度をあまり下げると、皿の中の染料がどんどん乾燥して濃度が高く(色が濃く)なってしまうし~、というわけです。

さて本日の紹介は地染めしながら写した写真です。


青色系の刷毛を用意します。
大きい刷毛は幅が五寸、小さい方は三寸。ぼかし幅などで使い分けます。


少なくとも1時間前には刷毛をたっぷりの水に浸して、木の部分に水を吸わせます。すると木が膨らみ刷毛の毛をがっちり押さえ込んでくれるのです。毛がピンとしてきれいな染めが出来ます。


希望の色になっているかどうか、試し布で染料の色を最終確認します。


染料を入れたバケツと刷毛。このバケツは五寸刷毛が縁に置けるようになっていて便利。愛用のバケツです。



張り手で生地を柱の間にピンと張り、染め作業をします。これを引き染めといいます。
煮染め(染料をいれた窯で生地を煮る。絞り染めでよく行われる)、浸し染め(染料の入った壺などに生地を浸して染める、たとえば藍染)と違い「生地を引っ張っておいて刷毛で塗る」染め方を指します。


濃淡三色のぼかし染めです。引き染めの長所は刷毛でぼかしの線を好きなようにカーブさせられることです。




ぼかし屋の染め風景 | 11:27 PM | comments (x) | trackback (x)
7/20朝日新聞紙面で、とても美しいドレスの小さな写真をみつけました。
記事を読んでみると……
これが複雑な気持ちにさせられる内容でした。

「テクノロジーをまとう」と題して、最先端のスキャンや印刷技術を使ったファッションの紹介記事なのです。





目についたのはこの写真



新聞写真ながら、なんて綺麗な花のドレスでしょう!!
記事によれば、精密な3Ⅾスキャナーで生花を直接取り込んで生地に印刷したものだそうです。
立体をスキャンできる3Ⅾならではの奥行ある花柄になっているとのこと。
本物のお花を直接スキャン?!とアナログ人間としては驚くばかりです。
手描友禅の長々とした工程で、花びら一枚一枚から手描きする友禅屋としては、スキャン!印刷!というところで複雑な思いを抱きますが、こんなに綺麗ならもはや何も言えませんね

成人式がインクジェット印刷のレンタル振袖に席巻されて久しく、それを残念に思ってきました。どんな種類であれ「染めの着物」を着てほしいものだと考えてきましたが、印刷技術も、コンテンツを取り込むスキャンの技術も、デザイン力もすべて向上してきているということなのでしょう。
この記事のドレスと同じように高い技術とデザイン力による、友禅屋も脱帽するような美しいインクジェット印刷の振袖が世の中に出てくる日も遠くないのかも……
プロ棋士がAIに勝てない時代になっていることだし……(+_+)
フクザツです……


着物あれこれ | 12:08 AM | comments (x) | trackback (x)
上野の東京国立博物館で今おもしろい企画展示をしています。

「屏風と遊ぶ」 
9/3まで


 長谷川等伯の「松林図屏風」大きなスクリーンに映像化されていて、ゆっくり座って楽しめるのです。


自分が鳥になって松林を見下ろしているような、木々の間を飛んで抜けていくような、
不思議な感覚を味わえます。
 所用時間は「好きなだけ」 映像のワンサイクルは10分程度ですが、間近で見ても、遠目に見ても面白いので、ゆっくり30分位見てみるとよさそうです。
松林図屏風からこのような映像を生み出すコンピューターグラフィックスの技術者を
羨やましく思いました。
 別会場で光琳の「群鶴図屏風」も取り上げられています。


さて今回の常設展示では季節柄、友禅染の帷子(かたびら)を見ることが出来ました。
大変古い作例もありました。
(写真横転、ご容赦を)

 波に千鳥草花模様 帷子 江戸時代18世紀 

 裏地をつけない夏向け仕立ての着物を単衣(ひとえ)と呼び、そのうち麻布で作られたものを帷子と言います。ちなみに蒸し風呂などの入浴用の帷子が湯帷子(ゆかたびら)で、浴衣(ゆかた)の語源です。
 ここで紹介しているのは、夏の外出着の帷子です。
 

 布を染めるのに、糊がついている所には染料が入らない、という
友禅染のソモソモの原理が大変よく分かる初期の素朴な友禅染です。


 葉や茎は糊で描き、糊防染でいったん茶に染め、後から絞り染めで青色を染めたように見えます。
特に菊の中心は目が粗いながらも鹿の子のように絞って青を防染し花芯に見せています。
全体を茶、白、青に染め分けて、手間をかけてお洒落な着物を作り上げた熱意を感じてしまいます(^^)/

 白麻地 紅葉立木落ち葉模様 帷子 江戸時代19世紀
  

 麻ですから見事にシワが寄っていますが、季節を先取りして紅葉をあしらったお洒落な一品。解説によれば季節先取りは江戸時代中期以降に好まれだした習慣だそうです。


糊防染の跡が糸目状によく残っていますね。糸目糊と呼ぶにふさわしい感じです。

 白麻地 住吉浦風景模様 帷子 江戸時代19世紀


 刺繍と友禅で松原の風景を描いた帷子、大阪の住吉の浦だそうです。


 解説には、江戸後期になると庶民のあいだで物見遊山を楽しむ余裕が出て、全国の名所を描いた風景小袖が流行ったとあります。

 
 紫絽地 流水秋草鈴虫模様 単衣  江戸時代19世紀


 こちらはさらに豪華な夏の友禅。透けるように織られた絹地、絽(ろ)です。
やはり模様は季節先取りで秋草です。
紋付きの礼服で、解説によれば三つ葉葵の五つ紋だそうです。どんなご婦人の着用だったのでしょうか。

 海外からの観光客でにぎわう暑い熱い上野でした。


展覧会ルポ | 06:13 PM | comments (x) | trackback (x)
 ぼかしの引き染め夏の薄いスカーフ染めをしました。
 着物地より薄い生地でも、張り手は着物と同じ。
麻縄でギュッと横に引き長く張って染めるのも同じですが、使う伸子針(しんしばり)が違います。


 張り手のすぐ下に写っているのが、着物用の伸子針
その下に移っている少し短く細い伸子針が、弱かったり幅が狭かったりする生地用の伸子。スカーフにはこちらを使いました。


 伸子の使い方は着物を染める時と同じ。


 生地が乾くに従い透明感が増し、下に置かれた染料バケツが透けて見えます。


 今回使用した刷毛。三寸刷毛と丸刷毛、筆です。


 染め上がりを作業用のフロアスタンドに掛けたところ。透き通って涼し気。
 ピンクや緑、黄色など多色のぼかし染めは、普通の生地ではかなり派手になってしまいますが、このように透けていると、発色が抑えられるので上品な面白さがでると思います。

 伸子針(しんしばり)には実は様々な長さがあります。
いずれ紹介していきたいと思います。

ぼかし屋の染め風景 | 10:10 PM | comments (x) | trackback (x)
 アジサイの季節です。このところ晴天続きで萎れ気味の花もあるようです。
 今年はぼかし屋近辺では綺麗な額アジサイを多くみかけました。


 紫からピンクへの色の移ろいがきれいでした。
団地の建物の脇にあり、これまで気づかない場所でした。


 咲き始めの、まだ薄緑色の残る小さな花から、今が盛りの花までの移ろいも見飽きないものでした。今年は撮影のタイミングがよかったようです。もう数日経つと咲いた花ばかりになるところです。

 こちらは都心のビルのエントランスの植え込み
 「ベルバラ」に出てくる大きく膨らませたロココ風ドレスのようでした。

 
 青味の色合いだけのグラデーション。青いドレスの模様といったところ。

 額アジサイではありませんが、こちらはぼかし屋のアジサイ


 毎年のように制作するアジサイですが、額アジサイには未挑戦。
真ん中の部分をどのように柔らかく表現するか、頭の隅でいつも検討中(^^;)です。

アジサイは四季花図などによく取り上げられる題材です。


 「紫陽花 四季花図」鈴木其一
 小さい一幅の中に春夏秋の花が。主役は紫陽花です。


季節の便り | 11:42 AM | comments (x) | trackback (x)
手描友禅誂え染めの振袖:英国風にbespoke kimono:ビスポークの着物
:米国風にcustommade kimono:カスタムメードの着物……呼び方は色々ありますが。

 ぼかし屋は東京手描友禅を誂え染めで承っております
お客様の様々なご希望に沿うよう工夫していくなかで、こちらが勉強をさせていただく事も多い日々です。
本日ご紹介するのは、黒地に染めた上に鮮やかな菊の花を散らせた個性的な振袖。


 黒地散らし菊文様振袖

 アニメの物語に登場する少女が着ていた振袖と同じイメージで、というご注文でした。
アニメのクラシックな雰囲気を壊さないように、実際に二十歳のお嬢様が着た時に綺麗に見えるように、お客様と相談しながら柄を起こしました。

ちょっとワイルドな雰囲気の菊。
お客様が「こんな感じの菊が好み」とイラストで説明してくださったので、とても助かりました。
 古典的な雰囲気を出すために、菊に合わせた濃い朱色で染めた比翼をつけて
「比翼仕立て」にしました。
三尺の大振袖にも朱色の振りを付けました。
歩いたり袖が揺れたりすると、裾や袖のうしろ側に朱色がのぞき市松人形のようにクラシックです。
 比翼仕立ては現代では黒留袖に多いのですが、本来は格式ある礼装で広く行われていました。今でも振袖や色留袖など、ご希望によって比翼をつけ豪華な雰囲気にいたします。

 製作風景をご覧ください。


 仮絵羽仕立てした状態で下絵を描いていきます。

 ぼかし屋では紙青花を愛用しています。


衿、胸、袖にかけて模様がつながります。これを絵羽模様といいます。
サッと描いてある〇 仮絵羽仕立てでお客様に羽織っていただいて調整した時に、ここに花を増やすと決めてつけた印です。

 

 裾も連続した模様に。絵羽とは「縫い目を越えて模様が連続している」こと。
たとえ散らし文様でも、絵羽模様になっていると着用した時に格の高い印象を与えます。おそらく室町期以来日本人の馴染んできた屏風絵や襖絵の影響だと思います。
<br />
 糸目糊置きの作業

仮絵羽仕立てを解き、生地は伸子に張ってピンとさせてあります。

 糸目糊置きが終了
 

 今回は黒地なので模様の色差しより先に地色の染めを行いました。


模様も地色も一貫制作のぼかし屋ですが、黒染だけは専門の黒染屋さんにお願いします。

 黒染め屋さんから戻ってきた生地にフノリ地入れしています。
糊気がないと模様色差しの時に染料が生地に定着しません。染料が糸目糊を超えてはみ出す原因にもなります。

 いよいよ色差し


 大きな菊が単調にならないよう、各色とも三種類の濃淡を用意しています。


 外に向かって淡くなるよう 花弁ごとに水の力を借りて、薄い色から濃い色へと ぼかし染めしていきます。


 途中で 「絵羽模様の左右で色が合っているかどうか」「各色の菊の散り具合はどうか」確認しながら作業を進めます。

 最後に生地を並べて再点検。

一番裾に生地を伸子の針から保護するための「端切れ」がまだ付いたままです。

 整理屋さんから戻ってきた生地。糸目糊がとれて、
糊の跡が糸目のように白く浮き上がって見えます。(糸目糊の名前の由来)
 さらに水洗いで余分な染料や糊成分などを落とし、乾燥。湯のしで生地目、生地幅を整えて、最初に糸から白生地に織られた時と同じ状態に戻りました。色、模様がついているだけが違いです。
 左端の縫い目は、衿と衽(おくみ)を剥ぎ合せたところ。
仮絵羽仕立てを解いて染める誂え染めでは、作業中必ず衽の中央、衿との境にこの縫い目があります。

 アニメの少女の振袖には金銀は使われていませんでしたが、現実の振袖として少しは金色も欲しいところ。


金をぼかし状に柔らかくあしらいました。

 出来上がりの生地はスッキリと光沢が出てとてもきれいです。

染色作業がすべて済んで点検しながら衣桁に掛けて眺めているところ!(^^)!

お客様に上がりを確認いただいて仕立て屋さんへ移動します。
お嫁入りも近いというわけです。



ぼかし屋の作品紹介 | 11:41 PM | comments (x) | trackback (x)
日本の美術や庭園に興味のある方なら、おそらく島根県にある足立美術館のことはご存じのことでしょう。
 旅行先としても人気で、こんな感じのパンフレットをよく見かけます。



 このように完璧に整えた庭園を窓から眺めることで有名で、いかなる場合も景観を邪魔するものは一切庭園に存在しないようにしているそうです。

 先日4/22の朝日新聞に、大変珍しい写真が掲載されていました。



 庭を整える庭師の皆さんが箒を手に勢ぞろい。


 造園作業などの様子も公開しない美術館なので、貴重な記事です。
来館者の目につかないよう、季節に配慮し、木々の成長を考慮し苦労して庭を整えておられるそうです。
記事の写真はまだ冬枯れの庭ですね。

以前訪問した時には横山大観の代表作、紅葉が飾られていました。


 足立美術館のホームページもご覧ください。
    https://www.adachi-museum.or.jp/

ライブで公開している今の庭園の様子を見られますよ。
先ほど拝見したら、同じ場所のショットでツツジがきれいでした。



展覧会ルポ | 07:15 PM | comments (x) | trackback (x)
本日は子供用の被布を紹介します。



 被布(ひふ)は着物の上が重ねて着用するものです。
かつては大人の女性も着用しましたが、今はもっぱら七五三のお祝い着に重ねて女児が着る袖なしの上着を指します。

   古典的な緑色に折り鶴の模様。


 地色のぼかしは、前見頃で段違いにして華やかさを出しました。
朱色系のお祝着によく合う色合いです。

 最近「折り鶴」の歴史についての新聞記事を読みました。

   今年2/22の朝日新聞紙面


 折り鶴は江戸時代18世紀以降のものだと考えられてきたが、
16世紀末~17世紀初頭には存在したことが分かったという内容です。



 三羽の折り鶴が彫り込まれている小柄(こづか)が豊臣秀吉に仕えた職人の作と確認されたそうです。
小柄は刀の鞘の外側に紐巻きして付けておく細いカッターのような小刀です。
小柄の柄は紐巻した上から見えるので、刀の装飾の一部となり、おしゃれのために武士が凝った小柄を自分の刀につけたそうです。

この鶴の大きさは1㎝か1.5㎝といったところ。細かい細工です。

 この記事によれば、折り紙はもともと室町時代に武士が贈答品を包むための礼法として広まり、江戸時代になって町人にも普及したとか。
日本の庶民文化の代表のような折り紙、武士の嗜みとして始まったという折り鶴の歴史は案外古いような、新しいような…


 今では折り鶴模様は可愛らしい着物の柄として好まれています。
もとが折り紙なので、何色も色を使っても上品に見えるところが嬉しく便利な模様です。
ぼかし屋の作品紹介 | 12:20 AM | comments (x) | trackback (x)
 タイトルで七宝焼と手描友禅を並べたのは、七宝焼は「焼物界の友禅染」だからです。
もちろん!まったくの個人的意見なのですが。(^-^;
 共通点は模様を描き出すのに「境目をつけて色が混じらないようにする」こと。

 ご存じのように手描友禅は下絵の上を細く絞り出した糊でなぞり、糊を堤防にして染料が混じらないように模様を描きます。

ぼかし屋の作業風景より。(線状の糸目糊が見えています)

最後に水洗いすると、落ちた糊の跡が白くなり糸目のように見えることから糸目友禅とも呼ばれるのです。

 一方の七宝焼。(写真は七宝の産地、愛知県あま市のHPより)
 皿や壺の形(多くは銅製)に描いた下絵に、細いリボン状の金属線を植え付けて


 隣り合う色釉薬が混じらないように筆で色置きしていくそうです。

 こちらは七宝焼の絵皿。

ね、素材は違いますが友禅染の仲間でしょう。昔一目ぼれして買いました。
釉薬の境目になっている金属線がまるで糸目のようです。

 さて、この七宝焼の展覧会が東京都庭園美術館で開かれています。

  並河靖之 七宝展 4/9まで。

 並河靖之はいわゆる明治の超絶技巧を紹介する展覧会や番組でも必ず取り上げられる七宝作家です。ただしご本人がすべて制作したのではなく、優れたデザイナーでありプロデューサー、メーカーだったとか。

  蝶に竹花図 四方 花瓶 高さ24㎝

一番見たかった作品。(写真は図録から)
ゆるやかな四角柱の花瓶。角を利用して竹を描き立体感があります。
花丸唐草文 棗(なつめ) 高さ6.4㎝
 花丸は友禅染で好まれる模様。まるで黒地花丸模様の振袖を凝縮したようです。

江戸以来の職人が新しい工芸制作に流入した時代なので、本当に友禅の下絵職人がこの棗の下絵を描いたという想像もできます。ちなみに並河靖之ご本人も、もとは武士だったそうです。


桐の花の下絵 下絵自体が美しいです。

花桐蝶文 大花瓶 高さ30㎝ こちらは大きな花瓶ですが、

草花図 小花瓶 高さ10㎝
 このように小さな花瓶もたくさん展示されていました。七宝はアクセサリーにも使われるくらいなので、本来小さな作品に向いているのでしょう。

 小さいと言えばこちらの作品

  四季 花鳥図 名刺入 高さ9センチ
 金属線で堤防が仕切られているからこそ、このような細かい表現ができるとも言えますが、この精密さは時計職人の技術ですね!!

 製品としての高さが9㎝なので、この写真の図柄の縦サイズは3センチくらいだと思われます。      

     名刺入れの下絵

 四季 花鳥図 花瓶 高さ35センチ
 
黒地を得意とした並河七宝の集大成のような作品だそうです。

黒地に金色の線で描いた図があでやか。このまま着物の模様のお手本になりそうです。


 竹笹の奥行感が濃淡で表現されています。背景の黒が冴えていました。
 
 花鳥図 飾り壺 高さ23㎝

 こちらも濃淡を使い淡い色の桜から濃い紅の桜まで。きっちり色分けされていました。
下の方に描かれた黄色い菊が実に美しく印象的でした。


 解説には、明治時代に外貨獲得のために振興された国産の工芸品の一つとして並河七宝は大いに評価されたものの大正期にはいると輸出量が落ち始め、国内市場は育たないまま、並河靖之も1927年には工場を閉めた、とあります。
 陶磁器であれば高級品は僅かしか売れなくとも、廉価な日常品が大量に売れることで産業を下支えしますが、七宝はそれ自体が高級品ですから、需要が一巡した後は弱かったのかもしれません。今は美しいアクセサリーを多く見かけますね。


東京手描き友禅 模様のお話 | 06:24 PM | comments (x) | trackback (x)
今年になってから江戸期の手描友禅をいくつか観る機会がありました。

※東京国立博物館の常設展示より。撮影自由なのですが、ガラス越しなので反射が写っているものがありますが、ご容赦ください。




  茶 平地 椿枝垂れ柳掛け軸模様 小袖(江戸時代18世紀)

 解説によればこの友禅染小袖は、享保4年1719年発行の雛型(ファッションブック)で紹介されている柄と同じだそうです。背に掛け軸を模様においた独特な柄行き。雛型を見て誂え染めをしているので、制作年代がほぼ特定できる貴重な例とのこと。


300年も前の生地にしては色がかなりよく残っていました。素朴な平地に糊糸目がよく浮き出ています。少し色がはみ出しているあたりに親近感が持てました。


 この時代は帯の幅が狭かったので背模様は見栄えがしたでしょう。
掛け軸の中は無線友禅で、他は糸目友禅で染められていました。
 教養不足で掛け軸の意味が分かりません。(>_<)
男性が鹿と向かい合っていました。
判読出来る方、お問合せフォームでお知らせください。
おそらく機知に富んだお洒落着だったのでしょう。

こちらは江戸といっても幕末期の振袖

  紺 平絹地 御簾檜扇模様 振袖 (江戸~明治期)

 模様はたいへん細かく、ほぼ全身に御簾と檜扇が柄付けされています。
裾の朱色のフキがたっぷり厚く一寸はありましたから、婚礼に関連して使われるレベルの格式です。


 幾何学模様の部分も型は使わず、すべて手描きの糸目友禅と見受けました。
細かい細かい仕事をセッセと正確にこなした職人さんに敬意!

 こちらは袱紗
お祝い物や献上品に掛けて使用した大判袱紗です。

 
 金色の飾り縫い以外は友禅染。
解説によれば、目を引く水色は江戸時代後期に流行したプルシアンブルーだそうです。糸目糊の防染とぼかしを併用して水の流れを作っているのは今もよく使われる描き方です。青系の染料は退色しやすいのですが、この水色は他の色より鮮やかですね。


展覧会ルポ | 08:44 PM | comments (x) | trackback (x)

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